あるといいながあるところ。それが、「ヨリドコ小野路宿」
「ヨリドコ小野路宿」は、東京都町田市小野路町にあるまちだ丘の上病院(まちおか)が、2020年初秋オープンに向けて取り組むプロジェクトです。
まちおかは、2017年11月より、諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が所長を務める一般社団法人地域包括ケア研究所とともに歩むはじめた、”地域を支える”ことをMISSIONとしてスタートした小さな病院です。
(写真)2017年11月の「まちおか」へのバトンタッチの時の集合写真
医療者が「壁」を乗り越えること
突然ですけど、「病院っぽい」って何となくいやではないですか?
まちおかは、もちろん病院なのですが、病院っぽさってたぶん誉め言葉ではない。病院が病院っぽいことで、おそらくなのですが地域の人々の足は病院から遠のいてしまいます。
必要がなくなって病院から足が遠のくのはいいのですが、人々が「医療」というものから遠ざかってしまうことは良くない。「医療」から遠ざかるから、「命」のこととか、「死」のことに正面から向き合えなくなってしまっている。そんな風に私たちは感じています。
近年、在宅での看取りが急激に減少していることは、人々が「死」というものを受け入れがたいものにし、忌み嫌い、遠ざけてしまった結果ではないかと思うのです。決して、病院での看取りを否定するわけではありませんが、私たちが問いかけることは、人々が本当に自分の生き方そして死に方に選択肢を持てているかという問いです。
病院っぽさは、たぶん医療者が作ってしまっている。「医療は高度な専門性が求められる」とか「人の命を扱っている」とか、そんなことが医療者のプライドにありすぎることが、目に見えない透明なバリアを築いてしまっている。
だから、まちおかは、医療者として「思いっきり、地域の人々の近くに行く」ことにして、病院の壁を乗り越え、野津田の丘を下りていくことを決めました。
それが、「ヨリドコ小野路宿」というプロジェクトの始まり。
(図)「ヨリドコ小野路宿」への案内図
「ヨリドコ小野路宿」というところ
「ヨリドコ小野路宿」(正式事業名:小野路宿メディカル・ヴィレッジ)は、国土交通省所管の『人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業』にも選定された事業です。
日本が超高齢社会を迎える中で、既存の社会インフラや社会保障の仕組みだけでは、増え行く高齢者の方々を支えることができなくなる。また、高齢者の価値観や生活様式も多様化するため、これまでの様な施設編住型の高齢者の住まいの在り方は限界。
だから、これから迎える世界中の誰も経験したことがない社会における、地域での人々の暮らし方を、生き方を提案していく事業だと私たちは捉えています。
そんな「ヨリドコ小野路宿」は、鎌倉街道の旧宿場町として栄えた町田市小野路町の中心地、宿通りに開業します。
小野路町の中心地、宿通りの町並みは宿場町の風情を残し、緑豊かな自然をたたえています。
「ヨリドコ小野路宿」は、この何百年も続く日常の中に、自然と医療や健康が溶け込んでいく、そんな場所を目指してこの場所に誕生することになりました。
「あるといいながあるところ。」
「ヨリドコ小野路宿」には、一番大切にするMISSION(理念)があります。
あるといいながあるところ。
「無ければならないもの」は、世の中にそれなりに溢れている。「あって欲しいもの」は、欲しがり始めると際限が無くなる。それに、何かを求め続けることが、人々の生活を豊かにするということでもない。
だから、「あるといいながあるところ。」くらいがちょうどいいのではないか、と考えました。
「ヨリドコ小野路宿」は、約300坪の敷地に3棟の建屋が立っている古民家です。それぞれ、母屋と倉庫、そして、歴史を感じる蔵があります。それに、裏山があります。
私たちは、この「ヨリドコ小野路宿」の素材を、出来るだけ宿場町の風情が残るこの地になじんだものに改修していきます。
出来るだけ人の手をかけ、地域の人々や、これからこのプロジェクトに関心を持ち関わってくれる仲間たちと、じっくりと一緒に創り上げていく予定です。
「あるといいながあるところ。」
それは、沢山の余白を残しながら、長い時間をかけて変化しながら創り上げられていくもの。
「ヨリドコ小野路宿」はここから始まります。