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『東京マッハ』は、文章を推敲する脳内を中継しているようなところもあるので

『東京マッハ 俳句を選んで、推して、語り合う』(堀本裕樹、千野帽子、長島有、米光一成/晶文社)が出た。

句会緑である。
「チケットは毎回完売! 大人気公開句会、待望の書籍化」と帯にある。
句会なのにお客さんを入れて、開催して、2011年スタートなのでもう10年つづいている。その句会を紙上再現した本だ。

3月4日に、コトゴトブックス主催で、刊行記念イベントがある。楽しいのでぜひ。

句会というのは、俳句を無記名で出して、○とか◎つけて、一番を決める会である。
俳句は575と一作品が短い。17文字だ。その17文字を微に入り細に入り語り合い、褒め、貶し、批判し、批評する。あの句のあそこがよかったここがダメだとあーだこーだわいわい言い合うバトルである。

なので、文章や言葉や、それが喚起するイメージに興味がある人はぜひ読んでほしい。おもしろいから。

たとえば67ページ。第4回の句会。

蜘蛛というより蜘蛛の都合をみておりぬ

という句について、あれこれ褒めた後に、池田澄子さんが言うのだ。

「蜘蛛というより」っていうね、「というより」はちょっと理屈っぽいですよねえ。ほんとは。
俳句としては、「というより」っていのは、理屈だなーって

ちょっと説明的だという話になり、でも「蜘蛛でなく」にしちゃうと否定が強すぎる、どう直すか難しい、と語り合い、「蜘蛛じゃなく」じゃダメ? いや「蜘蛛よりも」? といろいろ検討しはじめて、

「蜘蛛よりも」だと、なにか、都合を見てるんだっていう、言いたさが増しちゃう気がするんだよ

と長嶋有さんが指摘して、「蜘蛛っていうか」は? には、急に軽くなったなーとダメ出しがでる。

そんなふうな議論が、随所で出てくるのだ。

これは、まさに推敲である。文章を書くときにいかに推敲するか、ふだんは書き手の頭の中でやっていることを、みんなでわーわー言い合って、それをテキストとして再現している。

というわけで、文章を書いている人や、書こうと思ってる人に、オススメ。どういうふうにこだわり、どういうふうに推敲しているかというサンプルになると思う。

いや、まあ、バカバカしい議論になったりもしているんだけど、そういったバカバカしさの果に書いているケースもあるからね。


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