デューデリジェンスのQ&A記載時に留意していること(基礎編①)
はじめに
今回はデューデリジェンスにおけるQ&Aについて記載していきます。
Q&Aはデューデリジェンスにおいて情報や資料を入手できる限られた機会の一つですが、その記載方法についてしっかりとレクチャーを受ける機会はあまりない印象です(少なくとも私はない)。
そこで、これまで上司や先輩のQ&A記載に共通する点や、上手くいかなかったQ&Aの経験から、今現在留意していることをまとめようと考えた次第です。
恐らく諸先輩方にとっては基本的すぎて、あえて教えるほどのものでもないということだと想像しています。そして本noteでも非常に基本的な内容に終始していますので、その点お含みおきください。
とはいえ、私にとっては無意識に行えるようになるまでにまだまだ時間がかかりそうですので、自分自身の業務の教科書、チェックリストとして本noteが機能してくれると嬉しいなと考えています。
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個別具体的な留意点に言及する前に、M&AにおけるQ&Aの特徴をあげておくと、下記3点が考えられます。
1.コミュニケーション資産がない
対象会社とは基本的に初めてコミュニケーションを取ることになりますので、お互い理解が希薄な場合が多く、また担当者同士の信頼関係が醸成されていないという特徴があります。
2.回答者の習熟度に差がある
回答者の習熟度には大きな差がありますので、回答者の習熟度に合わせてQ&Aの内容を変えていく必要があります。習熟度が高ければこちらの意図を汲んでくれる可能性が高くなるため、専門用語をそのまま使用するケースや、後述する質問趣旨の記載や想定する回答内容などの記載が不要になるケースもあると思います。
3.QA数に限度がある
最も意識しやすい特徴だと考えています。Q&A数が限られている場合であっても、必要な情報をその制限数の中で入手しきり、クライアントに情報提供を行う必要があります。Q&Aの記載方法・記載内容が習熟しておらず、コミュニケーションエラーが生じた結果、必要な情報が得られませんでしたなどという報告はできませんので、Q&Aは非常に重要なプロセスと認識しています。
以上の特徴を踏まえつつ、具体的に留意している点について記載していきます。
留意している点
1.パターンを想像したうえで記載する
一つの質問でその質問に関連する答えを全ていただけるような記載になるように留意しています。例えば、資料間に差異がある場合の質問では、可能性として最低でも下記パターンを想像します。
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想像するパターン
①差異が生じることに問題がないパターン
・(この場合)問題ではない理由を知りたい
(・他にも同じ性質の差異が生じていないか知りたい)
②差異が問題のパターン
(1)修正が可能なパターン
・どちらの資料が正しいのか知りたい
・金額修正後の資料を開示してほしい
(・差異の発生理由から他にも同じような差異が生じているかを知りたい)
(2)修正が不可能なパターン
・修正が不可能な理由について知りたい(よくあるのが財管差異)
(・差異の発生理由から他にも同じような差異が生じているかを知りたい)
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上記のパターンに一度のQ&Aで網羅した記載になるよう意識しています。
なお、パターンを想像しすぎてしまい、的外れな記載になったり、冗長な質問になったりする可能性もありますので、他のQ&Aの回答状況や内容から、先方の管理レベルや回答者の習熟度を推し量り、ある程度あたりをつけて記載するようにしています。
2.具体的に記載する
具体的に記載していない質問とはどのようなものかというと、例えば資料間の不整合について質問する際、差異がある旨のみを記載(「売上につきまして、○○と××の資料間で差異が見受けられます」)してしまうケースなどが挙げられます。
この場合、読み手が具体的にどの金額を指しているのかわからず、QAで無駄に1往復(「どの部分を指していますでしょうか。」と質問返しされる等)する羽目になったり、認識の齟齬が生じた結果、回答がすれ違ったりとコミュニケーションがうまくいかない要因になります。
ですので、上記の例に立ち返ると、下記のように具体的に記載するよう意識しています。
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売上につきまして下記の通り差異が見受けられます。
・○○○○.xlsx:シート名「aaa」、C12セル、xxx円
・×◯×◯.xlsx:シート名「ccc」、E45セル、xxx円
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このように記載すると、読み手の手間が軽減されるとともに、認識の齟齬が生じにくくなるため、有効な回答を得られやすくなると考えています。
3.質問の趣旨を記載する
定型的な資料の開示をお願いするQ&Aの場合には必要ありませんが、DDプロセスが進み、より踏み込んだ内容の質問をする場合や、コミュニケーションの行き違いが生まれそうなQ&Aの場合には、質問の趣旨を記載することでコミュニケーションロスを低減することができると考えています。
一方で趣旨を記載しすぎると、回答者に偏向をもたらす可能性があるので、その塩梅にも留意しています。
例えば、「正常収益力の算定のため」などと質問してしまうと、質問の読み手である売り手が意図的に回答内容を操作する可能性があるため、こうした記載(FDD上の目的を趣旨として記載する)はしないように留意しています。
質問の趣旨はあくまで補足ですので、記載が必要と判断した場合であっても「〇〇を確認したい趣旨になります。」と簡潔に記載するよう留意しています。
4.想像している回答内容を記載する
例えば1・2のケース(資料間に数値の差異が生じている)で、差異が生じている理由について伺う際には、下記のように記載するようにしています。
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「差異が生じている理由をご教示ください(財管差異によるものであれば、その旨ご教示ください。また、財管差異の場合にはその内容をご教示ください(本社費・共通費の影響になりますでしょうか。))。」
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この例では、①資料間の差異は財管差異によるものではないか、②財管差異の内容は本社費・共通費によるものではないか、との回答を想像して質問内容を記載しています。
このように記載すると、「3.質問の趣旨を記載する」と同じように、こちらの質問の意図が伝わりやすくなる効果があると考えています。
しかし、このやり方も相手の回答範囲を狭めてしまうリスクや、見当違いの想定をしてしまい相手からの信頼を損なう可能性があるので、場合によって使い分ける必要があると考えています。
5.その他基本的事項
・読み手に質問内容を補完させない(超基本)
単に何かを教えてほしいのか、理解が正しいのか or 誤っているかを聞きたいだけなのか、資料を新たに開示してほしいのか、など依頼を明確にする必要があります。あたりまえの内容ですが、私はまだ意識しないと依頼があやふやになってしまう癖があるので、見直す際に意識しています。
私が犯したミスは、自身の理解を確かめるために「○○という理解で合っておりますでしょうか。」とQを出してしまったことです。「いえ、違います」とだけ回答が返ってきました。
この経験から、読み手に脳内で補完させなければ欲しい回答が得られない質問にならないよう留意するようになりました。
こうした場合、「○○という理解をしておりますが、当該理解は正しいでしょうか。理解が誤っている場合には、正しい内容をご教示ください。」とまで記載するようになりました。
・別紙の利用(超基本)
主に、オフバラ項目の質問、増減分析の一環で増減理由を質問する際や、アドバイザー側で独自に集計した数値と既存資料の数値が乖離する場合などに使用します。
アドバイザー側で独自に集計している場合には、必ず会社の元資料の名称を記載(Excelの場合、ファイル名およびシート名は必須で入れる)し、どのような処理で作成したかを簡潔に補足するようにしています。
・他DDのQA内容を確認する(超基本)
既に他のDDプロセスで質問済みの内容や回答済みの内容を質問することがないように留意しています。最終的にはFAがチェックしますが、FAは非常に多忙であること、またFAのチェックをすり抜けてしまった場合、回答者に無駄な負担を強いることになること、大事なQA数を無駄に一つ消費してしまうことになることから、アドバイザー側でも最大限留意しています。
おわりに
こうしてまとめてみると非常に基本的な内容に終始しており、やはりわざわざnoteで記載するほどのものでもないなと思ってしまいました。(具体例として、資料間に差異があるという非常に基本的な例で話を進めたからでしょうか。。)
ただ、Q&Aの記載って思った以上に難しいんですよね。。。私がドラフトしたQ&Aがプロマネによって元の原形をとどめていないQ&Aになっているのを見ると「ぐへー」と思っています。
今後という観点では、私はQ&Aの読み手の立場で関わったことがありませんので、読み手として関わる機会があればもう少し深く記載できるようになるかもしれません。
では。