見出し画像

夜のスタジオで愛を唄えば

「私と話すの面白いでしょ?」と仕事仲間の方が聞いてくる。
喋るのが好きなんだろうな。屈託なく接してきてくれるおかげで、私も自分の言葉で話しやすい。
狭い駐車場だと停めづらいヴェルファイアの話と、家族の話をしていた。
その人には娘さんがいて、私と同い年らしい。(しかも生まれ月も一緒)

3回くらい「面白いでしょ?」と言ってくるので、その状況もなんだか可笑しくて笑いながらはい、と答える。
自分でそう言う人は珍しいけど確かに、「私と話しても面白くないですよね...?」と言われても困っちゃうしなぁ…
話してて明るい気持ちになる人だ。

夕方、私の好きな坂がすぐそこだったので、いつものように少しだけ降る。
すると、遠くの空に花火のようなチカチカした光が見えた。
なんだろう、と光を追いかけるようにしてよく見える場所を探した。
陸橋の上にて目を凝らす。
眩いほどのピンクの光。
だんだんそれがこの世のものではない奇妙な感じに思えてくる。

その実、光の正体は東京スカイツリーの明かりであったのだけれど。
住宅が集まる静かな街明かりの上のほうで、不気味に光るピンク色の花火。
私は線路の上で立ち止まる。
墨田区押上に聳える雄大な電波塔を、ただひたすらに眺めていたかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?