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教えないスキル~ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術~

はじめに

おはようございます、吉岡悠人です

 今回は、佐伯夕利子さん著書「教えないスキル~ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術~」を読んだ感想です。
 この本は、2年前に大学の先生からオススメされ読ませていただきました。私の指導は、この本の影響を受けています。

 指導者はもちろん、教員や保護者の皆さんにもオススメする一冊です。今回はその中の2章と4章のみとなりますので、7章全てを読みたい方は是非ご購入ください。

第2章:「問い」を投げる

意識の置きどころ次第で、見える世界はまるで違う

駅を通過する電車をイメージしてみよう
何が見える?
君は、その電車に乗っている自分が見える?
それとも、通過するその電車に乗っている君を、駅のホームから見つめる君も見える?

第2章「問い」を投げる より

 あなたは何をイメージしましたか?

 意識の置きどころ次第で、見える世界は変わります。
指導者が、勝ち負けにどっぷりと意識を奪われていたら、選手の学びや成長に気を配れるはずがありません。

 また、「審判が、、」「体育館が、、」「ボールが、、」など自分の力が及ばない事に時間を費やすのは無駄です。
 これは、よく指導者が陥りがちな、自分好みの選手に変える事と同じです。他人を変える事は、自分の力が及ばないため時間を費やすのは無駄です。

行動を変えて最初に起きた変化とは

 コーチ陣は、カメラとマイクを付け自分の指導を客観視できる様に変化しました。自分の指導をビデオで丸裸にされながら、コーチ陣は、少し気づき始めます。

指導が一方的だ。子供の判断に対し、僕らは自分の考えを押し付けるばかりで、彼らの判断に尋ねてみたことがあっただろうか。

第2章「問い」を投げる より

 その後、コーチ陣は子供の判断を尊重しました。
 何を言ってもダメだしされる環境では、人は心のシャッターを下ろし何も意見しなくなります。そうではなく、「何を言っても、何もやっても、受け入れられる」安心安全な環境でこそ、選手は成長できます。

 指導を長年していると、プレーの判断の善し悪しがすぐに分かります。その判断は間違いだ!と言うのは簡単であり、一方的です。なぜその判断をしたのか、その判断の先に何があるのか。
 これを選手に尋ねて、双方向で会話を行う指導が関係を築くうえで非常に大切です。

進化は「学校の教室」から

「日本には、一生懸命に頑張る文化はあるけれど、選手が自ら考えて行動する文化が無さすぎる。」

日本バスケットボール協会理事 守屋志保

 これは日本の教育の問題です。
 教室で行われている事が、彼らの人格形成の過程でとても大き影響を与えています。日本の教室では先生から質問されて、恐る恐る挙手をし、名前を呼ばれて初めて発言権が与えられる文化です。しかし、スペインの教室では先生が問いを投げ終わる前に答えを一斉に言い始めます。間違っていたらどうしようと逡巡する(決心がつかずためらう事)子供はいません。

 自分で考え主張できる文化、教室へと変わらない限り根本的な事は変わりません。スポーツも社会も、その基盤は教育です。変わらなければクリエイティブで主体的に考え、エラーを繰り返しながらトライをし続けるような思考回路を持ったアスリートは生まれにくいでしょう。

「選手や部下の性格や能力は変えられない」
 この状況にアジャストするためには、指導者や上司が自分を変え彼らが成長できる環境を作る事。彼らに「考える癖」をつけてもらわなくてはならない。その方法の一つとして、問いを投げる事を意識してはどうでしょうか。

第4章:伸ばしたい相手を知る

「沈黙=考えていない」は間違い

 選手にかける言葉を選手はどう受け止めているかを探る必要があります。しかし、性格上文句を言わないし態度にも出さない選手もいる。
 例えば、「私はあの子はやる気がないと思う」「多分こうだろう」とジャッジしている時は、主語が自分です。「話を聞いた事もないのに、あなたは達は勝手に決めつけているの?」とメンタルコーチから言われ言葉も出ない。主語が自分ではなく「主語を選手に置き換える作業」をしなくてはなりません。

 人と接するうえで、主語が自分になってしまう事はどうしてもあります。しかし、私達は指導者という立場です。友人関係なら許される事でも、指導者の主語が自分になったらクラブ経営が上手くいく事はありません。
「主語を選手に」常に意識して指導に取り組みたいですね。

既読スルーの法則

 例えば、女の子に「今何しているの?」とメッセージを送ります。すぐに既読はついたけど3時間経っても返事がない。この様な場合、色んな感情が湧いてきます。「嫌われているのかな」「忙しいのかな」ここで言いたい事は【人それぞれ解釈は異なる】という事です。

 1つの事実を「どの様に認知するか」が非常に重要です。
 なぜなら、相手の決断は自分がどれだけ時間を費やしても、どれだけエネルギーを消費しても変える事が出来ないからです。
 世の中には、自分ではどうする事も出来ない事がある。だからこそ、自分の力で向上できる事に意識を向ける。この重要性を伝えたい。

学校の職員会議に出席する育成スタッフ

 120人のコーチが意見を出し合う中で、学校の話が出てきました。「私達はどうしてもフットボールからしかフォーカスしていないので、選手としての彼らが全てだと思っている。でも彼らは中学生や高校生であり、親からすれば我が子だし、ガールフレンドからすれば恋人だ。色んな側面があって存在している。もっとフットボーラー以外の彼らを理解し、サポートすべきではないか」この様な意見がまとまり、そしてついにはコーチが職員会議に出席するまでになった。
 我が子を真ん中にして、クラブスタッフや学校側が意見を交換している事は、保護者にとっても安心できる要素のひとつに違いないだろう。

 昨今、部活動の地域移行化が進んでおり学校外部の指導者(外部コーチ)と学校が協力をして部活動を運営しています。私もこの4年間で10校以上の学校へ指導しに行きました。やはり、そこで問題となるのが選手とのコミュニケーションです。部活の時だけしか関わる事がないため、普段の生徒の様子(交友関係や性格)が分からないのです。時間をかければ徐々に見えては来るけれど、普段から関りの強い教師には敵いません。
 教師が協力的であれば「あの子は授業中によく寝ている」「クラスであの子は中心的な存在だ」などの情報をくれますが、協力的でない教師だと上手くいきません。指導するためには、こういう些細な情報がとても重要になってきます。

 今の部活動の形だと、この問題を解決する事は難しいと私は思います。完全に部活動を外部委託(クラブチームや総合型地域スポーツクラブ)する事が生徒のためでもあり、教師の働き改革なのではないでしょうか。今は過渡期のため、仕方のない事なのかも知れませんが今の生徒にとってはとても重要な時期でありこの状態で活動している事がとても不憫だなと感じます。

教えないスキル

 近年では、プレイヤーズファーストやプレイヤーズセンタードという言葉が浸透してきており生徒主体のチームが増えている印象もあります。一昔の様な、指導者主体でチームをコントロールする事はなくなってはいるけれど、選手に考えさせるような指導には程遠い。
「教えない」という事は「放任」する事とは違います。指導に迷っている方は是非、この本を手にとってみてはいかがでしょうか。

 私もまだまだ未熟ではありますが、これからも生徒のために勉強を続けていきたいと思います。今回もご一読いただき、ありがとうございました。

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