【コラム】サッカー日本代表チームのポーランド戦「それを選んだ」理由があった(サッカーワールドカップロシア大会2018)
サッカーワールドカップロシア大会で日本が決勝トーナメント進出を決めたポーランド戦の戦い方において賛否両論が巻き起こっています。
物事の捉え方、角度によって意見が異なるのは当然です。
私は、ラスト10分のボール回しを選択した戦術を支持しています。
まずは事実の整理から。
・日本代表が決勝トーナメントに進出したこと
・選手、監督ともにパス回しで時間稼ぎをする戦術が本意ではないと述べていること
・どう考えても強豪チームじゃない日本が、ブーイングを受けてでも勝ち上がることを選択をしたこと
・試合運びに賛否両論が巻き起こっていること
では、いきましょう。
■日本代表が決勝トーナメントに進出したこと
どのような試合運びをしたにせよ、結果的に日本はワールドカップの決勝トーナメントに進出しました。これは南アフリカ大会以来、2大会ぶりの決勝トーナメント進出です。
日本がひとまずの目標としていた予選リーグ突破です。結果が良ければ何でもいいのかってことではなく、一つの目標を達成する上で、数ある戦術の中から結果的にそれを選んだということです。
■選手、監督ともにパス回しで時間稼ぎをする戦術が本意ではないと述べていること
選手や監督の試合後のインタビューを聞いていてわかるように、あのパス回しが本意ではないということがわかります。見ていてもどかしい気持ちはあるものの、実際にピッチに立っている選手の方がもっともどかしいはずです。
監督がその戦術を選び、選手がその戦術を受け入れて戦ったのです。一点リードされて負けている試合のまま終わって、気持ちがいいなんて思っている選手なんていないでしょ。
攻撃の選手は点を絶対に入れたいはずだし、特にポーランド戦においては新しいメンバーも入っていたわけです。点を取って結果を出したいと思っています。
大迫選手や武藤選手も言っていたじゃないですか。子供のころからの夢だったワールドカップの舞台で点を入れたいって。
■どう考えても強豪チームじゃない日本が、ブーイングを受けてでも勝ち上がることを選択をしたこと
日本代表チームにはこの試合で選択肢がいくつかありました。
攻め込んで1-1の引き分けや2-1の勝利を狙うこともできましたが、結果としてボールを回して時間を使い0-1で負けることを選択しました。
それはこの試合に挑む前の2試合で作り上げた結果です。チームによっては選択肢がなく、勝ちにいくしかないチームもあると思います。
しかし、日本代表チームには選択肢がありました。あの状況で西野監督は最善の戦略だと判断したのです。
選択肢があるだけよかったですし、私はあの戦略が正しかったと思います。もし、それでセネガルが一点追加して日本代表が予選リーグ敗退したとしても支持します。
なぜなら、この試合はワールドカップだからです。
サッカーは結果だけがすべてじゃないし、エンターテインメント要素があるとはいえ、スポンサーがついているクラブチームではありません。
ワールドカップであの戦略がダメというなら、ルール自体を改正することを検討すべきです。決められたルールに沿って、最善の策を選ぶのは監督として当然のことです。
難しい判断だったと思いますよ。
でも、それを選んだ。
あの、負け試合を前提とした予選勝ち上がりを観たくないなら、リーグ戦自体を無くして全トーナメント方式にすれば解決します。
サッカーに限らず、野球でもそうです。
満塁策ってなに?敬遠ってなに?ってことになります。
ポーランド戦はスターティングメンバーをこれまでとはガラッと変えて挑んだ試合でした。
先発した岡崎選手の負傷で大迫選手を投入した一枚の交代カード。一点を失ったことで乾選手を投入した一枚の交代カード。残す交代カードはあと一枚です。
もし、一点取るなら本田選手と香川選手を入れる二枚の交代カードが欲しい。
一枚のカードなら、長谷部選手を入れて柴崎選手を前に出すという手(そういう練習をしていたかどうかはわかりません)もあったかもしれません。しかし、試合を見ててわかるように攻撃の形をうまく作れていないところを考えると、現実的ではありませんし、失点するリスクの方が高くなります。
西野監督は本田選手でも香川選手でもなく、長谷部選手を交代で入れたことで多くの人が理解したように、このまま失点しないことを最優先する選択をしたのだと思うのです。
玉砕覚悟の零戦特攻のような突撃をみたいのなら別ですが、もしそれで散ったら貴重な決勝トーナメントでの経験を失っていたことになります。
■試合運びに賛否両論が巻き起こっていること
ワールドカップのルールはわかる、勝ちあがることが大切なのもわかる。でも、結果だけじゃない別のところに期待している人がいます。
そういう人はサッカー日本代表に何を求めているのでしょうか。
流れるようなパスサッカーできれいなゴールを求めているのか、ブラジルのような個人技冴えるパフォーマンスを求めているのか。
い・ま・は・む・り・で・す
あと何年かしたら、日本代表チームにもそういうサッカーが見れるようになるのかもしれません。
よく考えてください。
日本でプロサッカーリーグのJリーグが発足したのが1993年、今から25年前です。日本がワールドカップに初出場したのが1998年、今から20年前です。初出場のときは3戦3敗でした。その大会で奪った得点はわずかに1点。
日本がワールドカップで初勝利したのが2002年、今から16年前です。
海外クラブチームで活躍する日本選手が出てきたのもここ最近です。
これまでにプロリーグ発足から数十年もの月日をかけて、少しずつ、少しずつ、日本は世界に対して戦えるようになってきました。
そりゃ、ブラジル・スペイン・ポルトガルのようにきれいなサッカーができて勝てれば最高です。でも、そうなるまでにはもう少し時間がかかります。
野球だって、できれば敬遠じゃなく勝負が見たい、スクイズじゃなくバットを振って点を入れたい、と思うこともあるのは当然です。その気持ちもわかります。
真っ向勝負にこだわって、変化球無しでストレートのみ、盗塁も無しで進塁はヒットのみ、というわけにはいきません。
今回の舞台は世界。それも四年に一度だけ。
次の決勝トーナメントという舞台に立てるチャンスを手に入れたことがどれだけ大きいのか。
理想でいうと、決して失点はしない状態で、前線で攻撃しながらもパスを回してボールをキープできることです。それだけの技術を見ることができるのはもう少し先になるってことです。
そう考えると、少し見方が変わりますし、日本のサッカー業界と一緒に成長していく過程を楽しむこともできます。
近年は当たり前のようにワールドカップに出場している日本代表チームですが、ほんと昔はワールドカップに日本が出るなんて考えてもなかったくらいです。
今回、物議を醸しだしている戦術で決勝トーナメント出場の権利を得たことで、次が本当の正念場となる試合になります。
次戦で対戦するベルギーは非常に強敵な相手です。
ワールドカップという舞台で試合をすることで、なにか得られるものがあるのかないのか。
今後のサッカー日本代表にプラスになる経験を得ることができるような試合になることを願います。