おしりが痛いことがある

 眠っているときに、ときどき、おしりの痛みで目が覚めることがある。

 それは突然のこと。
 
 ふわっと意識が戻り、ああ、まだ夜中だなあ、なんてぼんやりと考えているうちに、あれ、おしりがとんでもなくズキズキしているぞ、と気がつく。
 
 気がついたら最後、その痛みはどんどん誇大化していき、私の意識を飲み込んで、思考のすべてが「おしりが痛い」に変わってしまう。
 ちょっとやそっとで耐えられるような痛みではない。
 身体の内部からくる震えのような痛みが、私をどうにかしてしまうのだ。
 これを放っておけば、おしりからエイリアン(リドリー・スコット監督作品)が飛び出してくるんじゃないかと思うくらい(ケインのあのシーンは衝撃的でしたね)痛いのだ。
 もはや、再び眠ることは不可能なので、私は震える身体を引きずりながら、トイレへと向かう。

 私の家のトイレには、メンソレータムが常備されている。
 緊急事態をおさめるために必要な、私の大切な相棒だ。
 リトルナースのかわいい蓋を、くるくると回して、私はメンソレータムをおしりに塗る。

 痛みに上塗りされていく清涼感(スースー)
 しばらくじっと待つ。まだだ、まだ足りない。次第に痛みのほうが強くなり、清涼感を抑えつける。
 もう一度塗る。そして待つ。
 さらに塗る、待つ。
 そうして、リトルナースのパワーがおしりの痛みを上回ったとき。やっとベッドへ戻ることができる。

 こういうことが年に数回ある。
 もしかして痔なのか、と思いつつも、
 なんかおしりが痛いことが起きているだけ、ということにして、私は平凡な毎日を過ごしている。

 そんなこと。

 

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