モノトーンミュージアム/蜃気楼と願いの唄
「再会の国」
かつて、死者と再び会うことができると謳われたその国に、とあるサーカス団が訪れます。サーカス団は、この国に天幕を構え、春の終わりと夏の始めを過ごします。
春と夏の移り変わりの一日、狭間の日。国のほとりにある海の小島で死者と再会できる一日。
少年は、亡き兄との再会を願い、禁忌を犯すのです。
#モノトーンミュージアムRPG 「蜃気楼と願いの唄」遊んでもらってきました。
狭間の日がほど近いある日、公演の初日。道化のファルケー(蒼音さん)は、満席の客席にひとりの少年の姿を目にします。突然下った歪んだ御標のせいで業火に焼かれた故郷の村、そこではぐれた弟の姿です。彼を守って炎にまかれ、一度は息絶え屍人として蘇ったファルケーは、その姿に動揺します。
生きていてくれたのか。
いやまさか。こんなところで生きているはずがない。
だがしかし。もしも生きながらえていてくれたなら。
亡き兄との再会を願う少年は、小島でなにに出会うのでしょう。
同じ日。サーカス団の花形曲芸師ガッティーノ(采人さん)は、満席の客席にひとりの少年の姿を目にします。決して笑わない暗い目をした少年は、終演後の近くの土手で一人静かに泣いていました。
「兄ちゃんに会いたい。どうしてぼくひとりだけ。寂しいよ。哀しいよ」
少年に触れたガットには、彼の嘆きが伝わってきます。童子というのはそういうものですから。
「己の芸でみなを笑顔にする。例外は認めない」
ガットは少年を笑顔にするために、彼の望みを叶えることにするのでした。たとえそれが禁忌を犯すことになろうとも。
からくりのタンガ(あやめさん)がサーカス団に加わったのはわりと最近のことです。
貝掘りの国に生まれ、螺鈿のごとし美しい身体を持つ彼は、次の石柱を祀る儀式のために作られたからくりです。ある日雷に打たれたタンガは、はじめて“意識”に目覚めます。
自分を組み立ててくれた“彼のお方”。生まれて間もないあの日に動かなくなった“彼のお方”。再起動するのを心待ちにしていたのに、二度と動くことはなかった。いったいあれはどうしたことだったのか。
「なんだお前さん、外に興味があるのか。ならば一緒に来るかい?」そう声をかけた行商人について、タンガは国を出ます。儀式の遂行は放棄しました。
放浪の果てに拾われたサーカス団で働くうちに、なんとなく気がつきました。
「彼のお方はきっと死んでしまったのだ」
再会の海。そこにいけば。もう一度、会えるかもしれない。
会ってどうするのか。それはタンガにもわかりませんが、とにかくもう一度会いたいのです。
盛況のうちに終わった初日公演。その翌日、副団長のローラ(夢兎さん)は不快な客人を迎えます。この国の教区を統括する、レドリック、と名乗る僧侶です。
彼はローラの姿を一目見るや激高します。
「やはり海守りか。お前のせいで禁足地がざわめいている。狭間の日が近づく今、この国に災いをもたらすというなら、ただでは済まさぬ。即刻この国を出ていくがいい」
何たる理不尽。何たる無礼。
ですが礼儀正しい副団長は、慇懃に、丁寧に、レドリックにお引き取りを願います。事の次第を団長に報告して、自分はまた、いつもの仕事に戻ればいい。
そう考えるローラですが、そうは問屋が卸しません。団員も、暗い目をした少年も、己に流れる海守りの血も。そう、トラブルは彼女を放っておいてはくれないのです。
ローラは大人として年少者を教え導き、タンガは静かに亡き主を慕い、ファルケーはなにを置いても弟の幸せを願い、ガッティーノは友だちの笑顔を希求し。
こうして歪んだ御標は無事に退けられ、少年は笑顔を取り戻すのでした。
めでたしめでたし。