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【実話】二留の人(5)
[前回までのあらすじ]
二留に入った。しかし、5月半ばで何もしていない。焦った私は就活エージェントに頼るのだったが...
【恐怖の就活エージェント編②】
再度ことわっておくが、就活エージェントは悪いものばかりではない。では、悪いものはどのようなものか。私の経験が擬似体験なれば幸いである。
5月半ば。エージェントから電話が来て3日後にzoomでの面談があった。担当者は茶髪で前髪をあげたいかにも新卒という感じのチャラチャラした男で、客引きと一緒になったらどっちがどっちか分からないような見た目をしていた。
その男と1対1で面談をする。事前に友人から就活エージェントではES(履歴書)を見てくれるとか近況の相談等してくれるという話を聞いていたが、その気配は全くない。
手始めに中高大での部活動を確認する。私が「高校で弁論部をしていました」と答えると、「いーっすね弁論部。俺ひろゆきさんよく見ててカッコいいですよね」という先行き不安になる返答が。
それでもう充分(紹介状にかけるネタを探していたっぽい)らしく、大学の部活も聞くことなく、早速企業紹介へ。聞いていた話と違ったので「え?これだけ?」と拍子抜けした。
「転勤OKの営業職」とだけ伝えた私に4社のリストが出た(これが事前に決めていたらしく出るのが恐ろしく早い)。この4社がロックであった。ロックンロールそのものであった。
1社目は某NHKの集金会社として有名なあの企業。
担当者から「この会社知ってますか?」というなにかを確かめるようなゲスい質問が来たので、思わず「あの...知ってます」と答えるとなにかを察したらしく、「いやでも思っているのと違うんです」と別にそれ以上言ってないのに弁明にも似た説明が始まったが、もう話が入ってこなかった。
2、3、4社目は施工管理。大変憚られるが、キツいということだけ知っていたし、なにより営業希望なんですけどと伝えると「でも転勤OKで色んなところに行けますよ」と呑気な答えが帰ってきた。
一通り話を聞いて、「これは頼った私が悪かった。一旦断って他を当たろう」と思い話を切り上げようとすると、
ここからである。
「じゃあ〇〇さん(私の名前)、気になった会社にこの場でエントリーしてください」という一言が。
いや、色んな意味で気になる会社だらけだけどエントリーはちょっとと思い、それで
「後日、こちらからご連絡します」
という就活で散々言われてきたフレーズではぐらかそうとすると
「なにが嫌なんですか?教えてください」
と語気が荒くなる。
これは新卒を食い物にするとかいう例のアレではないかと確信し、
「他で選考すすんでるとこあるので(本当は全くやってない)」と返す。
すると、「ここにエントリーするだけじゃないですか。〇〇さんもう5月半ばですよ。なにが嫌なんですか。今後の私の業務のためにも教えてください」と返してくる。
多分コイツは「なにが嫌なんですか」がキラーフレーズなんだろうなと思いながら、しかし嫌な予感がビンビンするのでなんとか断った。多分、あの人にもノルマがあるのだろう。しかし、その焦りがかえってこっちに伝わって怪しさ満点だった。
すると最後に「では1ヶ月後にまた電話するので、そのときまでには決めてくださいよ」と半ば強制的に電話に着信を残して面談は終了した。
その直後、その番号を着信拒否にし、LINEもブロックして今起きたことを整理することにした。
藁にもすがる思いで行ってみたら、その実、宗教勧誘かねずみ講だった。
しかし、「どこでも働く」と言いながら決められない私も悪い。あれもこれも動かない私のせいなのかもしれない。二留するとこんなことになるのかと、そのときようやく自分の置かれた立場が分かったような気がした(後から考えれば、一般的に多分ここまでにはならない)。
そこで、自堕落な自分とあの担当者との怒りが沸いて、私はようやく就職活動をすることにしたのだった。(つづく)