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L:48 浄水器の蛇口
2023.11.25
暮らしの中の些細な出来事から、人生に通じるような教訓を得ることがある。
東京に来てから浄水器を使っている。
カートリッジが交換式のもので、一つのカートリッジで900ℓの水が濾過できる。メーカーの説明によると、1日10ℓの使用が想定されていて、カートリッジの交換は3ヶ月が目安になっている。
私が浄水器を使うのは、1日のうち、コーヒー、お茶を飲む時、料理で水が必要な時、お米を炊く時。せいぜい、これぐらいだ。お米は毎日炊くわけではない。そう考えると、1日多くて5ℓ程度のものだ。
実際に使ってみると、3ヶ月では400ℓぐらいしか使っていなかった。まだまだ使える気もしたが、濾過している水がカートリッジ内に少なからず残るだろうから、濾過機能としては余裕が残っていても、長いこと使うのはよくない気はしたので、半年弱で交換している(これも長すぎかと思う)
朝、白湯を飲む時はちゃんと浄水した水を沸騰させ、お米を研ぐ時も炊飯する時も浄水を使う。私たちの体はほとんど水分なんだから、きれいな水は大事なのだ。
先日、カートリッジを交換した。この浄水器はよくできていて、本体を蛇口に取り付けた状態でカートリッジだけ簡単に交換できる。交換にあたり、一度、本体も蛇口から取り外し、本体も洗うことにした。普段から、さっと拭き掃除をしてはいるものの、部品の接合部とかは汚れていたので、これを機にピカピカにしようと思ったのだった。私は水意識高い系だ。
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部品を一つ一つ取り外し、パッキンなども取り外し、水洗いすることにした。
その時、あることに気づいた。この浄水器は、浄水しない水が出る蛇口(シャワーになったりする)と浄水が出る蛇口が二つついている。
浄水の出る蛇口の蛇口部分を取り外した時にあることに気がついた。浄水が出る部分に透明なゼリー状のものが付着している。無色透明で、一見そんな不潔には見えないと思った(そうであって欲しい願望)。同時にわかっていた、これダメなやつだろうと(笑)うちの浄水はこの謎のゼリーを通過してやってきている。
急いで、いつものようにGoogleで「浄水器 蛇口 ゼリー状」と調べるとゼリー状は要は雑菌が繁殖しているものらしい。アウトだ。そういう雑菌を除去するために水道水には塩素とか入っていると思うのだけど、浄水器はそれを濾過している。浄水の蛇口には、毎回わずかながらに水滴が残る。その水滴はきれいな水なのだが、それは菌にとっても、生きやすい水だということだ。
水意識高い系は何だったのか。毎日、飲んでいた白湯はどの程度、きれいだったのだろうか。さんざん、おいしいおいしいと食べてきたお米はどうだったんだろうか。結局、水道水→浄水器→雑菌→私となっている。これなら水道水を飲んでいたほうがよかったんじゃないだろうか。
そんな自問自答をしながら部品を洗剤で洗い、熱湯にもつけて、きれいにした。それ以来、浄水を使った後の蛇口も時々、キッチンペーパーで拭くことにした。
この浄水器蛇口事件は、学びがあった(笑)というか、私は“こういうことなんだよ、こういうことが大事なんだよ”と何度も自分に繰り返していた。
抽象化すると、これは私の中で「出口重要問題」と呼ばれる種類のものだ(笑)つまり、アウトプットの最後の部分のケアを怠ると、それまでの労力・努力が全て無になってしまうということだ。全てに当てはまるわけではないのだけど、浄水器については、きれいにするための目的が最後の最後で汚くなるとすれば、これほど無意味なことはない。過程がいかに良くても(すばらしい濾過装置だとしても)最後の出口が汚れていたら全く意味がない。
こういうことって、仕事、生活、人との関係性、あらゆる局面で当てはまる。今までしっかりやってきたから、最後は惰性でいっかとか、ちょっとした確認作業を怠るとか、油断するとか、最後(出口部分)は、疲れていたり、まぁいいかと思って気を抜きがちなんだけど、最後こそ気を使うことが、全体の質に大きな影響を与えることが多々ある。終わりよければ全てよしみたいなことも、出口(最後)の重要性を違う角度から言っている言葉だと思う。
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