「経営判断に必要な『人の動きと会計を結ぶ』コラム」 #002 数字数字と言いたくありません
小売業の会社の社長が、店舗の社員に個別に数字を持たせて進捗を確認していくタイミングで、話した言葉です。
この言葉が意味するところは、数字という「結果」で社員を責めたくない、という思いから出てきました。
これはよくある誤解ですが、結果だけを見て「責める」というイメージをしてしまうとそうなってしまいます。社員の方にとっても「責められる」ための指標が出来てしまうので、避けたい。
数字というのは、どうしても葛藤を生むので、避けたがる社長も多いです。でも、これなくして話をしてもどうしても曖昧な言葉のやり取りに終始してしまいます。結局コミュニケーションもおろそかになり、そして何をしているかお互いに見えなくなります。そして出てきた結果が思い通りのものでなく、ストレスを抱えることになります。
ここでのポイントは2つあります。
①数字と向き合う葛藤を避けようとしないこと。
②結果ではなく、プロセスにフォーカスすること。
1つ目の葛藤をいかに乗り越えるか、という点です。
数字が明確になるとどうしても、目先の売上に走ったり、お客様都合より売上を優先したり、いろんな問題が発生します。社員からも職場の雰囲気が悪くなるから止めて欲しい、という要望が出てきます。一見もっともらしく聞こえるからたちが悪いのです。
数字が達成できない社員に対してどう指導するのか、どのように接するのか、どうしたらチームワークを保ったまま競争を維持するのか、などいろんな課題が出てきます。
「だから、数字を掲げることをやめる」ではなく「どうすれば、社員に数字を意識しながら、モラルも意欲も高く仕事ができるか」ということに正面から取組むことがすごく大切になります。
②のプロセスに関わる、ですが、上記の葛藤の部分と重なる部分があります。結果が出るプロセスの部分に関われる仕組みが作れて、実際に関わっていけるかどうかです。
毎月の収支の数字を会議でやり取りするのも必要なことですが、今現在の進捗に対してどう手を打つか、何が必要なのかを考えさせるために、リアルタイムに関わることが必要になります。そのための指標づくりや話をするための見える化を工夫します。
日々リアルタイムに確認できる指標があり、現場と社長がそれを確認出来てお互い話ができる状況を作る必要があります。毎日の朝礼でも夕礼でも良いですし、ITを活用しても構いません。
この小売業の会社の店舗では、店長とメンバーが個人売上を全員が進捗をパソコンで毎日見えるようにして、売上が上がらないメンバーの業務内容の見直しや、商品知識が足りない場合は倉庫を整理させながら、商品知識を身につけさせたりして、全員が毎月目標を達成するために工夫を重ね、チーム力が上がっていきました。
倉庫に入ると販売の時間が減る、と文句を言っていたメンバーも、倉庫に入り在庫が頭に入ったほうが販売の対応力が上がる、ということに気付き、その後はみんなが積極的に倉庫の整理をするようになりました。
数字で雰囲気が悪くなる、とやめていたらこういう工夫も生まれません。仕事の楽しみにも気づかなかったでしょう。
数字がなければ、それを達成する喜びもありません。数字を避ける、ということは曖昧な状態を続けることを選択してしまうことにつながります。