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潮騒の公園

4コマすべり
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【お題】
ヤンキー✖️恋愛✖️地球消滅
バッドエンド⇒ハッピーエンド

即興でしゃべるのはやはり難しいので簡単にお話にしてみました
素人が即考えた非常に拙い物語です

注意)
この物語は非常にセンシティブな表現を含んでいます
ご気分が悪くなられた方はすぐにお止めください



『潮騒の公園』


僕は都心に程近い海岸沿いの街に住む高校生だ。ここは海辺に公園があり週末ともなるとドライブや散歩で人が集まる、特に花見の季節はにぎわう。

僕の家の近所にはこの付近ではちょっと悪くて有名な、言わば一匹狼のヤンキーが住んでいる…僕よりずいぶん背が高い樹(イツキ)くんだ。
なぜ怖いヤンキーを名前で呼べるのか?それは幼馴染みだからなんです、今では言葉を交わすこともないですけど。

イツキくんは早くに両親を亡くしているのでおばあちゃんと二人暮らしだ。
僕と同じ高校だがケンカやパチンコでほぼ学校には来てなかった、試験の日以外は。不思議と試験の日だけは学校に来て、ギリギリの点数で落第を免れていた。
なぜなら、イツキくんにはイツキくんのおばあちゃんと同じ名前で、隣の家に住むもう一人の幼馴染みの少女がいるのだが、その左ほほの大きなえくぼがキュートな少女はイツキくんをせめて高校だけは卒業させたいと願うおばあちゃんに頼まれて、試験の前には問題を予想した回答をイツキくんにしつこく教え、試験の日だけは朝無理矢理に一緒に学校へ連れて行っていたからだ。周りからは仲の良い押しかけ女房に見えていたかも知れない。

そんな高校生活が続いていたある日、突如、世界の終わりはやってきたのだ。

地球上のすべてのプレートで過去にない大きなさの地震が同時に起こったのだ。
僕のいるこの街にも空高い津波が押し寄せる。

その日は試験の日だった。ちょうど登校する時間帯だったので僕は自宅近くの津波避難ビルに逃げた。その途中でイツキくんと少女にも会う。が、避難ビルに着く寸前で少女が叫んだ!『おばあちゃんは!?』と。
イツキと少女は僕を避難ビルに残し、おばあちゃんのいる家へと駆け出した、もう津波の音が聞こえ初めてるにも関わらず。

幸い自宅にいたおばあちゃんを二人で連れ出し、避難ビルへと急ぐ。が、運命は残酷にも津波が三人を飲み込んだ。
波に飲まれる少女が叫ぶ!『おばあちゃん!』と。その瞬間、おばあちゃんを背負ったイツキの腕をつかんでいた少女の手が離れてイツキも波に飲まれる。寸前にイツキが少女に叫んだ!『必ず迎えに行くから生きろ!!』と。


そうして、全世界を飲み込んだ地球滅亡寸前の天変地異は人類の60%を失い、終わった。

しかし、人々は生きてゆく、命あるかぎり。


あれから50年、半世紀が経つ。
色々なことがあったが、僕はやはり生まれ育った海岸沿いのこの街にいる。今は孫と昔からある海岸沿いのこの公園を散歩するのが日課だ。
あの天変地異でも倒れなかったこの公園の大きな桜の木は今でも綺麗に花を咲かせている。
奇跡の桜のとして僕のようにここを訪れる人も少なくない。そして今、その大きな桜の木のそばにいるいつも見かけるあのおばあさんもその一人だ。

だが、その日はひとつ違った。
そのおばあさんに背が高い一人のおじいさんが近寄り、横に並んだ。二人は動かない。
僕はシーッと口に指を立てて孫をうながして、耳をすませた。

おじいさんが口を開いた
『約束は守ったぞ。』
おばあさんは動かない。
またおじいさんが言う
『記憶を失って名前も思い出せなかった。』
すると左ほほに大きなえくぼがキュートなおばあさんは答えた
『思い出したの?』と。
そしておじいさんが
『あぁ、ずいぶん待たせたな、サクラ。』
するとサクラが言った
『こんなシワシワのおばあさんになる前に来て欲しかったわ、イツキくん。』と

そしてまたイツキがサクラに言う
『あの時言えなかったことをやっと言うよ、オレは…』
聞こえたのはここまでだった。次の瞬間、潮騒の響きにかき消されてもう聞こえなくなった…

ゆっくりと僕は孫に笑顔を向けて、その小さな手を引き公園を後にした。

僕の背中の向こう側では、おじいさんとおばあさんがしっかりと手を繋いでいた…

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