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物品税とおよげたいやきくんに見る税のボーダーライン
税法に馴染んでいる者にとっては聞いたことがあるトピックスで、「およげたいやきくん 物品税」で検索するとたくさん出てきて、界隈では陳腐化されており、Wikipediaにも載っているネタですが、一般的にはひょっとしてそれほど知られていないかもしれないので、これをテーマに一席ぶちます。
物品税
昭和には物品税というのがあったのだよ
その昔、物品税と呼ばれるものがありました。消費税が導入されたのが1989年、平成元年の4月からですが、物品税は消費税導入とともに廃止されたので、まさに昭和まであった税です。1982年生まれのわたしは、身に覚えがありません。
物品税とは、個別消費税と呼ばれるものの一種です。税を課す物品(生活必需品は除き、贅沢品が中心)を法令で定め、物品の種類に応じて税率を変えて課し、最終販売価格に転嫁してました。
メーカーが作って出荷する段階で税を課す、蔵出し税だったとのことなので、店頭では物品税が幾らという形で一般消費者が見えるわけではないものでした。
(この点、いまの酒税やたばこ税と同じ。なお、たばこ税といったものも、物品税と言えば物品税になります。)
物品税の問題点は、いちいち対象物を政令で指定しなければならず、追いつかないし、解釈に幅が出ること
物品税の問題点は複数ありますが、この点に絞って取り上げます。
物品税は、あらかじめ課税対象となるモノを指定しておくものです。法令に掲げられていれば対象ですし、なければ対象外となります。
幾ら包括的に、たとえば「遊戯具」を対象にすると指定していたとしても、新しく出てきたモノが「遊戯具」なのかどうかを判定するのは現実世界ではけっこう困難です。
これを巡って争われたのがいわゆるパチンコ球遊器事件です。(最高裁昭和33年3月28日第二小法廷判決)判例としてはちょう有名なやつで、パチンコ球遊器は従前対象外だったのに、あるときから課税庁が通達をもって課税物件の範囲に含めるのはオカシイ、と納税者が主張したものです。
(納税者敗訴。課税庁の内部指示に過ぎない通達と租税法律主義を巡る判例として、物品税が廃止された今なお先例として意義がある)
また、余談になりますが、むかーしは、クルマにも物品税が課せられていたのですが、カーエアコンは買ったときについていればクルマとして物品税の課税対象となるけれど、後付けすれば対象外、ということで後付けする人が続出したとの逸話があります。(1997年までクルマ本体は6%の税率で、当時3%の消費税率より高かったので、このワザはそれまで有効だった…らしいです)
およげたいやきくん
1982年生まれのわたしも良く知っている曲ですが、世に出たのは1975年です。「ひらけ!ポンキッキ」(フジテレビ)でよく流れていた曲です。
「毎日毎日僕らは鉄板の~♪」という歌詞は若干シュールでありつつ、多くの大人の自らの境遇とも重ね合わせられる内容であることもあってか、大ベストセラーとなりました。
問題は、このおよげたいやきくんが物品税の対象なのかどうなのか、ということです。つまり、歌謡曲であれば物品税の課税対象となりますが、童謡であれば課税対象外なので、どっちなんだという話です。
「ひらけ!ポンキッキ」というこども向け番組を端に発した曲ですが、歌詞内容として多くのサラリーマンが共感できるものであり、事実ものすごく売れたことから、童謡なのか歌謡曲なのかそのボーダーはどっち、という問題となりました。(結果的に童謡として扱われました)
翻って現在の消費税を見ると…やっぱり少しはボーダー問題はある
物品税に代わって(一般)消費税が導入され、いちいち物品を指定するという方式から、原則課税対象という方式になりました。規定に掲げられているものが対象、という方式から、規定に掲げられているものが対象外という方式です。原則と例外を入れ替えたわけです。
そのため、およげたいやきくん問題は発生しなくなりました。
…と言いたいところですが、消費税は非課税措置を定めるものもあり、また、2019年10月から軽減税率を導入するに至ったため、ボーダーラインは少しは残っています。
近所のドラッグストアで売っている重曹は、多用途(つまり食品添加物としても使える)とあるのに軽減税率にせずに10%とするのは、違うと思うんだけどな…
物品税が廃止となったのは、ボーダーラインのキリがなくなって大変、ということだったんですが、非課税措置に加え軽減税率導入で、この問題が復活してしまいました。現行の軽減税率はまだ受容されているように思いますが、今後対象数を増やすとか言い出したら、わが税理士業界はキレます。
ということで、本日は以上です。ご覧いただきありがとうございました。