じゃんけんで絶対に負けない方法



僕が高校生だったとき、教科担任の数学の先生がこんなことを言いました。


「俺はお前らに絶対にじゃんけんに負けない」


確率の話題になったときの話です。通常は、二人でじゃんけんをすると、勝ち、あいこ、負けの確率は1/3。少し変わった先生だったので、またおかしなことを言ってるな、くらいで聞き流そうとしていました。


しかし、どうしても気になって、その場で突然じゃんけんを仕掛けることを決意した僕は、恥ずかしさと緊張のために高鳴った心音を押さえ、じゃんけんの掛け声をしました。しかし、僕がパーを出したのに、彼は何も出さず笑いながら言ったのです。


「な、負けない。じゃんけんをお前らとしないから勝つことはなくても負けることも絶対にない」


そう、一言も"絶対に勝てる"とは言ってなかったのです。ただの屁理屈をこねた発言に思われますが、当時の僕は衝撃的でした。言葉の使い方1つで、人を上手く丸め込むことが出来ることに感動すら覚えたのです。


話は変わって、よく国会の答弁で疑惑追求をされたときに「記憶にございません」というセリフがよく使われますが、これは堂々と嘘をついて「そのような事実はありません」と言ってしまうと、嘘がばれた際、偽証罪に問われる可能性があるため、明言を避けているという話があります。


言葉を巧みに使って、真正面から戦うのではなく上手くかわすというのは、生きていくうえで非常に大切なスキルだと僕は思っています。


インターネットが普及し、すべてのやりとりが電子の海に漂流し続けてしまうようになった現代では、過去の発言を完璧に取り消して訂正することは難しくなってしまいました。そんな時代だからこそ、ことに文字でのやりとりではっきりとした発言は避けるべきです。


いつそれがハラスメントの証拠として突きつけられたり、差別主義者だと非難される材料になりかねません。考えていたことをはっきり発言できる自由と同時に、それが他人からの言及の裏付になるという足枷を意識する必要があります。
卑怯だとか陰湿だとか言われるかもしれません。でも、そのような立ち回りができる人が得をする世の中なのではないでしょうか。

いいなと思ったら応援しよう!