初任者へのおすすめの一冊 『あすの授業が上手くいく〈ふり返り〉の技術 ①身体スキル』
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カタリスト for edu の企画である 初任者へのおすすめの一冊 に触発され、自分だったらどんな一冊をおすすめするだろうと考えてみました。
公立小学校教員4年目を終えようとしている私が、現時点で初任の方に送るなら(初任だった自分に送るなら。という方が正しいかもしれません。)と選んだ一冊です。
1.途切れることのない「明日の授業をどう乗り切るか」という問い
4月のスタート。研修期間もなく現場に投げ出される初任者。
職員や子どもとの関わりはもちろん、保護者との連絡、事務作業など、様々な仕事が容赦無く押し寄せてきます。
目の前に飛び込んだ仕事を手当たり次第こなすことで精一杯。
気づけば定時を過ぎ、明日の授業準備が終わっていないことに気づきます。
毎日やってくる5、6時間の授業。
「いい授業をしたい」という思いとは裏腹に、目の前の授業をいかに乗り切るかということで精一杯になるでしょう。(私がそうでした。)
「明日の授業をどう乗り切るか」という問いが、毎日のように私の頭を悩ませていました。
2.初任者が陥りがちな罠
「初任者が」と一括りにしてしまっていますが、紛れもない私の体験談です…
「明日の授業をどう乗り切るか」という問いに対峙した私は、毎日教科書・指導書とにらめっこすることになります。
主任のアドバイスの後も不安は拭えず、一人残って授業の準備をする日々。
「子どもたちの反応がよかったか」というごく単純なものさしで一喜一憂し、また次の日の授業へ。
次第に、「もっと楽しい授業をしたい」「子どもたちのわかった・できたを増やしたい」という思いで本やインターネットなど様々な情報へと手を伸ばし始めます。
そこには、試してみたくなるような面白いネタが山ほどありました。
授業だけではなく、生活場面での指導方法まで。試してみては子どもの反応を確認し、また次のネタ探しへ。
自分の頭で考えることはほとんどなく、得られた情報を使って過ごしていました。
あの時の自分を例えるならば、成分もよく分かっていない数ある薬の中から、効きそうな薬を片っ端から試している状態でしょうか。
薬なので、切れると不安になっていきます。そうしてまた、毎日遅くまでネタ探しが続くのです…
私は、「自分がどんなことをしたいのか」が置き去りになった継ぎ接ぎだらけの教師となっていました。
3.本書が与えてくれるもの
本書では、そうした「場面ごとの細切れのスキル」が複雑で多様な教室状況において機能しなくなってきていることを指摘しています。
同じ教育技術、教師スキル出会っても、単に「教わった通りに使う」のではなく、「自らのスキルの省察(リフレクション)を繰り返しつつ使う」ことが求められるのです。なぜなら、従来までのようにここの教師が理論やスキルを学べば、それでうまくいくという想定が成り立たなくなってきたからです。
その上で、身体スキル(教育方法や教育技術と一般的に呼ばれているものの前段に、教師の持つ雰囲気や仕草、動作、構えなどがあり、それが教育方法や教育技術の土台になっている。)を磨いていくこと、そして、そのために自らの実践を常に「リフレクションする(振り返る)」ことが重要だと述べています。
先ほどの薬の話でいうと、薬が効いたかどうかはきちんと確かめる必要がありますし、効きそうな薬を手に入れるための感度を高める必要もあるでしょう。
そしてなにより、手に入れるべきは薬ではなく健康な体だということです。
小手先のスキルではなく、教師としての信念を磨いていくべきという考えは、自分が初任に戻れるとするならば絶対に伝えておきたいことです。
本書に書かれている具体的な8つの身体スキルを意識しながら、自分なりの「教育観・信念」とは何か少しずつ考えてみてはいかがでしょうか。
私の経験を通して選んだ一冊が、どこかの誰かにとって少しでも参考になれば嬉しく思います。