祝!「なりたい職業1位!」ライターの仕事について解説するよ

オッス!ヨッピーです!
大人がなりたい職業」の1位に「(WEB)ライター」が選ばれたということで、かれこれ10年ほどライターとして生計を立てている僕が「オッ!なんやお前ら!ライターに憧れてんのか!!そうや!ワシがライター様やぞ!ひれ伏せ!!!!」みたいなテンションでジャカジャンとインターネットの向こう側から飛び出してまいりました。

大人がなりたい職業ランキング1位はライター、2位は?
https://news.mynavi.jp/article/20211203-2212517/

しかしながら同業であり現役のライター諸氏がTwitterで流れてきたこの結果を見て「悪いことは言わねぇ!ライターは、やめとけ……!」とか「おい、死ぬぞ……!」とか、口々に戦場帰りの帰還兵みたいな事を言うから笑ってしまいますね。

そこで、僭越ながら(たぶん)WEBライターという職業が世に出てきたかなー、ぐらいのタイミングで参入し、この10年あれこれ見てきた僕の視点から「WEBのライターとはなんぞや」みたいなことを書いておきます。

「おー、ライターってこんな感じなんだー」っていうご理解が深まることを願っております。

ライターはいろいろある。

「ライター」とひとくくりに言ってもその仕事の進め方から収入の多寡まで多種多様なので、「どういうライターが存在するのか」をざっくり分類することからはじめていこうと思います。

案件応募型ライター 想定月収5,000円~数十万円

まずひとつめ。
「クラウドワークス」や「ランサーズ」なんかで良く募集されている、

美容系に強いライターさん大募集!
3000文字~で文字単価1円!

みたいな案件を探し、そこに応募して相手の要望通りに文章を書いて納品する、みたいなタイプのライター。

これに関しては未経験の人でも気軽に応募出来るのでライターになるためのハードルはめちゃめちゃ低い。

基本的に全て在宅、かつスキマ時間にこなしていける仕事という事もあって小さい子供がいる主婦層なんかに人気。

「ライターになるぞ!」と思ったときに、一番簡単なのがこのタイプのライターになること。ランサーズやクラウドワークスに登録してとりあえず応募して採用されれば簡単にライターになれる。

【追記】
この部分に特定のクラスタの方々を揶揄するような文言を書いていたのですが、「偏見・蔑視ではないか」というご指摘を頂き、僕としても「確かに、おっしゃる通りです」と思うほかありませんので該当の部分を削除した上で謝罪させて頂きます。大変申し訳ありません。

ただしその分、恐ろしく安い案件も横行しており、

1文字0,3円、3000文字書いて1000円!
イェーイ!高・収・入!デショ!?

みたいなのがザラ!「時給いくらだよ!」っていう。
こういう案件って、例えば美容外科が「ネット上で集客したい!」と思って広告代理店に依頼し、広告代理店が「病院のHPに美容にまつわる記事をたくさん作って集客しましょう!」などと提案した結果、「おすすめの美容液の記事を3000文字で」みたいな案件がボコボコ生まれるんですけど。

この大量生産低単価の記事って当然管理する側もコストをかけてないのでロクに校正もされないし、下手すると元ネタのURLが送られてきて「こんな感じの記事を書いてください!」ってなりがちなので、スキルアップにつながるかというと正直疑問です。

僕はライターでありながらも他のライターさんに仕事をお願いする立場だったりするのですが、こういう案件しかやってこなかったライターさんに対しては「大丈夫かな。ちゃんと書けるかな」と正直思ってしまいますね。

とは言え、中には高単価のものもあったりするし、クライアントから指名を受けるようになって単価があがる人もいるし、書きまくることで劇的に文章がうまくなる人もいるので、十把一絡げに全部ダメと言うつもりは無いんですけど、門戸が広い分かなり競争も激しいのでこのタイプのライターで月収100万行くぞ~、みたいなのは相当イバラの道じゃないかと思います。

【案件応募型ライターの長所】

・ライターになるためのハードルが圧倒的に低い
・全部在宅ワークで完結する
・スキマ時間に仕事が出来る

【案件応募型ライターの短所】

・とにかく単価が安い
・競争が激しい
・スキルアップにつながりにくい

【求められるスキル】

・まともな日本語が書ける
・PCが扱える
・ひたすら大量生産する流れ作業に耐えられるメンタル

裏方ライター 想定月収数十万~100万

次にこれ。「ライター」って職業は基本的に全部下請けなんですけど、その中でも特定の企業・人に重宝されて「あれお願い」「これお願い」って頼まれて「ヘイッ!喜んで!」とせっせと書いて実績を積んでゆくタイプのライター。

「ライター」って突き詰めると「文章を書く仕事」なので、文章を書くところには必ず仕事があるわけです。

例えば、

・ECサイトをたくさん作ってる制作会社に重宝され、商品ページの宣伝文をゴリゴリ書く

・企業HPをたくさん作ってる制作会社に重宝され、社長インタビューや社員紹介のページをゴリゴリ書く

・大企業のえらい人に重宝され、社員向け広報ページをゴリゴリ書く

などなど。
このタイプのライター、担当者が相場を知らなかったりすると美味しい仕事があったりするそうです。
社員インタビュー、1人あたり1時間話を聞いて3時間で書き起こして10万円、とか。うらやまー!

この「裏方ライター」でモノを言うのが「人脈」でして、自分が表に出るわけでもなく、記事に署名が入るわけでもないので新しい仕事が来るかどうかは本当に人脈、そして界隈の評判です。

「あの人は丁寧に仕事してくれるよ~」みたいな世論を形成出来ればどんどん新しい仕事を紹介してもらえたりする。

もちろん「ちゃんと納期を守る」とか「ちゃんと書ける」とかまともにライターとして、社会人としての仕事が出来ることが大前提ですけど。

このタイプの方は元々編集プロダクションに居たとか制作会社に居たとか代理店に居たとかそういう人が独立するパターンが多く、新規で飛び込むにはハードルが高い。「ライター」とは言えちょっとサラリーマンっぽさがあるかも。何事にも適当な、僕みたいなタイプの人間には完全に向いてない。

【裏方ライターの長所】

・美味しい案件も多い
・クライアントさえ掴めば安定して稼げる
・クリエイティブ要素を必要としない

【裏方ライターの短所】

・逆に言えば面白い仕事が少ない
・特定のクライアントに偏ると生殺与奪権を奪われてイエスマンにならざるを得なくなる

【求められるスキル】

・人あたりの良さ
・丁寧な仕事(納期管理、応答の早さ、無茶ぶりへの柔軟な対応その他)

ブックライター 月収数十万~数百万

あんまり聞きなれない言葉かもしれませんが、要するにゴーストライターです。前述の「裏方ライター」から出発してこちらにシフトする人も多い。
「ゴーストライター」と言うとなんか悪いことみたいに聞こえますが、例えばお医者さんで多大な功績を残した人がいたとして、その人の自伝を出そう、と思ってもお医者さん自身は文章を書くプロではないので書かせてみると専門用語連発でシロウトにはめちゃめちゃ読みづらかったりしますし、その人自身がめっちゃ多忙で「本なんて書いてる時間がない!」みたいなこともある。

そういうときにこのブックライターの人がそのお医者さんからヒアリングして、自伝の体裁を整えて文章に起こしたりするわけです。

有名どころでは堀江貴文さんの本なんかは全部ブックライターが堀江さんからヒアリングした内容を起こして整えて本にしているわけで、それによってあの異常なペースでの出版が可能になっております。堀江さんみたいな忙しい人が全部自分で書いてたらあのペースで出せるわけないもんね。

このブックライターの収入は様々な形式があって、本1冊あたりン十万円単発でもらって終わり、みたいな契約もあれば、印税の配分がある契約だったりすることもあって、何人もの売れっ子の本を担当し、印税の配分もあるブックライターともなると本が売れればその人にも利益還元されるので月収100万こえてるような人もけっこう居るはず。かつ印税って本が売れて重版かかれば継続的にお金が貰えるのでそれも美味しい。

ただし、基本的に実績のある人に声をかけるので、未経験の人がブックライターになれる可能性はゼロ

【ブックライターの長所】

・色んな人の話を聞ける
・利益配分がある契約なら当たるとデカい
・ある程度自分で仕事をコントロールして自分のペースで働ける

【ブックライターの短所】

・当たり前だけど、本が売れないと取り分が減る
・頑張って書いたのにあんまり自分にスポットライトが当たらないのでなんか悔しい

【求められる能力】

・基本的には裏方ライターに求められる能力全部
・更なるコミュニケーション能力
・更なる文章力

社員ライター 月収数十万円

そしてこれ。このタイプもかなり居る。例に出して恐縮ですが、例えば「ねとらぼ」には外部で参加しているライターがたくさんいるんですが、その「ねとらぼ」を運営するITmediaの社員として「ねとらぼ」で記事を書いてるライターもいます。

他にもBuzz Feed Japanなんかに載ってる記事は基本的に社員が書いてるし、Buzz Feedの場合は「記者」って肩書きだけど、やってることはまあライターもそんなに変わらないです。あとは編集プロダクションに所属してゴリゴリ記事を書く人もいます。

社員ライターは正社員だったり契約社員だったりするので雇用形態はさまざまですが、この辺はだいたい「月給いくら払うからお前は月に〇本記事を書け。目標PVはこれぐらいやぞ」みたいな部分を会社と握って、締め切りとネタ切れに追いまくられながら記事を書きます。

そしてライターとして自分で記事を書きつつも、外部のライターのディレクションを行ったりするのでその辺のスキルや編集能力も必要だったりする。
地味に取材先にアポイントとったりカメラマンの手配したりとかそういうのもやる。

このタイプのライターの良いところは、会社側に「育てる」みたいな意識があることです。
外部のライターを使う場合、その人の仕事が微妙なら「次は別の人に頼むか」で終わりですけど、契約社員でも正社員でも雇った以上は会社側に「育てる」っていう意識があるので、上司や先輩、同僚があれこれ教えてくれてスキルアップ出来るはず。あとは会社のカンバンが使えるので駆け出しライターでも大きな仕事、大手クライアントの案件に関わったりすることもできる。ライターとして実力をつけるには一番良いルートじゃないかと思います。

ただし、志望者も多いのでその門戸はめちゃめちゃ狭く、その分だけ「やりがい搾取」みたいなケースが横行してるのも事実としてある。
ブラックじゃない会社を探して、そこに入れるかどうかが肝。新卒でライター募集してる会社ってそもそも少ないしな……。

【社員ライターの長所】

・スキルアップできる
・収入面の安定
・会社の看板・資本を利用して色んな事が出来る

【社員ライターの短所】

・ブラック企業にあたると悲惨
・めっちゃ実力があっても給料は割と横並び
・そもそも未経験相手に門戸を開いてるところが少ない

【社員ライターに求められるスキル】

・たいていのサラリーマンに求められるようなこと全般
・編集能力やディレクション能力

媒体ライター 月収数万円~数十万円

おそらく、この辺から皆さんが想像する「ライター」になるんじゃないかと思います。いわゆる媒体・メディアに所属して、自分の名前を出して記事を書くタイプのライター。この「所属媒体」が増えれば増えるほど「売れっ子」って感じになってくる。

あちこちのWEBメディア、例えば「みんなのごはん」とか「東洋経済オンライン」とか「WEB R25」とか、まあなんでも良いんですけど、そういう色んな媒体と契約して「じゃあお前は月に1本書いてな」とかそういうスケジュールに沿って記事を書きます。

A社で1本5万円の記事を月に2本=10万
B社で1本2万円の記事を月に4本=8万 合計月収18万円

とかそんな感じで、連載枠がどれくらいあるかで月あたりの収入が決まります。悲しいかな、有名で大量のPVを抱えてるようなメディアでもだいたい記事1本あたりの単価は数万円~10万円くらいのレンジなので、東洋経済で連載しようがYahoo!ニュース個人で枠持ってようがそれぞれ月に1本しか書かないのであれば生活が成り立ちません。

このタイプはライター側から「次の連載、こういうネタはどうっすか?」って媒体側に提案して、OKが出たら取材→執筆→公開みたいな流れで記事が出来上がるんですけど、常に「ネタ切れ」及び「締め切り」と戦わなくてはいけないし、休んだら休んだぶんだけ収入がバチっと減るので休む間もなくひたすら締め切りとネタ切れに追われるので精神的にもかなりキツい。ちなみに僕はこの「媒体ライター」が出発点です。

更には「何かしらの専門性」が無いと単価も上がらないし連載枠も増えない。

例えば、めちゃめちゃスイーツが好きな人がいたとして、「スイーツ食べながらお店を紹介するライターの仕事をすれば一石二鳥でハッピ~!」なんて思いがちですけれども、「単に自分が食べたことがあるお店のケーキを紹介するだけ」みたいなパターンだと絶対単価が上がらない。

雑誌その他で流行を追いかけることはもちろん、新しいお店のオープン情報、新作スイーツの情報なんかもこまめに収集して、担当編集が知らないようなネタを自分で仕入れて提案出来るぐらいのレベルじゃないとまず生き残るのは無理!

このタイプのライター、ジャンルとしては多岐に渡っていて、ゲームの記事ばっかり書いてる人はゲームライターだし、音楽関係なら音楽ライター、飲食店ならグルメライター、みたいな感じで死ぬほど界隈があるんですが、
その界隈同士は同じライターなのに完全に断絶してるのでジャンルが違うと慣習なんかが全然違ったりする。
僕なんかは特にジャンルを決めずにゲームもグルメも書くから「あいつは節操がない」って嫌われてそうだな……。

【媒体ライターの長所】

・趣味と仕事を混同出来る(好きなアーティストに会えるとか)
・自分の名前で仕事するので当たると自己顕示欲が満たされてうれしい
・締め切りを守りつつ、数字さえ取っていればどんだけ自堕落な生活でも許される
・個人でありつつも媒体の名前を使えるから色んな事が出来る
・結果さえ残せば単価もあがる

【媒体ライターの短所】

・とにかく締め切り&ネタ切れとの戦いがキツい
・休んだらその瞬間から収入ゼロ!
・競争が激しく、何かしらの専門性が無いと厳しい

+αライター 月収数十万~数百万

そして最後に、プラスアルファのライターです。
これはつまり、「ライター以外の収入があるライター」を指します。

一番わかりやすいのは本を出していて印税収入があるような人や、ライターから出発して、自分で会社を立ち上げたような人です。
例えばフリーのライターとして媒体の編集部に出入りしている内に信用を得て、編集部の仕事を手伝うようになり、そのままたくさんのライターを差配して仕事していたりすると、そのうち「これ、会社でやったほうがええやん」みたいに気づいて自分で社員ライターを雇って独立します。いわゆる「編プロ」の出来上がりです。

しょうもない例で言うと、WEBライターとして月に20万円稼いでる人が、「無職からライターで月に20万かせぐ方法」みたいなのをnoteで3980円で売ったりとかそういうのもプラスアルファに含まれます。
他にも自分で飲み屋さんやってるライターもいますし、何かしらの事業に関わったりとかそういう人もたくさん。

ちなみに僕の場合で言うと「編集長」としての仕事もあるし、「広告」の仕事もあるし、コンサルだのなんだのっていう仕事もあるので「ライター」を名乗ってはいますが僕の収入の内、ライターとしての収入は実はそんなに多くなかったりするわけです。

中川淳一郎さんなんかも引退宣言するまで死ぬほど稼いでましたが、中川さんの収入も「ライター」としての収入より「編集長」とか「広告マン」としての収入の方が断然大きかったはず。

「ライター」という仕事の悲しい所なんですけど、日本有数の売れっ子でも、ライターとしての仕事で稼げるのは年収で1000万ぐらいが上限じゃないかなー。記事1本書いていくら、で1000万円以上稼ぐとなると、1,2年ならともかく、長年やると間違いなく精神に異常をきたすと思うので……。

なので、「なりたい職業1位がライター」という記事に対して現役の人たちが「やめとけ……!」などと言うのは、

ライター特有の、

・競争の激しさ
・単価のあがりづらさ
・締め切りに追われる辛さ
・書かなければ即座に無収入

みたいに切実な問題が背景にあることに根差していて、ライター界隈とは「修羅の国」と呼んでも差し支えないような厳しい厳しい世界なわけです。
比較的ライフワークバランスを崩さずに働けるのって上記分類の内「社員ライター」と「ブックライター」「プラスアルファライター」ぐらいじゃないかなー。

その中でも「ブックライター」「プラスアルファライター」はつらいつらい下積み時代を経た「あがり」みたいなポジションなので、ブラックな働き方を一切せずに済むのは「社員ライター」から成りあがるパターンぐらいしかないかもしれない。
しかしながら、何度も言いますがその「社員ライター」もブラックな編集部にあたるともうどうしようもないわけですが……。

……と、まあなんかもう絶望的な話ばっかりで恐縮ですが、それでも「ライター」っていう職業は少なくとも僕にとってめっちゃ楽しいです。
色んな所に行けるし、色んな人に知り合えるし、社会的意義とかやりがいなんかもあるし。つまりライターって、「向いてる人にとっては天国、向いてない人にとっては地獄」みたいな仕事なのかなぁと思っております。
あとは本業としてライターで食ってくのは死ぬほどキツいと思うんですが、会社員やりながら副業的に月に+5万ライターで稼ぐ、みたいなやり方なら趣味と実益を兼ねられて良いのではないかと。

まあそんな感じで、こういう完全ブラックな感じで下積みするのも大変なので、僕はライターを目指す人に対しては完全に別ルート、つまりは「ブロガー」から出発することを推奨しているんですけど、
その方法論とかについて語りだすとこれまた死ぬほど長くなってしまうのでまた別の機会があればそれについて書こうと思います!

勢いで殴り書いたので誤字脱字その他あったらすんません!

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