振替加算1966(昭和41)年・経過的寡婦加算1956(昭和31)年のボーダーは1986(昭和61)年実施の年金改正の影響
はじめに
FP1級受験のための、自分の備忘の為の記事です。
FP1級の応用編、社会保険、年金分野の計算のカギは、加給年金や中高齢寡婦加算といったものを加えるか加えないかという判断にあると思います。
そのあたりは前回まとめたところです。
今回、そのなかでも振替加算と経過的寡婦加算について、ただ年号を覚えるだけでなくその年号となった背景があるわけなので、それを記し、もって自分の理解を深めたいと思います。
1986年実施(1985(昭和60)年法改正)の年金制度改正
基礎年金と第三号被保険者の導入がメイン
改正内容自体がFP1級の試験に問われるわけではないでしょうが、日本の年金の歴史の中でこの改正は転換的な大きな制度改正ということなので、一般常識的に抑えておいても良いかと思うところです。
ちなみに法改正がされた1985年という昭和の終わりに近い時代というのは、いろいろな戦後制度が改正されていた途上にあり、たぶんそういった時代背景があるのではないかと思います。(そこまで資料を見てないのでほんとうにそうなのかは知りません)。なお、ついでにいうと、時の総理はわが群馬県が輩出した中曽根康弘氏でした。
さて制度改正のその中心は、
(1)基礎年金の導入
(2)第3号被保険者の導入
(3)(本則において)厚生年金受給年齢の引き上げ(60歳→65歳)
です。
(1)基礎年金の導入は、民間企業労働者の厚生年金保険、公務員などの共済年金、自営業者などの国民年金というように縦割りに分立していたものを、現在のようにいわゆる一階建て部分に一元化したものです。
また、(2)第3号被保険者という区分創設により、従来は国民年金の任意加入だった被用者の配偶者(つまりほぼ妻)を加入対象に加えました。
これが、振替加算1966年・経過的寡婦加算1961年に大いに関連し、そのボーダーにつながってくるわけです。
((3)については後述。)
振替加算は1986年4月1日において20歳以上の者のための経過的措置→つまり1966年4月1日がボーダー
先述の通り、老齢基礎年金自体が1986年4月1日に設けられたものです。
そして、この老齢基礎年金というのは、20歳から60歳までの40年間がMAXであり、それを下回ると月数に応じて減ります。(基本的に納付月数)/480(=12ヶ月×20年間)。
となると、制度開始時点において20歳を超えていると、そこからどんなに納付したところで老齢基礎年金を最大額もらえないということになります。これには、なんらかの救済措置が必要になってくるため、振替加算という制度を設けた、ということです。
経過的寡婦加算は1986年4月1日において30歳以上の者のための経過的措置→つまり1956年4月1日がボーダー
この1986年4月1日において30歳以上だというのを理解するにはいくつかの段階を踏む必要があります。
まず、
①中高齢寡婦加算は遺族基礎年金をカバーするものであり、その金額は遺族基礎年金(=老齢基礎年金の満額)の4分の3相当額です。
2022年度価額でいうと、777,800×3/4=583,400円(百円未満四捨五入)です。
ところで、
②老齢基礎年金は20歳から60歳までの40年間がMAXであり、その4分の3は30年間です。
ここで、
③1986年4月1日から始まった基礎年金制度において、当時30歳であれば、そこから60歳になるまでの30年間納めれば、②のように老齢基礎年金の満額の四分の三(30/40)を受給できます。
2022年度価額でいうと777,800×3/4=583,350円 (円未満四捨五入)です。
④どの金額単位で四捨五入するかという点は差し措くと、①=③となります。
逆に、
⑤1986年4月1日時点で例えば35歳だった場合、そこから60歳までは25年間しかないため、老齢基礎年金の25/40(正確にいうと300/480)、2022年度数値でいうと777,800×300/480=486,125円しかもらえません。
そうすると、
⑥妻自身が65歳に達すると老齢基礎年金の受給権が発生するので、中高齢寡婦加算は加算されなくなるところ、⑤のような状況だと、妻の老齢基礎年金の額 < 中高齢寡婦加算の額 となり、不均衡が生じます。
ということで、
⑦経過的寡婦加算が設けられました。
以上の説明より、つまるところ経過的寡婦加算とは、
1986年4月1日時点で30歳、つまり国民年金納付期間が30年=納付期間MAX40年×3/4 以上となる人にとっては生じないものの、1986年4月1日時点で30歳を過ぎていた人つまり1956年4月1日以前生まれの人にとっては、自らの老齢基礎年金額と中高齢寡婦加算額とで不均衡が生じるため設けられた制度、ということになります。
ちなみに経過的加算額は元をたどれば1986(昭和61)年改正がためにできた制度。
下記のように、厚生年金における経過的加算額は、厚生年金保険の受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられたことにより設けられた制度です。一応、要件は以下のようになっています。
・男性の場合、1961(昭和36)年4月1日以前生
・女性の場合、1966(昭和41)年4月1日以前生
・老齢基礎年金の受給資格期間(10年)を充足
・厚生年金保険等に1年以上加入
・生年月日に応じた受給開始年齢に達している
ここで、1986(昭和61)年度実施改正時点でこの受給年齢の引き上げは、法律上(本則上)はされていたものの、いよいよ実行されたのは、定額部分は1994(平成6)年改正で、報酬比例部分は2000(平成12)年改正であるようです。
ここで女性はやっぱり1986年4月1日から20年を引いた1966年4月1日がボーダーとなっており、男性は1986年4月1日から25年を引いた1961年4月1日となっています。
最後に
以上、自分なりにわからなかった論点を厚労省や、社労士の先生が書いたブログを基に調べて理解して書き連ねたものです。ホントは年金制度の標準的な教科書にあたればいいのでしょうが、それは他日を期し、試験後の宿題としたいと思います。
本日は以上です。ご覧いただきありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?