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ミナ ペルホネン(minä perhonen)と私

2020年秋。ある友人が、その日に私が着ていたワンピースを見て、「やぐちさんって、ミナ ペルホネンが好き?」と訊いてきた。
 
「え?知らない。ミ…ナ?」
「うん。ミナ ペルホネン。好きかなぁ、って思った。」

私は、情報を取りに行くのが本当に苦手だ。世間で流行っていることを知らないなんてよくあること。

家に帰るとその友人からLINEが届き、ちょうど先日まで県内で開催されていた『ミナ ペルホネン展』で撮影が許可されていたというテキスタイルの写真が数枚添付されていた。正直、作品の全部にときめいた訳ではないが、そのほとんどを好きだと思った。

早速、ミナ ペルホネンについて調べてみて、サイト冒頭の記述にハッとする。 

1995年デザイナーである皆川明により、自身のファッションブランドとしてミナ(minä )を立ち上げたところから始まります。

https://www.felice-lifedesign.com/f/ft_mina-perhonen

「私、このminäって知ってる…」

ひとめぼれしたスカート


記述にあるminä立ち上げの1995年〜97年のことだと記憶しているが、ファッション雑誌に掲載されていた1枚のスカートの写真に釘付けになった。全体的に茶系で、葉っぱのようなものをモチーフにした比較的大柄なプリントが裾に対して平行に横並びで連続的に施されたギャザーのロングスカート。これを欲しい、と思った。記憶はかなりあやふやだが、写真の下に、

ロングスカート¥15800(ミナ)

と書いてあったと思う。だいたいそれくらいのお値段だった。まだ学生だった私にはちょっとお高いものだったが、手に入れたいと思った。どこで買えるんだろう?

携帯電話がまだ普及しておらず、ポケベルが流行っていた頃の話だ。パソコンでEメールなるものを送ることができるらしいことは知っていたが、そもそもパソコンもまだ普及が十分ではなかった時代。そのスカートが売られている場所を知るには、電話をかけるしかない。

その記事の終わりのページにずらっと掲載されているSHOP LISTの中から「ミナ」の文字を探し、そこに書かれている番号をダイヤルする。それは東京の番号だったか…。

30~40代と思しき男性が電話口に出られた。私の好きな、落ち着いていて優しい声の持ち主。雑誌名とスカートの掲載ページを伝え、当時住んでいた京都で購入できるお店があれば教えて欲しいとお願いした。

男性の声がワントーン上がり、雑誌を見てミナの商品を気に入って電話をもらえたことが大変うれしい、と率直におっしゃった。その時はその反応について深く考えなかったが、今振り返ってみて、当時はちょうどminäのブランドが立ち上がったばかりの頃だったのだと思うと、それがどれだけ自信を持って発表したコレクションであったとしても、消費者の反応が気になり先行きへの不安があっただろうし、そんな些細なことでも一社員として喜んでいただけたのかな、と思う。

肝心の一番近くで購入できるお店については、大阪心斎橋のPARCOだということだったのだが…ここからの記憶がかなり怪しい(^^;)

後日行ったような気もするし、行ってないような気もする。行ったがお店を見つけられなかった…いや、売れてしまってもうないと言われたような気もする。とにかく、結論としては私の手に入ることはなく、幻のスカートとなってしまっていた。


3度目のお近づき


記事冒頭のエピソードでminäのことを思い出したことがきっかけで、以来頭の片隅にずっとミナ ペルホネンがいる状態が続いていた。

そして今年の3月22日、いつものように同時通訳者・英語コーチの田中慶子さんのVoicyを聴いていると、慶子さんの口からまさかの「私の好きなミナ ペルホネン」とのお言葉が!

※プレミアム限定放送です

即座に反応してすぐにコメントしたくなったのだが、誤ったことを書いてはいけないと思って調べていて、また新たな発見があった。

-tambourine(タンバリン)- は 2001 年秋冬発表以来、minä perhonen を代表する柄のひとつになっています。 小さなドットの刺繍が集まり輪を描いています。円は正円ではなくフリーハンドで描いた円で、配置されたドットの間隔は不均一です。遠くから見たときには同じように見えるのに、よく見るとドットのそれぞれの刺繍、ふくらみや形には微妙な違いがあります。それは人の体が実際には左右対称ではないように、私たちにとって不均一な形は自然なのではないでしょうか。目は無意識にその自然を受け入れ、心地良いと感じます。タンバリンのドットもそんな感覚の内にあると思います。

https://www.felice-lifedesign.com/f/ft_mina-perhonen

だから私は、一見すると規則的に整列しているこのタンバリン柄に魅かれているのか…。

ガウディ建築のカサ・ミラ。建築された当時は”醜悪”とさえ言われた、直線を全く使わない建造物。かなり前にTVで観た時に、
「なんてステキな建物なんだ。…え?今も住めるって?そして格安?あぁ、住むには多くの制約があるのか。そりゃそうだ。でも、住めるものならいつか住んでみたい。」
そう思った。直線ではなく曲線こそが心地いい、ひいては、整った状態よりも少し外して抜け感があって不均一だったりアシンメトリーであったりというものを好む、という感性を自分は持っているのだと気づいた出来事だった。

このように、私の生活の中にひょこひょこと顔を出し、その存在感を都度高めてきた『ミナ ペルホネン』。


…。
「もう、お前を離さない」
こう言って抱きしめるのが、きっと正解だな。

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