
ザ・ループTRPG/夏への扉
昨日、わたしは正式にこの国の王となった。スウェーデン独立派に与してからの5年の歳月は、その間の出来事を思えば長かったといえるし、デンマークの支配から国一つを取り戻したことを思えば、存外あっけなく,短い時間であったともいえる。 いずれにせよ、スウェーデンは独立を果たし、わたしは王としてこの国を統治する。
思えば18年前の夏の日、あの不思議な3人組と出会っていなければ、わたしが王位を志すことはなかっただろう。だとすれば彼らは、わたしと祖国スウェーデンの恩人、ということになるのかもしれぬ。
ミカル・パルム(あやめさん)は「ろっく」とやらいう音曲に心酔している少年であった。背に大きな革製の棺桶のような器を背負い(ぎたーけーす、だったか)、いつかろっくで世界を制すと語っていた。きっと吟遊詩人のようなものなのだろう。
いつか本物の「ぎたー」を手に入れると話していたが、上手くいっただろうか。彼の音曲が国の隅々に届いておればいいのだが。
サム(しろけもさん)は不思議な男子であった。「つなぎ」とかいう丈夫な衣服に身を包んだ大柄な少年であったが、「世界には表に出ない真実がある」などと夢見がちなことを真顔で語っていた。
あの不思議な世界で、彼は大切にしていた「ばいく」を犠牲にわたしを送り返してくれた。長じては兄君と商いをする、と話していたが、夢は叶っただろうか。いや、叶ったに違いない。
メアリ・クランツ(蒼音さん)は利発な少女であった。つるつるとした不思議な生地の衣服を纏っていたが、彼女の世界では珍しいものではないそうだ。
ミカルとサムに対しては高飛車というかなんというか、そう、主人が使用人に対するような口をきいていたが、あれは「つんでれ」というのだ、と、ミカルがいっていた。意味はよくわからないが、内心では二人を大切に思っていたのだろう。

雪に覆われた不思議な世界。あれは一体どこであったのか、それは今もわからない。だが、あの夏の日にあそこを訪れなければ、今のわたしは存在しなかった。それは確かなことだ。
リンダはあの頃と変わらず、側に使えてくれている。身分の違いゆえ、側室に迎えることは叶わぬが、あれは今でも我が「重し」だ。リンダなくして、解放はなかった。そういうことだ。
ザ・ループTRPG「夏への扉」