とあるさまーない
「言ってあっただろうが!なんでお前はそう二度手間三度手間を!」
上司の彼も時間はない。半ば八つ当たりなのかも知れないが、感情的なリアクション。長く怒鳴りつけても何も生まない事はお互いわかっている。2時間後の会議は参加しないといけないが、他の仕事は周りでやっておく。自分の事を第一にやっておくようにと、それだけ言って去っていった。
「ふぅ…」
情けないやら不甲斐ないやら。眉間に皺を寄せつつ、少し疲れて歳をとった雰囲気だ。
気を取り直して取り掛かりたいのだろうが、意気消沈したタイミングで前向きな将来像を書くというのも、なかなかに辛いものがあるだろう。
悲壮感をその一息で吐き出した彼は取り掛かる。見ないふりをしていたが、やはり骨が折れるようだ。
周りの先輩方やそこからの人脈を活用できる人が昇進していくのは、こういったシーンで個人のバックアップ体制を作れるからなんだろう。
きちんと考える事が求められる一方、求められる言い回しに求められる将来像を綺麗にまとめなければならない。彼も同じ部署の人、同期、社内のイベントや仕事での繋がりの知人から、自分の立ち位置に近そうな人を思い浮かべる。
(さぁ将来像を聞かせてくれ、なんて言われてもわかんねーし、目の前の仕事をほっぽり出せってのも、頭をそんな簡単に切り替えられたら世話ないよな…)
気を取り直すとしても、まずは材料を集めなければならない。彼は愚痴を浮かべつつ、少し焦りながら部署間を駆け回る。少し、いや、かなり焦っている。傍目にも必死な形相だ。