〇 クロスカントリー:気象条件1
皆様、お疲れ様です。
パラグライダーが趣味のよねけんです。
クロスカントリーフライトについて自分の考えを書いています。
今回は「気象条件1:気象条件が良いかどうかはフライヤー次第」です。今回は無料記事です。
前回から読む 地形とコース:飛ぶこととランディングは相反する
題名がクロスカントリーから始まっている記事は自分と同じレベルのパラフライヤーを対象としており、マニアックでガチな内容です。
ご承知おきください。
獅子吼高原から瀬女高原へのクロスカントリーフライトを題材にした記事です。(獅子吼以外の方、済みません。)
様々な気象条件
1年を通して(獅子吼は4月初めから11月末)フライトをしていると、色々な気象条件に遭遇します。獅子吼高原における飛べる条件は基本西風です。北西から南西の範囲はOKですが、強風時の南西は危険で、降りるのが大変なので飛ぶのはお勧めできない条件です。(南西強風の獅子吼については機会があったら記事にしようかと思っています。) また、それ以上に北や南にずれるとサイドからの風になるのでテイクオフの難易度が高くなります。
そして、テイクオフをしても、上昇気流がなくテイクオフより高く上がれない、遠くに移動できないといった条件もあります。クロスカントリーフライトでは飛べる条件の中でも、自分が遠くに飛べる条件かどうかを判断して実施する必要があります。まずは、様々な気象条件から選択が必要になるわけです。
気象条件ごとに戦略は変る
獅子吼高原で考えると・・・
・雲低高度が2,500m
・【地表~高度700m】風速:2.0m/s 風向:西
・【高度700m以上】風速:8.0m/s 風向:北
・減率が低く獲得可能高度が2,000m
・日照は一日ある
・風の条件は1日変わらない
これだと瀬女高原への戦略は11:30過ぎにテイクオフ(※1)し、テイクオフ近くで1,000mの高度を獲得後、奥獅子吼に行って高度2,000mまで上昇する。その後は、奥獅子吼から瀬女高原まで真っすぐフルグライドする。以上!・・・となります。こんなパーフェクトな条件はないです。見たことがない! あるかもしれないけど、ありえない。やっぱりない。ないなぁ。
正面からテイクオフ出来て、上昇すると移動先に向かってフォローの風が吹いている。高度は2,000あり、瀬女高原の高度が450mだとすると、高低差が1,550mです。この時の対地滑空比を17.7(※2)とすると27,435m≒27kmは前進できます。獅子吼から瀬女高原まで17.5km程度ですから余裕で到達ができます。戦略も何も必要ありません。トラブルがなくて全ての条件を普通に使えば瀬女高原に到達できる条件です。
でも、ちょっと考えてみて下さい。これらの項目を一つ変更するだけで戦略が必要になってきます。雲低高度が1,500mで、獲得可能な高度が1,350mと仮定してください。前進できる距離は15,930m≒16kmと短くなります。また、高度が低いので山の稜線を気にする必要があります。そうなると、手取川第三ダムを越えてサーマルを捕まえて高度を獲得する必要があります。山斜面は西の風となりますから、サーマルの出てきそうなところを検討する必要があります。
戦略 = 地形 + (気象条件 × スキル)
戦略はどうやって組み立てるか? これは全てのクロスカントリーパイロットの命題なります。そもそも、どの情報を足掛かりにするのか、そこからどのようにプランを組み立てるのかです。でも、この内容を明確なロジックで説明することは、今の自分にはできないようです。言語化できるまで頭の中で明確になっていないのでしょう。
でも、今の段階で書けるとすれば、上空の風向風速、獲得高度がポイントかなと思っています。そもそも、高度が取れなければ移動できませんし、上空でアゲインストの風であれば対地滑空比が悪くなるので、何度もソアリングによる上げ直しが必要になります。また、高度がとれても、上空の雲の吸い上げで高度を獲得するような場合は、基本危険ですし高度が取れても僕はやらないでしょう。やるとしても、最低限スパイラルのスキルは必要になります。また、雲低が山の稜線に近いようであれば、移動ルートで使えるコースも限られます。低い位置に雲がある、あるいは、雲の吸い上げを使ったフライトは難しいでしょう。
表題に書いた「戦略 = 地形 + (気象条件 × スキル)」はクロスカントリーフライトにおけるフレーム、枠組みだと考えています。環境として地形があります。地形の上に気象が発生します。その中をパラグライダーがフライトする。地形は場所を変えなければ半固定のパラメータ。気象は一番ダイナミックに変わるパラメータです。スキルはパラグライダーのコントロール、気象の見極め、リスクと安全のバランスをとった判断などがあり、これも各自で異なるパラメータですね、
目的地に到達した時の戦略
若干、話が抽象的になってしまったので、自分が最初に獅子吼から瀬女高原へのクロスカントリーフライトが成功した時の話をします。条件は予報で下記だったと思います。
・雲低高度が2,000mぐらい
・【地表~高度750m】風速:1.0~2.0m/s 風向:北東
・【高度750m~1,200】風速:3.0~6.0m/s 風向:北東
・【高度1,200m以上】風速:8.0m/s 風向:南
・雲のない晴天
・風の条件は11:00~14:00の間はおなじ
この時、予報によれば上空に出れば1,200m以下でフォローの風です。テイクオフして奥獅子吼で高度1,400mまで到達して、そこから手取川第三ダムを渡り、雲龍山で1,000mまで上げ直し、笠山、高倉山を経由して瀬女高原に到達するという考えでした。1,200m以下であれば行けそうです。
問題は地面付近はフォローなのでテイクオフが出来るかどうかが一番の問題でした。その日は日照があったので、11:00ぐらいから西斜面のサーマルブローが北東の風に勝てばテイクオフ出来るチャンスがありそうと考えていました。そのためには11:00からテイクオフにいる必要があります。プロのインストラクターは昼間に北西の風が入る(かも)と予想していました。
11:00から待ち始め、果たして、その時は来ました。西斜面のサーマルブローを含んだ緩やかで正面から吹いてくる風を受けてテイクオフです。
基本は北東の風なので、北側の低い尾根上にあるかもしれないサーマルを目指して飛びます。西風のブローと北東の風の混ざったサーマルを捕まえます。二つの風がぶつかっているにしては穏やかなサーマルです。
出来るだけ高度を上げます。高度 ≒ 飛行距離です。そして、奥獅子吼に行き、更に高度を上げます。1,400mぐらいまで上昇します。ここでクロスカントリーフライトを開始しても良いのですが、まだ高度が稼げそうです。1,600m、1,700m、1,800mと高度は上がりますが、気が付くと北に流されています。高度を稼いでも南風の中を前進したら対地滑空比が悪く意味がありません。ここでクロスカントリーフライトを開始しました(※3)
この後は地表は北東の風が入っていることを意識しながら飛びます。北東なので、手取川とは反対の斜面からリッジを含んだサーマルがあると想定して尾根上を飛びます。高度に余裕があったので雲龍山でのサーマルソアリングはスキップしています。そして、笠山で1,000mぐらいまで高度を取りファイナルグライドを行っています。このエリアでは1,000mぐらいで南の風が入っていて大きく揺れました。
このフライトのポイントは「テイクオフできるかどうか」でした。実際にその日の情報を見ると、11:30から13:00までの1時間半だけテイクオフが出来ましたが、他の時間帯はフォローで飛べなかったとなっています。この時は、瀬女高原行けたこともう嬉しかったすが、テイクオフのタイミングをものにできたことも嬉しかったです。
この時、僕以外もクロスカントリーフライトをすることができたパイロットはいたはずです。条件をどう読むか、条件を待てるか、つまりフライヤー次第だったわけです。
と、まぁ、自分の時の話をしましたが、獅子吼には瀬女高原まで行って獅子吼に戻ってくる猛者もいます。条件次第ということもできますが、条件以上のプラスαがないと出来るような気がしません。だから「気象条件が良いかどうかはフライヤー次第」となるわけです。
今回も長文になりました。お付き合いいただきありがとうございます。
まだまだパラグライダーな日々は続きます。
【注記】
※1:11:30過ぎにテイクオフ
獅子吼高原の太陽の南中時間は11:30頃なので、この時が日照によるエネルギーが最大になります。それまでの日照の蓄積による地面の温度上昇はここから緩やかになりピークを迎えます。これが空気に伝導しサーマルになるのは30~60分のタイムラグがあるのではと思っています。11:30から出ると一番よいサーマル条件になるわけです。
※2:この時の対地滑空比を17.7
この数値は過去の記事:アクセルワーク:対地滑空比が重要 (有料記事)からの抜粋です。興味があれば購読下さい。
※3:クロスカントリーフライトを開始しました
この時に無線で「ダム越えていいですか?」と連絡を入れました。この時、高度が高かったせいか隣の小松市のスキー場で初級練習をしているインストラクターさんの無線にも音声が入っていたようです。この無線を聞いたインストラクターさんは「無線に関係なくダム越えるつもりのでしょ」と思っていたそうです。
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