「やさしい僕をおぼえていない」(切れはし小説ShortScrap)
やさしさの回路を失ったアンドロイドのように、自分の身を悲観してひとり泣いていた。
誰もいない荒野は、単色の無機質な岩場で、生きている者の気配をなにも感じられない地獄のようなところだった。
「まるで僕にお似合いの世界だな。ひとりうずくまってここに生きていたら、誰からも認識されず、誰も恨まず、憎むことも憎まれることもなく死んでいくことができるのだから」
やさしさを失った自分の居場所はここくらいしかないんだ。そう思ったら、哀しくてたまらなくなった。
不意に風が吹いて、渦を巻くように目の前の砂が舞いあがった。
逆光に照らされて、黄色の砂は金色に輝いた。粒のひとつひとつが反射して、まぶしく光った。
そして僕は気がついてしまった。
僕が失ったものなんて、はじめからないということに。つまり、やさしさなんて、元々僕にはひとかけらもなかったということに。