彼の就職活動

大学四年生になり、周りの人たちは躍起になって就職活動に勤しんでいた。僕は大学院に行くことにしたので彼らの応援をしながら、院試の勉強をしている。

就職活動をしている友人の中には、大学一年の時から親しくしている人もいた。彼は商社志望で、この6月頭が勝負の時だった。彼が目指していた五大商社に入るということは、容易なことではなく、彼自身も不安から眠れない日が続いていたらしい。そんな彼が内定をもらった。それも商社の中で最大手と言われる会社からだ。今日僕はバイトだったので、バイト終わりにラインを開くと、「〇〇から内定もらった、お前と飲みたい。」というメッセージが来ていた。シンプルにおめでとう。すぐさま最寄りの駅に急行し、彼が待っている居酒屋へ向かった。僕がきたことがわかると彼は席から立ち上がり、キラキラした目で抱きしめてきた。本当に嬉しかったのだろう。僕も本当に嬉しかった。僕は隣の芝は青く見えるを悪化させたような性格の持ち主で、周りの人が成功しているのがあまり好きじゃなかった。ただ、今回ばかりは本当に嬉しかった。嫉妬もなにもない。あぁ、自分にとって彼は本当に大切な存在になっていたんだと改めて認識し、感動した。

他人の幸せを喜ぶことができたなら、その他人はもはや赤の他人ではなく、自分の一部のような感覚になるのだと思う。初めてそれを実感し、なんとなく嬉しくてふわふわした気持ちになった。彼はこれからも成長していくし、それを見るのが楽しみだし、彼にとって僕もそんな存在であれたらなとしみじみと思う。彼と知り合って本当に良かった。感動というにはもったいないこの気持ちを、大切に心にしまっておこうと思う。そんな彼とは、これからも飲みに行って、近況を話し合い、お互いにお互いを見つめ合うそんな関係であっていて欲しいと願った夜だった。

最後に、「本当におめでとう。」


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