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藤村龍至展ちのかたち愛知巡回展、講演会                ちのかたち建築的思考のプロトタイプとその応用

藤村さんのレクチャーは、これまでにも定期的に拝聴させていただいているが、まるで展示されているスタディ模型のようにその都度コンテンツが増殖し、その過程で発見される課題が新たな建築言語を生み、それまでの活動の系譜を引き受けつつも、体系を再編させている。
設計案を客観視し課題を発見し次なる設計案にフィードバックすることを繰り返す中から、建築を再定義していく超線形設計プロセス論そのもののようである。

展覧会は、「原点(超線形設計プロセス論)」、「記号的なかたち」、「集合的なかたち」、「連続的なかたち」へと「ちのかたち」を巡るテーマがおおよそ時系列に沿って展開され、テーマに合わせて模型を中心にテキスト、図面、映像により各建築プロジェクトが紹介されている。
テーマの変遷は、東工大から東洋大、東京芸大へと移り変わる藤村さんを取り巻く環境を逆照射しているようでもある。
自身のおかれた状況に自覚的に、そこでの作法を踏襲しつつも、批判的な視点で乗り越えていく。
コンテクストと自身のミスフィットを取り除こうとすることが、「ちのかたち」をアップデートさせていく。

超線形設計プロセス論のルールである「ジャンプしない・枝分かれしない・後戻りしない」が、やり直しの効かない人生のアナロジーであるように、建築設計論と人生論、組織論がパラレルに重なる。

そういったことからもわかるように、藤村さんが考える「ちのかたち」は、一見ロジカルで整然と秩序立てられ、ともするとドライにすら思われるが、「問いの軸・希望の軸」という言葉にもみられるようにナラティブな側面が共存するところが興味深い。
そのことが冗長性やユーモアを生みつつ、理詰めが陥る閉塞を脱臼させるとともに、議論を呼び起こすツッコミしろともなり、次なる展開の発見とシーンの形成に繋がっているように思う。

会場構成は、愛知淑徳大学3年生の授業の一環として藤村さんが提唱するプロセス論にのっとり、藤村さんのディレクションのもとシャレット形式で進められたとのこと。会場構成のプロセスがエスキスやスタディ模型とともに会場の最後に展示されているが、藤村さんはメタ展示でありメインと言ってのける。藤村さんらしいとともににくい。

ギャラリー間の中庭での展示のために制作された家具は、展覧会後、椿峰ニュータウンに寄贈され、
愛知巡回展での会場構成はそれ自体が作品であるとともにそのまま愛知淑徳大学3年生の教育へと繋がる。
ただ建築や展覧会に閉じるのではなく、そのプロセスやそこで生まれたものを都市や教育へと回路を開き、新たなコンテクストに晒すことで次なる展開に繋がる課題の種を探求しているようであり、まさに、「ちのかたち」を巡るプロトタイピングである。

「ちのかたち」は、これからも社会が移り変わるにつれてプロトタイピングのループとともにアップデートが繰り返され、その過程で建築のシーンも描き換えられていくことだろう。楽しみだ。

展覧会は、愛知淑徳大学長久手キャンパス8号棟5階で9/15まで開催されているので、ぜひ行ってみてください。


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