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名刺の肩書、技術士とは


技術士に会ったことあります?

名刺の肩書に技術士と書いてある人は、
私が30年間サラリーマンをやってきて
数千枚の名刺を交換してきた中で、
おそらく1人か2人だと思います。
それほどまでに、
技術士という資格(を持っている人)は
私の周りではレアです。

技術士会とかの会合に参加した場合を除いて、
通常のサラリーマンとしてお仕事をしていると、
技術士との遭遇率は絶滅危惧種並みの少なさです。

技術士と遭遇、どんな人?

そんな私が、名刺に技術士と書かれている人と遭遇したときに思ったことは

この人スゲー!
(と、まずは感心)

この人の言うことなら信用できるに違いない!
(と、なぜかの安心)

です。まあ、一発で詐欺師にひっかかってしまいそうな勢いです、私の技術士に対する評価はここまで高いのです。
なぜここまで評価が高いか。
それは、私が技術士資格を取得するまでの
苦難の道のりに対する評価そのものだからです。

技術士試験の概要

苦難の道のりイコール試験合格までの道のりなんですが、
日本技術士会の「技術士制度について」という冊子によると
技術士と名乗れるまでの道のりは、
まずエンジニアとして7年を超える実務経験が必要です。
さらに、その7年の間に技術士1次試験に合格しておく必要があります。
その後、技術士2次試験を受験し
筆記試験、口頭試験のそれぞれに合格後、
文部科学省に登録を行うことで、
ようやく技術士を名乗ることができるようになります

ここで実務経験が2次試験の受験要件になっているのが、
技術士受験のハードルを上げています。
エンジニアとして働いて7年の経験が必要ってことになります。

1次試験は忘れた頃にやってくる

大学を22歳で卒業したとすると、29歳から(つまりアラサーになってから)、技術士資格を取得しよう思い立った場合、1次試験の合格が必要になります。
1次試験は、大学のエンジニアリング課程修了程度の基礎知識を問われます。

そうです。7年間忘れてた、大学の授業内容のテストに受からねばなりません。さっそく問題集を買って勉強です。基礎知識問題なので、エンジニアの基礎知識を初心にかえって総復習することになります。こんなことサラリーマンで就職したら普通はしません。この第一のハードルを越えている時点で、「おねし、なかなかできるよのう」となります。

計画的に進めれば、実務経験期間の前でも、1次試験は受けられるので、やわらか頭の若いころに試験を受けてしまえば、2次試験にいつでもスタンバイOKとなるので、お勧めです。しかし、ここまで計画的に進められる人は、技術士試験など楽々クリアできる優秀な人ですので、より一層尊敬できます。

2次試験は手書きの論文です

1次試験をクリアすると、次は2次試験です。
2次試験は、専門的学識及び高等の専門的応用能力を判定する試験とされています。

第2次試験の内容は、記述式(文字数5400文字、合計5時間30分)の論文試験です。
このITの世の中、これだけの文字を手書きで書くのは、理科系諸氏にとっては、おそらく受験以来ではないでしょうか。理科系では大学の試験でも、こんな小論文は少ないはずですし、今時卒業論文もPCで作成するはずですので、これだけでも試験難易度は爆上がりです。

地獄の論文、人間プリンター

さらに、私が受験した頃は、論文試験は7時間、文字数12000文字という地獄仕様だったので、その難易度は恐ろしいばかりでした。試験の最後の問題では、手が筋肉痛でピクピク痙攣してしまい、文字がうまく書けなくなった右手を左手で押さえながら答案を仕上げたという、すさまじい記憶が忘れられません。

論文試験の問題は、受験する部門で出題される課題にて、自分の経歴に沿った論文を仕上げるというもので、当然時間内に内容を考えて回答するのは無理です。事前に想定回答を頭の中に入れておき、筆記試験の時間内に解答用紙にその論文を再現する必要があります。

つまり、技術士試験とは自分の仕事を通じての専門知識をてんこ盛りした論文を受験する前に完成させておき、試験会場で脳内記憶を人力プリンターで解答用紙に再現するという、とんでもない試験なのです。

当然、論文には世の中のご時世も反映させますので、政府発行の白書とかを見て論文を作成、あとはお坊さんの写経のように脳内へのインプットと人力プリンターの能力アップにひたすら励むのです。
こうして書くと身も蓋もない感じですが、この一連の修行もとい作業が、技術士の専門的学識及び高等の専門的応用能力に繋がるんだと思います。

口頭試験は人生最良!

筆記試験に合格すると、最後の関門口頭試験、つまり面接です。

私にとって、この面接は人生で最も緊張し、最も楽しかった面接となりました。

緊張というのは、口頭試験で問われるのは
技術士としての適格性です。
ここで落ちたら、技術士不適格ってことです。

当時、技術士口頭試験の合格率は70%ぐらいと言われていたと思う。あの地獄の筆記試験をクリアしたのだから、誰もがここでやり直しなどまっぴらと思っているのに、落ちる人がいるのか・・・。ここまで来たら絶対に合格したい!とめちゃめちゃ緊張して試験に臨みました。
参考までに、同じく難しい2次試験と定評の中小企業診断士の面接は合格率は約99%だそうです。そりゃこっちの方が普通でしょ。ここまで来て面接で落とす、技術士試験の鬼っぷりが際立ちます。

でも最近は技術士口頭試験の合格率も90%近くになっているそうです。それでも1割落とす鬼畜ぶりは健在です。

ただ、そんな口頭試験も私にとっては、人生最も楽しい面接になったのです。

合否のカギは、トヨタ生産方式?

口頭試験で、試験官の方から出た質問が
「トヨタ生産方式について説明してください。」
教科書的な正解だと、ジャストインタイムと自働化と答えるところですが、私は、ここで緊張のあまり、大野耐一先生の「トヨタ生産方式」を読んだ感想を披露。
試験官の方は、それを聞いて
「そうだよね、私もそう思います。これを短絡的に考えるのは間違ってます。」
とまさかの意気投合!その後の質疑応答も非常に良い雰囲気で進むことができたのを覚えています。

ついに技術士を名乗る

結果、めでたく技術士試験の合格通知を頂きまして、
文部科学省に登録。
念願の「技術士」を名乗ることができるようになったのです。

今でも、名刺の技術士という部分を見ると
技術士試験をクリアしたこれらの思いが脳内を駆け巡ります。

世の中の難関資格と言われる資格を持っている方々
きっと、私と同じように合格までには様々な苦労があったと思います
すくなくとも、私はそういう目で肩書をみてしまいます。

肩書からその人の努力と人柄が透けて見える、
技術士ってそんな資格だと私は思います。


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