税とはそもそもなんじゃらほい
はじめに
税理士登録以来、毎年租税教室の講師をしています。小学校をはじめ各学校に行って、税金のことを話して(講義して)くるというものです。
内容は手許にテキストがあるので基本的にそれに沿って行います。このテキストは国税庁に用意されているので誰でも見ることが出来ます。
一方で、こう人に何かを教えようとなると、自分としてはそもそも論、租税原論的なことが気になって毎回ちょっと調べたりします。
今回は、その流れで、そもそも税金・租税とは何かということを、社会保険との対比でまとめておきたいと思います。
税と社会保険、どこが違うのか
日本では(といっても私自身諸外国の状況は良く知らないですが)、税と社会保険は別のものとして扱われています。管轄省庁からして違います。税は国税だったら国税庁、社会保険は厚労省が管轄です。
わたしを含め自営業者ですと、税と社会保険で納付書や納付のタイミング、納付方法が違うので別物だという意識があります。一方、サラリーマンにとってみれば毎月の給与から差し引かれているという点では同じです。
税の特色
そもそも税(租税)とは何かということを調べるべく、税金といえばこれ、という教科書(金子宏『租税法』)の最初の方を開いてみると、以下5点を租税の特色及び他の国家収入との相違として挙げています。
(1)目的は公共サービスの提供に必要な資金調達である
(2)一方的、権力的課徴金の性質を持つ
(3)特別の給付に対する反対給付の性質を持たない
(4)国民(住民)にその能力に応じて一般的に課される
(5)金銭給付であることを原則とする
例えば(3)について見てみると、行政財産の使用料(公営施設利用料)は反対給付の性質を持つため税ではないということとなります。受益者負担金といった意味合いです。
「特別の給付に対する反対給付の性質を持たない」のが違い…?
社会保険との関連でいうと、(3)を除いた各点は共通しているといえるので、(3)の点が最も税と社会保険とを峻別するものとなるでしょう。社会保険はなるほど確かにたとえば医療保険であれば健康保険の支払いとその給付が対価的な関係にあることが容易にイメージできます。
ではありますが、多くの自営業者の人が加入している国民健康保険(国保)は、国民健康保険”税”となっている自治体が多いかと思います。健康保険は社会保険の一翼を担っているものですが、”税”です。
また、税金のなかにはほぼほぼ受益者負担金的性質を持つものもあります。
一般にもわりとなじみのあると思われる入湯税は
と規定されています。実際はともかく、法律の規定上は目的税とされており、「特別の給付に対する反対給付の性質を持たない」とはいえないのではないかという疑問が出てきます。
以上の通り、税とされるものであっても、教科書的な租税の特色に当てはまらないものがあり、結局、税とはなんなんだという疑問は払底されません。
この点、先の金子租税法には「もっとも、租税を実質的に定義することは、租税法の解釈、適用上、ほとんど実益を持たない」と出てきます。
ということで、実のところ、租税とはこういうものである、というふうに大上段に定義づけされているというものでもなく、税と社会保険との関係でいえば、両者は分けて扱ってはいるものの、あくまで便宜的なものなのではないかと思います。おしまい。