天下繚乱/約束の送り火
へえ、手前ですか?吉原“三浦屋”の高尾太夫をお世話させていただいております、掛廻(かけまわり)の伝助、と申しやす。本日は、せんださんGMの超時空時代劇RPG天下繚乱「約束の送り火」の顛末をご報告に罷り越しやした。
ときは化成年間、ところはお江戸、盆の入りも間近の出来事でございます。手前は高尾太夫から日本橋の両替の大店“掘留屋”の若旦那をお助けするようお言いつけを賜りやした。なんでも、太夫が懇意になさっていた故人の小糸さんが夢枕に立ち、「どうか旦那様を助けてあげてくださいまし」とおっしゃったとか。小糸さんは、元はとある茶屋の芸者で、掘留屋の若旦那がこれを見初めて身請けなさったとのことですが、昨夏の流行病で惜しくも亡くなられたそうです。ああいや、身請け、といっても旦那が無理やりとかそういうのとは違います。それはそれは仲睦まじいご夫婦だったと伺っています。
「旦那様をお助けする」と、まあなんともふんわりとした話ではございますが、そこはそれ、お世話になった太夫のたってのお言いつけです。手前は早速、日本橋に向かいました。そう、そのときは、これがお江戸を揺るがす大事件に発展するとは知る由もなかったのでございます。
まずは手始めに、掘留屋さんのご様子を伺って…と日本橋に向かった手前を呼び止めたのは、そう、「絶世の美女」とはああいうのを言うんでしょうなあ、なんとも艶やかで美しい妖怪絵師の写烙さん(ニバサンドさん)でした。聞けば、若旦那の古いご友人で、祝言をあげたとの連絡を頼りに久方ぶりに江戸に戻ったいらしたとか。手前より年下とは思えないような博識ぶりと見識をお持ちの女性でした。「意義も意味も楽しみも、私が自分で見つけるよ」でしたか。確たる己をお持ちの、芯の強いお人なのでしょうなあ。
また、なんと申しましょうか、大層不思議な絵をお描きになるお人でもありました。写烙さんがささーっと筆を動かしますと、絵の中から妖怪やなにかがほろほろほろっと湧き出してきまして、あるときは手前どもを助け、またあるときは妖異や悪鬼に立ち向かい。まるで絵巻物のお話を見ているような、ああ、あれです、蘭学の先生方がおっしゃる「みすてりあす」な女人でございました。
そして、もうお一方、お義兄さんの仇を探してはるばる京の都からやっていらした大江樹さん(シノノメさん)。こちらもそれはそれは不思議な御仁でございやした。鬼ですよ、鬼。しかも口下手で小心でぶっきらぼう。あれ程の膂力と剣の腕前をお持ちなのになんとも奥ゆかしい御仁でした。
その見た目から、随分と苦労をなさってきたらしいことはとつとつお話される内容からもわかりました。ですが、人を恨まず、妬み嫉むことなく、「これは仕方のないことなのだ」と諦めるお心は少々歯がゆくも感じました。お義兄さまの仇である悪鬼ヨモツイクサを討つという目的の傍ら、掘留屋さんに纏る手前どもの仕事をお手伝いしてくださる優しい心根をお持ちの方です、多少の見た目がなんでしょう。幸い、写烙さんとはお気持ちが通じたご様子、いずれそのうち、いや案外近いうちに、良き伴侶として互いを支え合う日が来るのではないでしょうか。
それにしてもなんですな、中の人の「今のは歓喜の「エッチだなあ」です!」とか、半ば悶絶気味に写烙さんの首筋にかぶりつくさまはまあなんと申しましょうか…眼福でございましたな。
そんなこんなで、お江戸を揺るがす大事件もなんとか解決にこぎつけやした。堀留屋の若旦那は小糸さんの思い出を胸に、きっと後ろ向きでない人生を歩んでくださることでしょう。そして、手前は探し求めた仇敵の手がかりを得て、お江戸を後に新たな旅路へと歩みをすすめることとなりやした。
そうそう、そういえば。
常々「手前は荒事は苦手でございまして」と申し上げはてきましたが、まさか、ミドルとクライマックスで合計3ファンブルをキメるとは思ってもみませんでした。RPは出目を呼び込む、そう肝に銘じて参りたい、セッションでございやした。
長くなりやした。それでは手前はこのあたりで。いずれ再びお目にかかる日を楽しみに。