ありえないこと
3月の花粉の時期。それはデスカーニバルの幕開け。
起きた瞬間、顔面に植物の生命の種子がべっとりと塗りたくられていることに気づくところから1日は始まる。マスクが嫌いな僕がマスクをせずに外へ出ると、その種子たちは容赦なく体内に侵入し、すぐさま鼻水とくしゃみの嵐に見舞われる。こういう時期は洗濯にも気を使わなければならず、基本部屋干し。そんな時に活躍するのがアリエール(部屋干し用)。これを選んだ理由は特にない、多分有名だったから。詰め替え続けて使っている。最近の洗剤は本当にすごい。混ぜるだけで汚れと匂いを取るなんて文字通りありえないことをアリエールにしてしまっている。
昔花粉症を発症したばかりの頃、なんとなく気になって調べたメカニズムを見て当時の僕は驚いた。
「え、花粉の成分がこの症状を作り出してるんじゃないの?」
そう思った。実際花粉症によって引き起こされる人間の症状は僕たちの過剰反応らしい。花粉が入ってきただけで、過剰反応しこんな大変なことなってしまっている。こんな間抜けなことはない。
少し話が変わるが、僕は来年受ける大学院試験で研究室、ないしは研究テーマをがっつり変えるつもりだ。これについては周りからの批判がすごかった。今いる研究室で上に上がる方が、院試も受かりやすいし、研究自体も楽になる。教授側からすれば、自分の育ててきた駒が無駄になるのだからそりゃ反対する。無理だ、今から変えるなんてありえない。そう言われた。
ただ、僕のやりたかった研究はここじゃないと感じてしまった。少し遅かったかもしれないけれど、そう感じたのだから仕方ない。
一番鎮火するのが大変だったのは親だった。
「そんな急に変えるなんてありえない。今まではなんだったの?教授はなんていってるの?到底可能とは思えない」
きっと僕のことを一番に考えてくれている。自身たちの経験から安全な道を用意してくれてるのだろう。その思いが強ければ強いほど反対は大きくなる。大切に思ってくれるからこそ過剰に反応してしまう。花粉から身を守るためにするはずだった、子供を安全に成長させるためだった。だが過剰だった。
親からしたら僕はいつまでたっても子供だし、その立場は変わらない。けれど僕も僕なりに考えて答えを導いてる。完全に信用しろなんて思わないけど、信じるフリくらいはしてほしい。まあでもこっちとしても安心して見守ってもらうにいいことはない。だから出来るだけ大丈夫だろうと思いながら見ててほしい。そのために僕が出来ることはそんなにないのかもしれない。
こういう時に一番やっちゃダメなのは自分が不安そうな態度をとることだ。だから心の中では不安がいっぱいでも自信満々でこう言おう。
「あり得ない?いや、アリエールでしょ」