トゥヘルがチェルシーで過ごした19ヶ月をざっくり振り返ってみた
🔵はじめに
7日、チェルシーはトーマス・トゥヘルの解任を発表した。
急な発表に驚きもあったし、個人的には寂しいニュースだった。
今回はトゥヘルがロンドンで過ごした19ヶ月をざっくりと振り返り、私が思う彼の偉大さをダラダラと綴っていく。
P.S.
なお本稿では、絶望的な文才を持つユナイテッドサポーターが何故かチェルシーについて語っている。
執筆の練習も踏まえて作成したので、お手柔らかに。
🔵就任シーズン
トゥヘルのチェルシーでの旅は2020年1月に始まる。
12月にPSGを解任され、そのわずか1ヶ月後にランパードの後任としてクラブの再建を託された。
クラブとしては、ここで偉大なレジェンドに別れを告げ舵を切ったことは、結果的に大きな転機となった。
トゥヘルは就任後、即時にシステムを3バックに変更し最適解を見つけた。
チームは見違えるように質の高いサッカーを始め、遠い存在だったシティ、リバプールの背中が見えた。
直接対決では内容、結果ともに上回るゲームもあり、即席で作ったチームとは思えない完成度を見せた。
そして、最大の功績はCL優勝である。
マドリーとシティを相手にスコア、内容ともに上回った文句なしのビックイヤー獲得は、現代サッカーがいかに”監督ゲー”かを示す結果となった。
補強禁止処分やランパード政権を耐え抜いたサポーターにとっては、トゥヘルは神様のように見えただろう。
🔵21-22シーズン
就任初年度とは違い、昨季は難しいシーズンとなった。
1億ポンド近い移籍金で獲得したルカクの不発、チルウェルの長期離脱は、選手層の問題だけでなく戦術の幅をかなり狭めた。
そして、決定打となったのはクラスター発生による戦力の大幅離脱だ。
GK2人を含むベンチメンバー6人で臨む試合もあり、監督が手を尽くしてどうにかなる状況ではなくなっていた。
こうして、最高の雰囲気でスタートしたシーズンは不運に見舞われ、年を跨がない内にプレミアのタイトルは遠のいてしまう結果に。
連覇を狙うCLでは2年連続でマドリーとの対戦だったが、ベンゼマの劇的ゴールに沈み、主要タイトルの獲得は叶わなかった。
しかしネガティブな話題はまだまだ尽きず、突如ロマン・アブラモヴィッチの政権が終焉を迎えた。
クラブを売却するに至った経緯は割愛するが、チェルシーは思いもよらぬ形でクラブ最大のアイコンを失った。
来季に向けた補強は行えるのか、そもそも来季以降フットボールクラブとしての活動を継続できるのか、不安に包まれたままシーズンを終えた。
🔵22年夏の移籍市場
後味の悪いシーズンが終わり、トッドベーリー新オーナーの下、新たなサイクルへ。
ピッチ外のゴタゴタはひとまず収束し、ピッチ内へ目を向けることができたのは幸いだったが、課題は山積みだった。
一番の痛手は、リュディガー、クリステンセンの主力CB2人が契約満了で退団したことだ。
アスピリクエタが契約を延長したことは幸いだったが、3バックをメインに使うチームは大きな打撃を受けた。
また、前線はルカク、ヴェルナーという2人のフィニッシャーがチームを離れ、昨年フルシーズンを戦えなかったスカッドにさらに穴が空いた。
そして選手獲得においても、敏腕ディレクターのグラノフスカイア退任の影響は大きかった。
今夏のチェルシーはプレミアで最もお金を使ったクラブだが、クンデやラフィーニャといった第一希望の獲得は実現できず。
おそよ3億ユーロを使い獲得したのは、
クリバリ、フォファナ、ククレジャ、ザカリア、チュクウェメカ、スターリング、オーバメヤン。
どれも素晴らしい選手だが後手に回った感は否めず、枚数を補填することに追われた夏だった。
🔵22-23シーズン
忙しい夏を終え新シーズンを迎えたが、PL6節、CL1節の計7試合を終えた段階でトゥヘルは解任の目に遭った。
解任の理由は、もちろん成績不振ということもあるが、新オーナーとの人間関係も大きいそう。
ベーリーはロナウドの獲得を希望したがトゥヘルがGOを出さなかったとか、、433システムを希望したとか、、
そしてトゥヘルも、チェフやグラノフスカヤの退任したことでフロントマンとしての業務を求められ、フットボールに集中できないことに対する不満があったという。
こうしてトゥヘルのチェルシーでの旅は突如終わりを迎えた。
🔵トゥヘルが残した功績
私が思うトゥヘルの最大の強みは、選手の能力を見抜く目の良さだ。
持っているカードを適材適所に並び替え、選手の能力を最大限に引き出すことができる。
シーズン途中に新監督を招くクラブにとってこれほどありがたいことはない。
中でもリュディガーはその恩恵を最も受けた選手であり、ベンチ要因から世界最高峰の左HVと変貌した。
他にもランパード下で台頭したマウント、リース・ジェームズの二人のアカデミー選手は、トゥヘルの元でコアとして扱われるまでに成長し、ポゼッションサッカーを好むサッリが連れてきたジョルジーニョは後ろからのビルドアップに欠かせないキーマンだった。
コンテの元で3-4-3システムを経験済みだったアスピリクエタ、M・アロンソ、カンテの戦術的なアーカイブも、スムーズな3バック化の支えになったはずだ。
このように若手の伸び代、ベテランの経験値など、様々な要素の噛み合わせを整えたことで、4ヶ月でのスピードビックイヤーは達成された。
少し残念だったのは、21年夏の移籍市場で翌シーズンに向けた戦力の上積みがなかったことだ。
補強費をルカク1人に全額ベットしたが、不発に終わってしまった。
ルカク獲得の狙いは、最前線に明確なフィニッシャーを配置し直線的にゴールに迫ること。そしてルカクのポストプレーを起点にし、2シャドーのプレーの幅を広げることだっただろうが、理想とする形を見れたのは開幕後の数試合だけだった。
結局、トゥヘルがチェルシーを指揮した19ヶ月の中、最大の火力を出したのは就任からCL制覇の期間だった。
トゥヘルの手腕によって短期間でチームの欠陥を塞ぐことに成功したが、やはり1シーズンを通して戦うとなるとスカッドの整理が十分ではなく、昨季は運にも見放された。
良好な関係を築いていたアブラモヴィッチがスラブに残っていれば、夏に契約が切れた選手が契約を延長していれば、トゥヘル解任はなかったかもしれないが、やはり監督が能力を発揮するには環境やタイミングが重要だと感じる。
しかし、別に長期政権が良い、短期政権が悪いなんてことはない。
時間とお金をかけてもビックイヤーを獲れない監督がいる中、トゥヘルは短期間で歴史に残るチームを作った。
正直トゥヘル解任は寂しい気持ちがある。
普段ユナイテッドを応援している立場から言えば、チェルシーの躍進は都合の悪いものだったかもしれないが、フットボールを学ぶ立場から言えばトゥヘルのサッカーは最高の教材だった。
今回の解任騒動もトゥヘルの監督としての能力に疑いを持つほどの出来事では一切なく、ただクラブのサイクルとトゥヘルの性格の間に多少の齟齬が生じただけだ。
むしろチェルシーでトゥヘルが残した功績はどのクラブも羨むものであり、招聘したいクラブは今後いくらでも現れるはずだ。
今後のトゥヘルに期待していきたいと思う。
ありゃした!
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