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相続登記が義務化された
相続登記が義務化された。
えっ、今まで相続しても、登記しなくて良かったの?
と思われる方もいるかもしれない。
そうです。
今までは、登記する義務はなかったのです。
そこで、面倒だとか、土地の価格が安いとか、手続きに費用がかかるとか、とにかく放置する人がかなりおられたのです。
その結果、どういうことになっているかというと、日本の国土の20%以上が、所有者不明土地となってしまったのです。
所有者不明土地
1.不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地
2.所有者が判明しても、その所在が不明で連絡がつかない土地
つまり、登記簿を見ただけでは、その土地の所有者と連絡が取れない。当然購入や使用をしたいと思っても交渉できないということになる。
こうなってくると、例えば、その土地に何か公共事業をしたくてもできない。(なぜなら、いくら公共機関といえども、勝手に個人の所有物である土地を使ったり変更したりできないから。)
あるいは、民間でその土地を活用したいと思っても、交渉する相手が分からないのでできない。等々色々問題が出てくるし、現に出てきている。
そこで、そもそも土地というのは、個人の所有権の対象ではあるが、公共財でもあるという観点から、この問題を解決しようとして、民法・不動産登記法等の改正がされたのです。
改正は大きく分けると3つある。
1.不動産登記法の改正
2.相続土地国庫帰属制度の創設
3.土地建物等の利用にかする民法の見直し
1.不動産登記法の改正
相続や住所変更等があったら、その旨登記する義務を負う。放置すると罰則がある。
2.相続土地国庫帰属制度
相続等により土地の所有者となったものが、一定の条件の下その土地の所有権を国庫に帰属させることができる。
3.土地建物等の利用に関する民法の見直し
自分の土地や建物の管理等のため、隣地を使用する権利の明確化。
土地の共有者の一部が、所在不明、あるいはその意思を明確にしない時の管理・変更等のルール化等。
要するに、土地利用の合理化、あるいは土地が共有状態であるゆえ、一部の共有者の意思が分からないような場合でも、管理・変更をできるようなルールを作ったということです。
今回は、相続登記の義務化について
相続あるいは遺贈によって、不動産の所有者になった時は、原則3年以内に所有権移転の登記をする義務がある。
これを怠ると、10万円以下の過料に処せられる。
過料
過料とは,行政上の秩序の維持のために違反者に制裁として金銭的負担を課すもの。刑事事件の罰金とは異なり,過料に科せられた事実は,前科にはならない。
科料
科料は1,000円以上1万円未満の金銭を強制的に徴収する財産刑である。罰金と類似しているが、罰金は原則として1万円以上である。
刑罰なので、科料に処せられると前科になる。
相続が発生(被相続人が死亡)しても、どうせ兄貴が相続するし、自分は関係ないと思う人がいるかもしれない。
もちろん、遺産分割や遺言によって、自分以外の人が相続することに決まっている場合は、その通りだ。
しかし、遺言もなく、遺産分割もされていない状態では、法定相続人である人は、被相続人の死亡した、その瞬間に、相続分に応じた所有者になるのです。
つまり、相続登記の義務があるのです。
不動産登記法の条文を参考に掲げておこう。
第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
義務のある相続分については
2 前項前段の規定による登記(民法第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてされたものに限る。次条第四項において同じ。)がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。
そして罰則
第百六十四条 ・・・・・第七十六条の二第一項若しくは第二項又は第七十六条の三第四項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。
だから、放置して置けない。
ここで「正当な理由」があれば、3年内に登記しなくても過料に処せられないことになっている。
しかし、正当な理由を主張したり根拠を示したりする手間を考えると、次の相続人申告登記をした方が、手っ取り早いと思う。
でも、最終的には他の者(例えば長男)が相続するのに、自分が相続の手続きをする(手間も費用もかかる)のは、納得できない。ということもある。
そのようなケースを考慮して、
相続人申告登記というものができるようになった。
これは、自分が法定相続人である旨を法務局に申し出る制度だ。
相続登記と一緒じゃないか、と思うかもしれないが違う。
この場合は、相続登記の時のように、相続人の範囲、相続分等がわかるように、戸籍等を全部揃えるということはしなくていい。
被相続人が死亡して、自分はその法定相続にであると証明するだけだから、被相続人の死亡事項の記載のある戸籍と原則自分の戸籍だけでいい(住民票もいるが)。
尚且つ、自分の相続分の割合とかも計算しなくていい。
集める戸籍等の書類が格段に少なくて済む。
また、この申し出による登記には、登録免許税はかからない。(相続登記には、不動産の評価額の1000分4の登録免許税がかかる。(100万円以下の土地については当面非課税))
相続登記に比べると、ずいぶん簡単かつ費用もかからない。
そして、この相続人申告登記をしておくと、相続登記をする義務は果たしたことになる。つまり過料を課せられることはなくなる。
しかし、
その後、遺産分割等によって、具体的に相続人になったときは、その遺産分割の時から、3年以内に、今度は相続登記をする必要がある。
これは、具体的にその不動産の所有者になった人に課せられる義務だ。
したがって、相続人申告登記をしたが、具体的にその不動産の所有者にならなかった人は、何もしなくて良い。
念の為に付け加えると
相続が発生してから、3年以内に遺産分割がなされ、具体的な所有者が決まった場合、その所有者が相続開始(実際は条文はちょっと違う)から、3年以内の登記すれば、相続人申告登記と相続による所有権移転登記の2つを経る必要はもちろんない。
また、この場合、遺産分割によって不動産の所有権を取得しなかった者は、もちろん一切登記義務は、発生しない。
遺贈について
遺贈は、従来は受遺者(もらう人)と他の相続人全員とが協同して登記しなければならなかった。
具体的にいうと、受遺者を除く、相続人全員の実印・印鑑証明が必要だった。
しかし、今回の改正によって、受遺者単独で登記できるようになった。すなわち、他の相続人の印鑑証明・実印等不要になった。つまり、簡単にできるようになったわけだ。
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