暗黒星雲
この右下から左上に伸びる不吉な黒い影は、地球から5,000光年に位置にある、さそり座にある暗黒星雲である。
暗黒星雲とは、星間物質がたくさん集まり、背景の星の光を遮って暗く見える星雲のことである。
暗黒星雲と聞くと、暗黒の帝国・悪の帝国、みたいなイメージが先行するのじゃなかろうか。
しかし、暗黒星雲は自然現象なので、善悪とかの人間的価値判断の入る余地はない。
そもそも、暗黒とはどういうことか。
見た目が暗い。つまり、光がそこから届いていないということだ。
反対に、暗くない・光が届くという場合は、2種類ある。
1、 その物が光を出している。
2、 その物に、光が反射して、その反射した光が届く。
だから、光が届かないという場合は、
① 物が光を出していない。
② 物から出た光(反射光も含む)がさえぎられている。
③ そもそも、そこに物自体がない。
のいずれかの場合だ。
じゃあ、暗黒星雲はとなると、上記の①と②になる。
物質は存在するが、光は発してない。。
しかし、見えないのに、どうやって、存在するとわかるのか。いや、黒くなっているからじゃ、答えになっていない。
なぜなら、そこに何もない場合も、見えないから黒くなる。
ということで、どうやって、黒く見えるところが、暗黒星雲だと判断するのか。
それは、暗黒星雲の周りの星を見る。
単位面積あたりの星の数を調べ、周りと比べ少ないとそこに光を遮る物、暗黒星雲があると判断するのだ。
もっとも、暗黒星雲と言っても、可視光線で見えないということなので、可視光線以外の赤外線等で観測するという手段もある。
この暗黒星雲、さぞかしチリやガスが集まっているのだろうと思うだろうが、その密度は、1㎤あたり数100個の分子と地球の大気(1㎤あたり3×10の19乗個)の分子)よりずっと希薄だ。
その上、温度は10K(−263°C)程度ととても低い。
つまり、不活発なのだ。
しかし、信じられないだろうが、この暗黒星雲のチリやガスが集まり、やがて星が生まれるのだ。
つまり、暗黒星雲というのは、星の母体なのだ。
そうやって暗黒星雲を眺めてみると、悪の帝国どころか、将来大小の星々が生まれくる可能性に満ちた、豊穣な宇宙の海と見えてこないだろうか。