「光あれ」(切れはし小説ShortScrap)
スポットライトの先に、眩しいくらい輝く水野千里の姿が見えた。
つらつらと流れるようにセリフを口にする彼女は、誰よりも美しく、誰よりも穢らわしいと思った。
「ここに神が舞い降りて、私の未来は絶対的な祝福を約束されるのだ。それは他の何者にも到達できない、私だけに許された高みである」
そう言って、彼女は右手を空へ差しだした。整った流線のラインが、指の先からつま先まで伸びて、まるではじめからその形で生まれてきたように、何ひとつ間違いのない姿に見えた。
私の目にうつる千里は、どこから見ても完成されていた。
もしもあの事故がなかったら、私もあの舞台に立てていただろうか。彼女の隣で同じように輝けただろうか。
自分の不運を呪う浅ましさは持ち合わせていたけれど。しかし、スポットライトを浴びる美しい私の姿はひとつもイメージできなくて。
思わず口元がほころんだ。