「共犯者」を久しぶりに読み返して、今の私がいちばん感じたこと
今回の記事は、昨日、Twitter(現X)のタイムラインである人に残念な出来事があったことを知ったとき、ちょうど読んでいたこの本の内容とつながった気がしたため、備忘を兼ねて書いています。
裏表紙のこの文章を読むだけでもゾクリとするこの本。
映画「冷たい熱帯魚」のもとになった本。埼玉愛犬家連続殺人事件で「共犯者」とされた男(←映画でいうなら、吹越満さんの役)の手記です(正確にはそれっぽく書かれたノンフィクション小説)。
2011年映画の鑑賞後に初めて読んだときは、その事件の内容の凄まじさと話の展開に入り込んで、一気に読んでしまいました。かなり描写がエグいですが、実録犯罪モノとしては下手なミステリーホラーよりはるかにおもしろいです(※笑える、という意味ではないです)。
先日夫が読みたいというので図書館で取り寄せ、先に再読させてもらいました。
やっぱりすごい。ゴーストライター(?)蓮見圭一さんの腕たるや。
とまぁ、読む手が止まらなくなる文章が続くのです。
「ボディを透明にする」ことで殺人の発覚を回避し、何十人もの命を奪っていた主犯格の男S。
その凄惨な透明処理術については、映画でも描かれWikipedia等にも載っているので気になる人はチェックしていただくとして、今回再読して2024年12月27日のわたしがいちばん印象に残ったことをここに記したいと思います。
それは、金のためならほんとうに何でもするひとがいる、ということ。
犬を中心としたペットショップの広告を専門誌に大きく出して、問合せの電話が入れば、日本にはいない貴重な犬種だ、海外からわざわざ取り寄せる、等すごい話ばかりして法外な値段を提示。でも高ければ高いほど売れるんですって!この購買意欲の操り方は天才的と思いました。
また、目を付けたひとには、つがいで犬を売り(それも何百万円とか)、生まれた子犬は一匹二十万円で買取るからすぐに元が取れると口約束、実際生まれたら、売り物になる質じゃないとか何とか難癖をつけ、「しょうがないから一匹二万で買取ってやる」、相手が話が違うとごねたら「じゃあ三万で」と納得してもらう。そうやって買取った子犬を何十万で売る…そんな商売をしていたそうです。
もっとひどいのは、犬を買った1、2か月後に、その犬を殺したり盗んだりして、飼い主にまた別の犬を買わせるようなこともしていたとか。
飼いはじめた犬へ飼い主の情が移る前にやるのがポイントだそうです。
客以外も、利用できる人間がいれば、全力で取り入ります。そのためのホラは吹きまくりです。
京大を出てるとか、アフリカで暮らしてたとか、芸能人の○○と知り合いだとか、兄弟はどこどこで医者をしてるとか、他に経営してる店がどこどこにあるとか、車は他になにとなにがあるとか・・・。
高級品や高級車とか、そういう煌びやかなものにわたしは疎いので、もしこのSみたいなひとが寄ってきてもきっとすぐに向こうも察してターゲットから外すと思うんですが(笑)、・・・そういや以前いわゆるネットワークビジネスに誘われたとき、駅前の老舗ホテルのカフェで、つけてる時計の話とか、「僕の夢は飛鳥に乗ることだけど叶いそうなんだ」とか聞かされたことがあったっけ。「わたし、まったくそういうものに憧れはないので結構です。失礼しますね」ってお茶だけ飲んで帰ったなぁ(笑)。あんな話に飛びつく愚かな人間と判断されて
いたのがなにより残念でしたよ…。すいません、突然の自分語りでした。
他もすごいです。出来レース・ビジネス。
ドッグ・ショーを自社で企画して、事前に選んだ審査員にはすべて金を配っておいて、1位~3位は自分の犬で独占。そして入賞した犬を高く売り、トロフィーが事務所にはズラリとか。
んで、人を実際に殺すとこまではないにしても、こういうホラ吹きっていますよね・・・。
ただの知人どまりならぜんぜん構わないんですけど、相手は何かしらの利得(カネ)を狙ってきてる場合は、関わらないに越したことはないと思いました。
こういうひとの目が笑ってない感じというか、笑顔じゃないときの顔の邪悪さというか(笑)。
あと自分の目の前で自分以外のひとにめっちゃキレたりして(部下とか店員とかタクシー運転手とか)。たぶんこれも作戦のひとつで、自分を怒らせたら怖いぞみたいな軽い威嚇射撃なんですよね。
だから、話を聞いてて「あれ?それっておかしくない?」と感じても何もつっこめない。こっちが追及しようとすれば察知してしれっと話題を変えたりする。このSもそうだったようです。
でも、聞いてもいないのに、勝手にずーっとしゃべるんですよね、自分のことを。
で、取り入るモードのときは徹底してやるんです。
相手を持ち上げておもてなしして(食事・風俗、自分の高級車を貸したり)、「この人いいひとだ…」って第一印象で基礎工事しちゃうんです。
そうすると、その先少々の懸念がわいても「でもあれだけしてくれた人だから」そんなことを疑う自分がおかしい、と思ってしまうんですよね。
なんかちょっと今書いてて、過去にわたしが出会った人が頭の中にチラついてるんですが(笑)、それも併せてわたしが思うに、こういうひとは、平気で<ことば>を口にします。
「家族のように思ってる」「うちの役員になってくださいよ」「実は私も在日なんですよ」「あの人が勘違いしちゃったみたいで」
でも、嘘なんです。
こんな重いことば、嘘で言えちゃうの!?
・・・言えちゃうんです。
えっ、すぐバレるじゃん。
バレますよ、でも突っ込めないんですよ、基礎工事されてるから。
わちゃーーー。じゃあそのことばを真面目に受け止めて信じたら・・・。
破滅です。利用されて棄てられます。
映画や本でいろんな悪人を見ました。
過去記事にも書いたアウシュビッツ収容所所長もそうですが、基本的にみんな自分とはそう変わらない人間で、ちょっとした歯車の狂いで罪に手を染めてしまっただけ…つまり自分も環境やタイミング次第では同じようになってもおかしくないと思ってた方がよさそう、そういう教訓を勝手にわたしは得てきました。
が、
このSについては、根本的に違う。
とても気色悪いというのが率直な感想です。
とりあえず、大きな声でよくしゃべるホラ吹きには気をつけましょう。お金や時間やこころ…平気で奪っていくひとがいます。
これは男性に限らずです。
なにかおかしい気がする…という直感は信じたほうがいいですし、ノーはノーと断るのも防御の第一歩と思います。
もし関わってしまったら、すみやかに離れましょう。
その決断にいきつくまでに、あなたの良心がとがめるような(恩着せがましい)ことを言ってくるかもしれません。でもそれは向こうにとってはただの<ことば>です。立派な熨斗(のし)の付いた大きな空っぽの箱です。
離れても大丈夫です。意外と追ってきません。テンポよく次のターゲットを探しますから。
ま、このへんは自分と周りで見てきたことから思うことですが😅
同じような経験されたかたならわかると思います。
以上、「共犯者」を久しぶりに読み返して、今の私がいちばん感じたこと、でした。