こわい話
はだかの女の人に、腕をつかまれ、アパートの部屋の中へ引きずり込まれそうになったことがある。
それはうれしい思い出ではなく、むしろ悪夢だった。
飲み会で、席を離れタバコを吸っている女性に声をかけたのがきっかけだった。
嫌なことを言う人がいるから、席にもどりたくない、という。
じゃあ、どこか別のところで飲みましょうかと、軽いつもりで言ったら、
タクシーを呼ばれ、隣の町まで連れていかれた。
際限なく飲む人だった。つられて結構飲んでしまった。
部屋まで送ると、ちょっとまってていわれ、冒頭の出来事が起きた。
腰が抜けるほど驚いたが、腰は抜けなかったので駅まで走って逃げた。
こわくて泣きそうだった。というより、本当はちょっと泣いたと思う。
終電はとっくに終わっていたので、駅前広場のベンチで寝ると、雪が降ってきて服の上につもりはじめた。
それでも寝てしまい、目が覚めると、家の方向とは逆方向の電車に乗っていた。
無意識で、ふらふらとわけもわからず電車に乗って寝てしまったらしい。
正気に戻ったので、逆方向の電車に乗りなおすと、仕事のはじまりに間に合いそうだったので、普通に出勤した。
はだかの女の人は服を着て働いていた。
ただ、それだけの話し。