宇宙の出島
これは、小マゼラン雲の中にある、NGC346と呼ばれる星団です。大きく翼を広げた鳥類にも見える美しい姿だ。
直径150光年、重さは太陽5万個分の質量だ。
この小さな星団が、天文学者を大いに困惑させているのだそうだ。
なぜかというと、若い星がこの星団の中心で大量に渦巻いているからです。
・・・だから?
実は、この小マゼラン雲は、天の川銀河の化学組成より単純なのです。
つまり、重い元素(水素・ヘリウムを除く、その他の元素)が少ない。これは、若い宇宙の銀河に似ている。
なぜなら、ビッグバン直後の宇宙には、水素とその水素が核融合してできたヘリウムと少量の原子番号3のリチウム、原子番号4のベリリウムしか存在しなかったと考えられているからです。
重元素は、星の内部での核融合、あるいは超新星爆発の時の高温の衝撃波による核融合反応でできると考えられている。
こうやってできた、重い元素が宇宙に拡散し、それが新しい星の材料となる。したがって、2代3代と星が生まれ変わらないと、重い元素を持つ星は誕生しないのだ。
小マゼラン雲は、天の川銀河から20万光年しか離れていない。我が銀河系に最も近い銀河の一つだ。
そういう近いところにある銀河に、宇宙初期状態の星が沢山生まれつつあることになる。
宇宙の初期状態を知るには、100億光年以上先の銀河を調べなければならない。100億光年先の銀河の光は、100億年前のその銀河の姿だからだ。
それが、20万光年と言う近くの銀河で初期宇宙と同じような現象が起きている。
言ってみれば、鎖国で外国のことは、数少ない情報で想像するしかないときに、出島が出来、そこにオランダ人がたくさん集まっているようなものだ。
天文学者が困惑、興奮するのもわかる。
ところで、なぜここにこんなに大量の星が生まれつつあるのか。
調べてみると、この星団の星は、渦を巻いて中心に向かっていることがわかった。その速度、平均時速3200Km。11年間の観測結果だが、この間3億2000万Km動いた。
これは、地球太陽間の距離の約2倍に当たる。
この激しい渦巻き運動によって、星間物質を効率よく星団の中心に送り込む働きをして、星の誕生を促しているのであろうと考えられている。
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