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ヨンゴトナキオク38 2021.8.4

いつか来るその日のために

また1つ歳が増えました。そもそもこのnoteは、去年の今頃、還暦を迎える記念として立ち上げたもの。あれから自分に課した締め切りにアワアワしながら何とか続けてきたものの、7月になってその努力がおろそかになっていることに罪悪感を抱きつつも、読んでくださる数もそう増えているわけでなし、何に義務感を感じているんだろうと、急に肩の力が抜けている自分もおります。そうは言っても、相変わらず4にこだわり、その日にふさわしいネタは常に考えていて、通し番号はちょっと飛んではおりますが、抜けてしまった日の原稿も必ずやアップするぞという気持ちもあり、誕生日を迎えるにあたり、あらためて仕切り直しをしようと思っているところです。

最近は藤井風の沼にはまっている私ですが、その前からOfficial髭男dismのファンでもありました。今年のツアーコンサートにはどうしても行きたいのですが、まず最初の抽選にもれてトホホ。次なる先行抽選に賭けています。18日にはニューアルバム『Editorial』が発売されますよね。私もしっかりAmazonで予約しました。エディトリアルというのは、「編集」の意味があり、新聞だと編集委員による論説という意味でもあります。今まで発表されているシングル曲も多いので、それらをどんな順番で、そしてトータルとしてどんなことを私たちに伝えたいと思っているのか、楽しみで仕方ないです。今年で結成10年だそうですが、こんなにビッグになっても浮かれることなく自分たちを俯瞰で見ながら商業主義の中に乗っているようであくまでもマイペースなバンドとしての発信を続けている彼らのスタンスはとても珍しい気がします。

この『Editorial』から7月31日にFMの冠番組の中で、『アポトーシス』という作品が先行発表されました。radikoなら明日まではまだ聴けると思うので、チェックしてみてください。

LANTERN JAM TIMES | FM802 | 2021/07/31/土  21:00-22:00 https://radiko.jp/share/?sid=802&t=20210731210000

​しかし、タイトルがすごいですね。「アポートシス」というのは、「プログラムされた細胞死」という意味だそうです。枯れ葉が木が落ちるさまを表しているそうな。おたまじゃくしから尻尾が取れてカエルになる仕組みもそう。生物はよりよく生きるために細胞を自ら殺すようにあらかじめプログラムされていると。現代人は「不老不死」への希求を抱き続ける動物ですが、どんなものにも<循環>は必要で、いつまでも若くて生き続けることが果たして幸せなのかといえば、決してそんなことはありません。「葉っぱのフレディ」という絵本がありますが、変化のない世界などなく、いつかは誰でも木の葉のように朽ちてしまう。それでいいんだと教えてくれる物語です。それがすなわちアポートシスなんですよね。この曲を作って歌っている藤原聡、さとっちゃんによると30歳になって自分が20代とはもう違うことを感じる中で、詩が生まれたそうです。なんと老成したアーティストでしょう。元々は哲学的な思考回路の持ち主なんだと思いますが、これもおそらくはコロナ禍で活動を制限され、stayhomeしつつ音楽と向き合う中でもがき至った境地なんだと思います。私は、ラジオの中でこの曲を聴き、一遍に好きになりました。彼のハイトーンボイスがいかんなく発揮されていますが、割とシンプルな仕上がり。それだけに詩の世界にどんどん引き込まれます。

この2年近く、私はコロナ禍でどれだけの死と直面してきたことでしょう。街を歩くだけで、人と会話を交わすだけで、お酒を飲みながら楽しい時間をほんの数時間過ごすことが死と直結するなんて時代を、いったい誰が予想したのか。これも生物にあらかじめ設計されていたプログラムなのか。死の淵をさまよいながらも、医療現場の懸命な治療の甲斐あってまた復帰できた人もいる一方で、あっさりと命を売り渡してしまわなければいけなかった人たちの無念を考えると、こんないたたまれない時代はもうたくさんだと思いますが、それでもこのサバイバルゲームはもうしばらく続けるしかありません。ウィルスという目には見えないけれども空気中を浮遊する存在と闘う…

ところで、ある日、我が家のポストに入っていた1枚のチラシから、降ってわいた出来事があります。それは、お墓。地域の人だけが買える墓地の紹介をする墓石屋さんのチラシを見て、私たち夫婦は寿陵墓を得ることにしたのです。10に分かれた区画のうち、好きな場所を選び、石を選び、石に刻む文言や書体も自分たちで考えています。私としては4番か8番を選びたかったのですが、こればっかりはうまくいかず、いろいろ考えて今回はラッキー7で手を打ちました(笑)。寿陵墓は一般に縁起がいいとされていますし、大安の日を選んで開眼式の日も決めました。老後がいつまで続くのかさえ分からないのに、死後の住処は決まってしまって、実は何とも言えない気分です。でも、一人娘のためにはこれがベストな選択なんだろうと考えました。アポトーシスの摂理に従い、木の葉が落ちてまた土に還っていく。30歳のさとっちゃんが悟ったのだから(笑)、還暦過ぎた大人が考えても不思議はないでしょう。とか何とか言って、その墓はとっても小さくて費用が安く、永代供養料も要らなかったという現実的な理由もあるのですが(笑)

たけなわのオリンピック。多くの日本選手が金メダルに沸いている中、連覇を期待されながらも敗れ、活躍の場から去っていく選手たちも少なくありません。でも、それこそ「霊長類最強女子」と呼ばれた人だって、負けてリングから降りたように、いつまでも現役でいられる方がおかしいのです。ソフトボールの上野選手は素晴らしいけれど、彼女だって金メダルでない目標をもっと早くに見つけてもよかったのかもしれません。次の才能ある人に席を譲り、循環していけること。それが次なる発展につながる。いつまでも現役ぶるのはよくないなと思っています。ま、それでもしばらくは好きなことをして人様に多少のご迷惑はおかけしないといけない私ではありますが。

「訪れるべき時がきた。もしそんな時は、悲しまないで、ダーリン。こんな話をそろそろしなくちゃならないほど、素敵になったね。恐るるに足る将来にあんまりひどく怯えないで、ダーリン。そう言った私の方こそ、怖くてたまらないけど。さよならはいつしか確実に近づく。落ち葉も空と向き合う蝉も、私たちと同じ世界を同じように生きたろう。」『アポトーシス』より

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