見出し画像

不思議な惑星 グリーゼ1214b


https://www.nasa.gov/feature/jpl/nasa-s-webb-takes-closest-look-yet-at-mysterious-planet

へびつかい座の方向約42光年の位置にある恒星GJ1214を公転しているしている太陽系外惑星、GJ 1214 bと呼ばれる惑星のイラストである。

GJ:グリーゼ近傍恒星カタログ(Gliese Catalogue of Nearby Stars
ドイツの天文学者ヴィルヘルム・グリーゼによって作られた、地球から25パーセクト(81.54光年)内にある恒星の天体カタログ。

最初グリーゼは、20パーセクト以内にある1000個ほど恒星を赤経の順に並べたカタログを作った。その時のカタログには、GL NNN(NNN は1~915)の番号がつけられている。

その後何度か改定が行われ、収録範囲も拡大し、現在は、春ムート・ヤーライスとともに拡張したカタログ、グリーゼ・ヤーライス (Gliese Jahreiss)カタログとなり、4000弱の恒星が搭載されている。カタログナンバーは、頭文字にGLがつく。

このカタログには、表が2つあり、
表1には、近傍の恒星と確定したものが載せられ、GJ1NNN(Nは数字)で表せられている。番号は赤経順に1000から1294。
表2は、近傍と疑われる恒星が載っていて、GJ2NNN(番号は赤経順に2001から2159)の符号が割り当てられている。
 
天体には、M(メシエ天体)とかNGC(New General Catalogue of Nebulae and Clusters of Stars)など、符号で表されているものが多い。

というか、専門的には天体は、これらの符号で特定される。これらの意味をわかっていないと、何かとてつもなく難しいことを表しているように思えて、非常にとっつきにくい。
 
だから、符号付きの天体表記を見たら、何の意味じゃそれ、と調べてみると、何だそんなことかと一挙に身近なものに感じられるようになる。

直径は、地球の2.7倍、質量は6.7倍程あり、表面は、厚い雲ないしは蒸気のモヤに覆われていて、主成分は水であろうと考えられている。そのため、天文学者は、The waterworldと呼ぶ。

もっとも、表面温度は、300度近くあり、液体の水が存在するには暑すぎるので、水蒸気で覆われていると思われる。

この惑星は、主星の周りを地球時間で1.6日(誤植ではない)で公転している。

以上が、GJ1214bの概略。

だが、ここで疑問に思うのではないか。

我々の太陽の惑星である海王星でさえ、なかなか観測しづらいのに、どうやって、43光年も離れたところにある、地球の3倍弱の大きさしかない惑星のことが、分かるのだろうかと。

そもそも、太陽系以外の恒星に惑星があるとどうして分かったのか。


太陽系以外の恒星の惑星(系外惑星)の探査として
まず、考えられたのは高性能の望遠鏡で探すという方法だ。
しかし、これはとても難しい。
なぜなら、惑星は主星の10億分の1位の明るさしかない。

ある恒星の周りにある惑星を見ようとしても、主星が明るすぎてその周りの10億分の1の明るさの惑星は見えない。

次に考えられたのは、
簡単に言えば、重力によるふらつき現象を調べる方法。

恒星と惑星の間には、互いに引力が働いている。
だから、恒星も同じ位置ではなく、共通の重心の周りを回っていることになる。

そうすると、地球から見ると恒星が一点にとどまらずに揺らぐように見える。
この揺らぎ具合を調べて、間接的に惑星を発見しようというものだ。

これも、難しかった。
何せ、恒星と惑星がお互いに引力の影響を及ぼし合っているといっても、恒星の方が質量が大きい。
だから、その揺らぎ具合は小さい。

その上、ただでさえ微妙な揺らぎなのに、地上から望遠鏡で見ると大気の揺らぎもあって、本当に恒星が揺らいだのか、大気の揺らぎの影響か判別するのが困難だ。

それではと考えられたのが、ドップラー法。
恒星が自分自身の重心以外のところを重心として、公転しているなら(円とか楕円軌道を描いて)、地球に近づいたり遠ざかったりする。

こうなると、その恒星から出る光は、地球に近づくときは、波長が短くなり、遠ざかるときは波長が長くなる。これがドップラー効果。

これなら、地球の大気の揺らぎに関係なく観測できる。
これでいける! とみんな考えたらしいが、なかなか見つからなかった。

そうこうしているうちに、10年程経ち、もしかしたら、いや、本当に惑星というのは太陽系にだけしかないのではないかと、みんなが思い始めた頃・・・見つかった。1995年のことだ。

見つけたのは、スイスジュネーヴ大学の天文学者ミシェル・マイヨールと、大学院生のディディエ・ケロー。

世界中の天文学者が、10年間束になって探しても見つけられなかった系外惑星をマイヨール達は、探索を始めて1年も経たずに見つけた。

なぜ、こんなことができたかというと、それは先入観にとらわれなかったからだと言われる。

どういうことかというと、惑星の公転周期に関して太陽系の惑星が頭にあり、短くて1年、通常は数年以上の長さを想定して観測していたのです。

マイヨール達の見つけた惑星は、木星大の惑星が公転周期4.2日で主星の周りを回っているという常識はずれのものだった。これと同じようなものは、他の天文学者も見つけていたが、そんな惑星が存在するはずがない、観測誤差だと無視してきたのだ。

彼らは、この先入観を捨てて観測データに基づいて惑星の存在を確信して発表した。
二人は、この功績が評価され、2019年のノーベル物理学賞を受賞している。

惑星を発見しただけでノーベル賞かと思うかもしれない。

しかし、太陽系以外の恒星に惑星があると、その中には生物が生きられる環境のものもある可能性がある。
その中には、知的生命体が生存しているかもしれない。

つまり、宇宙には、我々以外の知的生命体が存在する可能性が出てくるのだ。これは、人類の世界観の根本に変化をもたらすものだということがわかると思う。

他に系外惑星の探査方法には、トランジット法というのがある。

これは、ターゲットとしている恒星の前を惑星が横切るとき、恒星の光を遮ることから、恒星の光が減光する現象を使って、惑星を発見しようとするものだ。

ドップラー法よりも、簡単でいいのだが、探す惑星の軌道が我々に対して、横向きでないと使えない。
また、太陽系を基準に考えると数年や数十年に一度しかチャンスがない。たとえば木星を考えると、公転周期は、11.86年なので、約12年に一度になる。

そこで、実際は使えないと思われていた。
ところが、1999年にハーバード大学の大学院生がトランジット法で公転周期3.5日の系外惑星の発見に成功した。

こんなことがブレイクスルーとなり、2023年5月1日時点で5,363個の系外惑星が発見されている。

さて、GJ 1214 bの組成や大気の状態は、この惑星が主星の前を通過する前後の光のスペクトルを分析して分かったのである。




サポートしていただけるなんて、金額の多寡に関係なく、記事発信者冥利に尽きます。