大きくて、魅力的
大きな食べ物って、魅力的だ。
予想以上に大きな皿に盛られた天津丼を見て、私はつくづく感じた。
大きな白い平皿に、とろっと茶色い宇宙が広がり、中央に美しい黄色が、大きく顔を覗かせる。
予想を超える大きさにうろたえつつも、それを、端からスプーンですくって崩し、腹へ収めてゆく。
何だろう、この喜びは?
宇宙を征服した喜び?
美しいものを、破壊する喜び?
その破壊したものを腹に入れ、減らしてゆく喜びか?
大きくて魅力的な食べ物と言えば、絵本「ぐりとぐら」のパンケーキだ。ふっかふかの、黄色くて大きなパンケーキ。美味しそうで、楽しそうで、私はひどく憧れたものだった。
現実的な所では、ホールケーキを一人で食べるということ。( さすがに、ウエディングケーキを一人で食べたいと思ったことは、ない。現実的な私である。)
これは、大人になり、夢が叶ったのだ!一人で、端から、フォークで崩して食べ進めてゆく。何て、贅沢!ナンテシアワセ!
この気持ちよさって、何だろう?
夢が叶った喜びと、ちょっとの背徳感?あとは、糖分摂りすぎで、インスリンの大量分泌による低血糖を起こし、アドレナリンが大量に出ているからか?
後は、大量に作られたもの、も美味しそうに見える。
ザクザク大量に切って、大鍋で煮て、どかっと出されるもの、とか。湯気が出てたら、最高だ。
あれは何の喜びだろうか?
巨大な集合体の一部を手に入れた喜び?
その仲間に入れた喜び?
全体の中の一部が私に届き、その届けられた一部が、全体同様完璧であることへの驚きか?
実は、いつか食べようと思っている、巨大な和菓子がある。小さいのと巨大なのが売っていて、私はその巨大な方を食べたいのだ。小さな方を買えば、保存もしやすく効率的だと思うのに。
あれを食べるには、相当な人数がいる時じゃないとな、と機会を伺っている。何しろ、とても甘そうなのだ。一人で全部食べる気にはならない。
なぜ、こんなに心惹かれるのか。
我が事ながら、謎である。