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話しかけられシリーズ
外出すると必ずと言っていいほど話しかけられることについて迷いはなくなり、本当にスッキリしています。だからといって、それが無くなるわけではないので、シリーズ化し記録していくことにしました。
いいタイトルが思いつくまで「話しかけれシリーズ」として連載予定です。話しかけられなくなれば自然消滅するタイプのものです。
さて、この3月中旬以降というのは、ずっと前にもどこかに記したように、私にとっては秋冬を越えて春まで生き延びた最強のウィルスに感染しやすい季節。この記事です。
ここのところの暖かさで、薄着の人も街に出てきていますね。そんな日和に、病院で「インフルエンザに感染しています」ということが一度ありました。インフルエンザじゃなくても、強く変異した風邪にかかったりするのが幼少期からの私の定番です。
もちろん外出しなければ感染しません。
極力、外出しないようにしてます。
だけれど、たとえばお彼岸。で、参ってきたのですが、明るいうちに行って明るいうちに帰るつもりで出かけました。
帰りにないものだけ買い足そうと、いつも行かない輸入品を扱う系のスーパーへ寄りました。狭い店内を見渡しても、探している商品が見つけられないので棚卸しをしている女性店員さんに声をかけました、私の方から。
ペーキングパウダーってありますか?
すぐに案内してくださったのは、足元の棚。あー。そんな下に小さい缶に入っているものは見つけられない。早々にお尋ねして良かったと、ほっとした瞬間。店員さんが話を続けてきたのです。
これってどうやって使うんですか?
スーパーの店員さん、しかもアルバイト店員さん。そういう人は仕入れに関わっているわけでもないし、小さい店舗でも店内には把握できないほどの品物が詰め込まれているはずです。使い方のわからないものがあっても、別におかしいことではありません。
彼女は「ごめんなさい、店員なのに聞いてしまって」という体で、それを言葉にはっきり示しつつ話しかけ続けていたけれど、一つ一つの商品についてきっかけがあれば少しでも知ろうとする、そういう姿勢が悪ことなわけないじゃないのと思います。
ただベーキングパウダーで話しかけられる可能性を全く考えていなかったので、私はちょっと戸惑っていたかもしれません。ここ最近は、毎回外出するたびに話しかけられるので、今日はこれねと思い直しつつ答えました。
パンケーキとか、ああいう感じで膨らませたいときに使うんですよ。使わないとぺっちゃんこになるような時でも、使ったら確実に膨らむので。
彼女は質問を続けます。
使わないでも作れるんですか?
私も専門家ではないので、使わない自分の作り方を思い出しつつ、
ええ、しっかり卵を撹拌してメレンゲを上手に粉に混ぜれば。
メレンゲってつぶさないよう混ぜるのは、最初、慣れないと大変なんです。
うまくいかない時も多いから。
彼女はさらに続けます。
この隣のドライイーストも同じですか?
これでも膨らみますか?
ホットケーキミックスには最初から入ってるんですね?
こうやって最初の質問からしばらく、会話は質疑応答の形でどんどん続きました。どうも彼女はお客様の買い物動向を観察しているうちに、グルテンフリーの自家製パンを試みようかという、ぼんやりではあるけれど志というか「トライ=やってみたい気持ち」が形になりかけているところのようでした。
あ、なんか芽生えている。
そう感じさせました。
花を買ってきた時も、豆苗を買ってきた時も、蕾や芽を見ると「育つかな?」って思ってしまう傾向が私にはあります。今どのくらいの状態かを観察して、この花だったらこの程度という塩梅を見つけて手を貸します。対話と同じです。過剰になると毒になるし、不適切だと邪魔になるからです。そうやって手を入れたり引いたりして、手助けするのは嫌いじゃないのです。それはたぶん、小学生の時から。
ただ、このことで後悔したこともあります。
以前の職場で、観葉植物がフロアーに飾られていました。インテリアとして。レンタルで定期的に入れ替えするのでそれはそれでいいのです。レンタルしている期間だけ、できるだけ健康に保てれば美しいインテリアとしての役割を果たす存在です。
ところが、私が移動してきた頃の観葉植物たちは見るからに枯れていました。原因は水不足で、土は触らなくてもわかるほどにカラっから。かわいそうだったので気がついたときに、ちょろっと水をあげていました。
そんな折、たまたま観葉植物のレンタル会社の方が入れ替えに来たところに遭遇したので、どうせならとどうすれば美しく保てるかを尋ねてみたのです。するとやっぱり、表面が乾いたら湿らせてあげる程度でいいし、それよりも葉を霧吹きで濡らしてあげてくださいという説明でした。そこへ上司がやってきて、観葉植物の担当にするからお水あげてねって言われました。喜んで引き受けました。
しかし。もう、そこから大人の事情の始まりです。それまでやっていなかった人たちからの反感を100%買い、そんなに欲しくない水を我先に観葉植物の鉢へ毎朝ふんだんに投入する行為が始まりました。担当となった私はというと、観葉植物の様子を見ようとするだけで「もう今朝あげました」と言われるほど監視される始末。これでは根腐れして再び枯れてしまうと思い、私は完全に手を引きました。それからどのくらい経ったでしょうか、インテリアの観葉植物はふたたび干からびるように戻ってしまったのです。
水を撒かれる方のことを全く考慮しない人たち。その強さが役に立つから会社に雇用されているのだろうけれど、誰もそのパワーを制御できない場合、木の芽も育たない屍が次から次へとごろごろ転がる環境になるのです。言葉のない植物への対応が、いろんなことを物語っていました。
大人になってしまうと、そうやって仇になる時も出てきてしまったから、余計なことにはかかわらないようにしているわけですけれど、スーパーの彼女の場合だと、興味が湧いているのだけれど自分で調べて突き詰めるところまでいかないかもなと思いました。5分くらい喋ると、そういった学習傾向というか履歴(log)を元にした未来が少し想像できたりします。
だから、会話の中にいくつかヒントを入れました。私も専門家ではないので、調べてお知らせするようなことまでベーキングパウダーのことについて話すわけにはいかないけれど、アレルギーが絡むと何種類もの成分がかかわるだろうし、アナフラキーショックとかにもなるわけだし「単純じゃない」「気をつけて」くらいのお知らせをしたい。それで、ペーキングパウダーの缶の成分表を見て使う感じをお伝えしました。「がんばってくださいね!」と応援しつつその場を離れました。
一斤焼きの型を買ったままになっているのですが、片付けにより電子レンジのトレーが出てきたので、国産小麦「春よ恋」と生イーストで焼いてみようかなと思います。果物の発酵で作るパンならグルテンフリーに向いてるのかもしれないですね。よく知らないのだけれどやってみたいです。