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「あがのあねさま」コメンタリー(5話)

 本編はこちら。本編とともにお楽しみいただきたく。よろしく!

 冒頭、ウェブページの「私はロボットではありません」チェックに引っかかったロボットの阿賀野型三姉妹。でも私、あれ引っかかるの見たことないです。だからこそやってみたかった。
 でもあれの想定してるロボットはいわゆる「ボット」、コンピュータプログラムで阿賀野さんたちみたいな強いAI使ったロボットではないと思うんですけどね……。でも面白げなのでやってみた。

 とはいえどうやって検出するんでしょう。ロボットとは?人間とは?と言う思わぬ深い問いになってしまいそうです。まあロボットを出すというのは人間についての話をハッキリさせるための事もありますからね。余談ですが個人的にゾンビものも生きてることと死んでることの境目を書いたり、あるいは人間の偏見を浮き彫りにするための所はあるなと思ってます。ただの後腐れ無く虐殺できる敵を書きたいってのもあると思いますが。

 そして思わぬ姉妹4人目の話の浮上。神出鬼没の4人目の名前は妙高。でもこの名前にあとで能代さんがクレームを付けます。能代さん、艦船マニアなんですね……。ちなみに矢矧さんの趣味もこの小説の終わりで出てきます。なにやってんの矢矧さん……。でも新潟ってその趣味的にも魅力的な土地なんですよ。

 そしてついに発見される妙高さん。見栄を張りたいって心はあるもんです。でも刑事の取り調べ気分になる矢矧さん……ほんと子供です。でもそれに付き合ってる能代さんも子供なんですけどね。ただ身分というかを偽装した妙高さんを追及できない阿賀野さん。やっぱり姉として思うところがあるんだと思います。私の個人的な記憶ですが、弟って時々すごく疎ましいけど、それ以上に独特に愛おしいんですよね。だから喜ばせてあげたいとか、その前で格好つけたいとか、そういうのも強くある。だから妙高さんに阿賀野さんは姉としてのシンパシーを感じたのかも知れません。

 そこに出動要請。今度は図書館でのロボットの狼藉への対応です。図書館戦争!なんて有名小説の名を出してまたウキウキしちゃう矢矧さんですが、今まじめな話で図書館がいろんな社会の分断の最前線になってますね。陰謀論とかフェイクニュースが普通に書籍化されてる現状、それをそのまま収蔵するのは図書館としていいのか、と言う議論が今強くなってます。そういうものへの反論をペアにして置くという対策もありますが、それ以前に貸し出しをやめようとか収蔵の段階から弾いてしまってるところも海外にはあるようです。難しいところだと思います。原則としてそういう区別を付けるのは良くないのですが、現実にいい対応法の決定的なものはまだないようです。そしてこの状態は電子媒体、電子書籍や雑誌も図書館が扱うようになったらさらに過激化するでしょう。そしてそれを理由に図書館が対立の最前線になる、まさしく図書館戦争になってしまうのはほぼ確実なんじゃいいかと思います。
 そのうえ図書館の予算がどんどん削られ司書さんたちスタッフの雇用も不安定で劣悪になってる現状、将来は悲観的に思えてきます。未だに図書館が公営貸本屋だという認識のままの人も多いし。だからこそ図書館を様々で多彩で多様性のある本で満たすのは書き手の責務であり、書くことが図書館の現場の人たちの応援になるんじゃないか、なんて思いますが、ぶっちゃけ私の本、図書館ウケあんまりしてる気がしない……。昔出した早川とか講談社の本、一応収蔵してもらってるんですけどね。うぐぐ。

 その図書館での乱闘を制圧する阿賀野さんたち。阿賀野さんはなぜかその現場に妙高さんを、自分たちの出動時のジャケットを着せて連れて行きます。こういうシーン好きなんですよ。ほんと。飛翔する阿賀野さんと妙高さん。このシーン絵に描きたいけど、私絵描くの好きでもうまくないからなー。誰かにお願いしたいところ。

 終わって弟さんのところにあつまる阿賀野さんたち。新発田城の変形ロボとかまたなんでそんな話を。でも私も見たかったなあ……。

 そうしてる間、防衛センターでみかん食べながら暇つぶしてる矢矧さん。出動しなかったからってホント何やってんの……。当然司令にバレますが、それを特にとがめない司令もどうかしてると思うけど……。

 でも図書館で阿賀野さんは自分たちの建造の秘密を知ります。SDGsとはなんであるか、そしてその解決のための自分たち阿賀野型とはなんであるか。図書館便利なシーンです。うん。
 とはいえほんと、図書館って何かと便利です。断じてただの公営貸本屋ではないのです。その秘密の中に出てくる阿賀北の未来都市区建設をめぐる秘密は、次の第6話につづきます。

 そんななか、矢矧さんが新幹線札幌延伸とか鉄道改革の話もします。これ、ここでただオタ話としてするだけでなく、あとで効いてくるのです。……うん、あとで、ね。(書いたときは書いてる私もあんまよく考えてなかったと白状。でもあとでちゃんとその話書けてよかったなあ)

 こういう連載ものみたいに書くの、こういうこと出来るから楽しいんです。

 で、実はこのエピソード、いろんな理由でβテストしたらあんまり評判良くなかったんです。いらないんじゃないか、という意見をいただきました。確かにテンションちょっと緩いので良くないという判断はアリなんです。なるほどなーと。でも収録しました。なんでかって言うと、次の話が12月、クリスマスの話なんでめちゃ盛り上げたかったんです。特に阿賀北ノベルジャムの日程でも作品発表がクリスマスだったんで合わせたかった。
 でもそのためには助走が必要なんです。感覚的なものなんで上手く言えないんだけど、盛り上がる前にはちょっとゆるめの静かな展開が必要なんです。起伏というか何というか。ここらへんまだ私もきっちり言語化できてないんですが、ここはあえて緩く行きたかった。
 でもそうしちゃうとβテストで読んでくれた人に申し訳ないところも出てくるんですよね。なんだ何も反映しないのか、って。まあ、そういう行き違いの起きる人とは組めないんですけど、なかなか難しいところもあります。特にこの話、無冠になってしまったのでさらに申し訳ないんですよね…。結果出せなかったのに創作論言うな、っていうのもアリなのですから。

 そうやって悩みながら書いてます。でもこの話、私はロボットじゃないチェックのネタとか出来たんで好きなんですけどね。入れるとしたらこの話に入れるしか無かった。うぐぐ。


 というわけでそんな悩みながら書いた『あがのあねさま』本編はこちら。

 よろしくね!

 文フリ東京出店側で参加します。今頑張ってこの「あがのあねさま」のDX版を書いてます。なんとか間に合わせたい…。

 今のところこんな感じです。
・阿賀北NJでは日の目をみなかった私制作の阿賀野3姉妹図面収録
・判型も文庫版から10インチ版に拡大。
・もちろん全話収録
・番外編も収録
・特別編2話も収録
・文庫版の付録「阿賀野型空中移動要塞 詳細」も収録
・追加付録で「第1次新発田海戦 動静図」も収録
・コメンタリーも全部収録
・制作中の現時点ですでに276ページの大ボリューム!

動静図はこんな感じ

というわけで目下全力で執筆編集してます。
文フリには紙本持って行きたいなあ……。

乞うご期待。では!


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