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【OR×OTAQUEST+DA.YO.NE.】萩原アビリオマルセーロ・米原康正・☆Taku Takahashi【クロストーク】

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「OR x TWELVE ARTIST x OTAQUEST+DA.YO.NE」は、毎月1名の若手アーティストにスポットを当て、12ヶ月にわたり12人のアーティストを紹介していくプロジェクト。東京・渋谷に誕生した新スポットMIYASHITA PARK内のカルチャーハブステーション「OR」を舞台に、アート作品の展示、音楽イベント、コラボアイテムの作成、ポップアップストアなどを実施している。毎回、OTAQUESTプロデュースによるDJパーティーも開かれており、その模様はOTAQUESTのTwitchチャンネルでも配信されているとおりだ。

2020年11月には“パンデミック”下における特殊なコミュニケーションとそれに伴うストレスからインスピレーションを得た作品群を発表したPAC CAT、そして12月には“ゴーグル”と読解不能の原画の展示で会場をジャックしたMIRANDA YOKOTAが登場。2021年1月以降も新進気鋭のアーティストたちが出番を今か今かと待ち構えている。

ここでは、本イベントの仕掛け人であるアーティスティックプロデューサー・米原康正氏と、会場である「OR」のコンセプトをデザインした萩原アビリオマルセーロ、そしてOTAQUESTのプロデューサー・☆Taku Takahashi(m-flo)の3人に、「OR x TWELVE ARTIST x OTAQUEST+DA.YO.NE」の狙いと意義について聞いた。

*この記事は、”HYPER OTAKU MEDIA” 「OTAQUEST」に、1月12日に掲載されたインタビュー記事を日本語として掲載しております。

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渋谷と原宿の中間、交わりを生む“カルチャーハブスポット”としての「OR」


米原: 元々「+DA.YO.NE」という、様々なブランドやメーカーとコラボレーションさせていくというプロジェクトを2019年から始めていて、2020年には本格的に大きくしたいと意気込んでいたら、「OR」という面白そうな場所があった。で、この「+DA.YO.NE」のコンセプトを伝えて一緒に何かやってみようと相談してみたら……。

アビリオ: 二つ返事でOKでした。

☆Taku: ふたりには以前から接点があったんですか?

アビリオ: そうですね。昔からよく同じ現場でDJをすることがあって、お酒を飲みながら楽しく過ごす仲間ですね。賑やかな間柄です(笑)。

米原: 「OR」を調べてみたら、関係者が知ってる人ばかりだったんですよ(笑)。とにかく若いアーティストには作品を発表する場が足りていないから、「1年くらいバーっと派手にやっちゃおうぜ」とお願いしたらOKをもらえました。

☆Taku: それにしてもこの「OR」ですが、素敵な空間ですよね。


アビリオ: 「OR」は1Fにポップアップスペース、2Fにアートギャラリー、3Fにショーケースのある造りになっていて、それぞれのフロアにDJブースとバーカウンターが設置されています。昨今のナイトエンタメって、「ハウスなら◯◯」「ヒップホップなら✕✕」みたいに特定のジャンルが好きな人たちが特定の場所に集まってしまう傾向があると感じていて。今まで交わらなかった人たちを一箇所に集めてしまいたいと思って作った空間がここですね。

☆Taku: アビリオさんは「OR」のクリエイティブディレクターなんですよね?

アビリオ: そうですね。お店のコンセプトを作るところから内装のデザインまでやっています。

米原: アビちゃんはファッション畑の出身なんですよ。

アビリオ: 長年VMDをやっていた経緯がありまして、いろんな店舗を手掛けてきました。経験上、だいたい“ファッション”とか“アート”とか“カルチャー”とか、コンセプトには書いてあっても実際には何も体現できていないお店って多いんですよね。だから今回の「OR」では、文字通りそれをやってやろうと。

☆Taku: 確かに「OR」は、普通のカフェとかクラブとはまったく違う空間ですよね。

アビリオ: 公式には“カルチャーハブスポット”と呼んでいるんですが、「何屋さんですか?」とはよく聞かれます(笑)。まあ、来てくださるお客さんに自由に楽しんでもらえたらと。踊りたければ踊って、アートを見たければじっくり見ていただいて、ゆっくりおしゃべりを楽しむこともできる。今回はよねちゃんからまさに自分が思い描いていたような「OR」の“使い方”を提案していただいたような気がしています。

米原: ここから若いアーティストたちのさらなる展開を発信できたらいいよね。

アビリオ: 渋谷と原宿の中間っていう「OR」のロケーションもちょうどいいと思っていて。渋谷駅に近い渋谷とも、原宿駅に近い原宿とも違う。そんな場所だからこそ発信できるコンテンツってあるんじゃないかと思っています。渋谷も原宿も昔から世界に対してとてもブランド力のある場所だったけど、近年は再開発が進んだことでそれが薄れてきてしまっている印象があるので。

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☆Taku: 再開発でよりイノベーティブになるのではなく、つまらなくなってしまっているという印象?

アビリオ: 大きな商業施設ができると、やっぱりメジャーなブランドがメインの場所を取っていくじゃないですか。これから頑張っていこうっていう新興のブランドや、アンダーグラウンドなものがフィーチャーされにくくなってしまっている側面はあると思うんですよ。

☆Taku: たしかに、今の日本だとサブカルチャーやアンダーグラウンドなものって局地的にはすごく盛り上がるんだけど、そこから広げていくのがすごく難しい状況になっていますよね。いろんなジャンルの人たちが一緒にクリエーションする機会がもっとあっていいはずなのに、逆に狭い範囲でまとまってしまうというか、むしろインターネット以前の時代のほうが意外な組み合わせがあったよなって。

アビリオ: 今の時代、簡単に自分の好きな情報を掘れるじゃないですか。だから好きな人同士で何かをどんどん深く追求していくことは簡単なんだけど、その過程で興味のない情報はシャットダウンしてしまう。ハプニングがないというか、突然何かの影響を受けて感化されるという経験が減っていると思うんですよね。

☆Taku: でも「OR」でなら、自分の知らなかった何かとも出会えるかもしれない。

アビリオ: そうですね、そうでありたいですよね。なので今回のOTAQUESTさんとのコラボでもさらに間口が広がって、いろんな人たちが絡み合ってぐちゃぐちゃになって、そこからまた新しいものが生まれたら面白いなと思います。

☆Taku: 渋谷に渋谷系ってサウンドが生まれてレコード屋がたくさんできたり、原宿にセレクトショップが集まって裏原もできたりとか、僕らってちょうど渋谷と原宿が大きくなっていく過程をリアルタイムで経験してきているんですよね。渋谷と原宿がメルティングポット、つまり世界中から面白いものが無秩序に集まってくる場所だったんだけど、個人的には近年は人が集まりすぎたことによって、逆にファッションもアートも観光寄りになってしまったのかなという印象は僕にもありました。だから「OR」はそんな流れへのアンチテーゼになるのかなって。

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渋谷と原宿の関係性、これまでとこれから


米原: 僕も渋谷と原宿が好きで、1995年に「egg」なんて雑誌も作ったわけなんだけど、渋谷と原宿って常にいい意味で刺激し合いながら、絶対に混じり合わないってところが良かったのよ。90年代にコギャルが渋谷を元気にすれば、00年代には不思議ちゃんたちが原宿を盛り上げた。でも、渋谷や原宿で勢いのある子たちがいるって知ると、大人たちがその子たちをすぐにビジネス的に囲んでしまうんですよ。例えばネイルは、90年代のコギャルたちの子が生み出した文化なのね。すると大人たちがネイルの上手な子を囲ってネイルサロンをバンバン出して、チェーン化させていった。結局今のネイルって、値段の高いところでやるのがステータスになってるでしょ。元々はコギャルたちの創意工夫だったのにね。

☆Taku: なるほど。そうやって渋谷に居づらさを感じた若い子たちが、次に原宿に流れていったと。ある意味循環ですね。

米原: そう、これまでの渋谷と原宿って、互いに逃げ場所にもなっていたわけなんだけど、今の渋谷と原宿は経済という観点からひとつになろうとしている。カルチャーの発信源として大人たちから狙われがちな若者たちにとって、逃げ場のない世界になりつつあるよね。だから「OR」のような渋谷でも原宿でもない不思議な場所っていうのは、次の逃げ場として機能するんじゃないかと期待しちゃうよね。

アビリオ: 僕も若い頃は原宿のキャットストリートでアパレルをやっていたんですよ。ロンドンの駆け出しのデザイナーとか、アンダーグラウンドなハイファッションばかりを取り扱うカッティングエッジなお店だったんですけど、当時はファストファッションもまだない時代だったので、若い子も結構来てくれていた。“昆虫ファッション”と僕は呼んでいたんだけど、ギラギラと個性的な若い子がたくさん歩いていたという思い出がありますね。

☆Taku: 今は道を歩いていても、原宿なのか渋谷なのか、あるいはそれ以外のところなのか、ファッションから属性やフレーバーがわかりづらくなっていきている感じはたしかにありますね。

米原: 人間て、同じような服装で同じ場所に集まると居心地がいいのよ。

☆Taku: あー、同じ趣味だということが可視化されますものね。

米原: そう、今はそういう部族的な楽しみができる場がどんどんなくなっているの。

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☆Taku: この多様化の時代、オープンマインドでありとあらゆる文化を受け入れ認めていくことに反対はしないけど、同時にそんな時代だからこそ、自分の個性の出し方や共有の仕方に迷って悩んでいる人は多いのかもしれませんね。

アビリオ: SNS含めて情報が多すぎて、自分の好きなものを見つけにくくなってしまったのかも。そういう意味では、今回の「OR x TWELVE ARTIST x OTAQUEST+DA.YO.NE」に参加してくださる若手アーティストの皆さんは個性派揃いで突出してるなと思います。

☆Taku: こんな面白そうな人たちを、米原さんはどこから見つけてくるんですか?

米原: インスタとかネットで(笑)。

☆Taku: 全員!?

米原: すごくマイナーなギャラリーとかで見つけてきたりとか。まあ、今回はまずアビちゃんが気に入りそうな子というのが重要で、まずはそこを外さないように人選していますね。だいたい合ってるでしょ?

アビリオ: 今のところパーフェクトです(笑)。

米原: 「OR」というこの場所との相性もあるからね。作風が「なんでこんな作品が展示されてるの!?」と思われるようなことがあってもダメだし。

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アーティストに感じる"生っぽさ"と"おしゃれ感"


☆Taku: 今回のプロジェクトにおいて、おふたりの中でキュレーションの“基準”みたいなものはあるんですか?

アビリオ: なんだろう、「生っぽさ」かな。かしこまり過ぎているよりは、ラフさがあって勢いがあるもの。変にまとまっているよりも、「今探っている最中なんだ!」くらいなほうが好きですね。

米原: 僕が大事にしているのは作品の良さだけでなく、アーティスト本人の“おしゃれ感”かな。おしゃれと言ってもいわゆる普通の意味ではなくて、アビちゃんが持ってる“おしゃれ感”に通じるもの。じゃあアビちゃんの“おしゃれ感”って何?ってなるんだけど、それがなかなか言葉にするが難しいんですよ。これまでの会話の内容からも伝わってくる、アビちゃんの価値観というか、にじみ出る感覚というか、そういうものかな。

アビリオ: 作品や本人を見たときに感じる“何か”というのは、たしかに基準としてあるかもしれないですね。本当に、感覚的で申し訳ないんですが……それが多分、「生っぽさ」なんだと思います。

☆Taku: そう言われると、現在展示されているPAC CATさんの作品も(インタビューは11月に実施)、「生っぽく」見えてきますね(笑)。


アビリオ: ペシミズムがあるなかで、スタイリッシュなのが素敵ですよね。かわいさもあるし。

米原: PAC CATくんは一発目のアーティストですからね、絶対アビちゃんが好きなやつだと自信を持って紹介したよね。

アビリオ: 瞬間的に「いいね!」となりました。

☆Taku: 僕も作品を購入してしまいましたよ(笑)。

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「TWELVE ARTISTS」プロジェクトの可能性と夢


アビリオ: このコロナの状況で、いろんなものに変化が生じていますけど、ますます若手アーティストが作品を発表することの重要性が増していると思うんですよ。オンラインではなく物理的な意味で。

☆Taku: そうですね。音楽においてもオンラインでの発表機会が増加したからこそ、逆に生で見て聞くことの大切さが浮き彫りになった感はあると思います。その会場の環境音とか香りとか、肌で感じるものってあるじゃないですか。それって音楽でもアートでも、作品に大きな影響を与えるんですよね。

アビリオ: 1年間、毎月異なるアーティストが登場して、そのたびに違うアート、違う音楽で「OR」に異なる空間を作り出す。僕はすごくワクワクしますね。自分が見たことのないものを自分が見てみたい。それをみんなと共有したいです。あれ、これって自分の欲求を満たしてるだけ?(笑)。

☆Taku: いや、すごくわかります。周りが楽しそうだとすごく刺激を受けて自分ももっと楽しいものを作りたいって思うじゃないですか。OTAQUESTでもこのプロジェクトを毎回盛り上げていきたいですし、パーティーの模様をTwitchでも配信することで、今はコロナの影響で日本に来られない、海外の方々へもしっかりリーチしたいと思います。

アビリオ: 僕もよく海外のクラブのDJ配信を見たりして刺激を受けているので、「OR」から世界に向けて発信できるのは単純にうれしいです。ぜひたくさんの人に見ていただけたらと。

米原: 日本って、外国人に認められたものをありがたがる風潮があるじゃないですか。海外オークションで売れた芸術家が急に国内でも評価されるようになるとか。そのことについて疑問がある一方で、そういう事実がある以上、前向きに利用していかなきゃとも思うんですよね。「海外からの評価も高い」ってステータスは狙っていこう。

☆Taku: もちろん、いちばんは「OR」に来てもらうことなんですけどね。クラブだけでもなく、カフェだけでもなく、ギャラリーだけでもないいろんな可能性を秘めた場所を実際に体験してもらいたいんだけど、今はとにかく配信という手段に頼らざるを得ない。今後、パーティーの配信だけでなくアート作品の発信も動画で積極的にできるようになるといいですよね。

アビリオ: そこはぜひ模索していきたいですね。すでに本プロジェクトの参加アーティストのみなさんには、できるだけ動画作品も作るようお願いしているんですよ。平面のアートをどう動画で伝えていくか、どう演出したらよいのか。そのアイデアもいろいろと練っているところなんです。

米原: ファッションとカルチャーと音楽、すでにジャンルの異なるこの3人が集まっていることがこのプロジェクトの面白みだと思うんですよ。それぞれの得意なところを融合させながら、力を合わせてこのプロジェクトを大きくしていこうよ。

アビリオ: 「OR」が文字通りカルチャーハブステーションになって、この1年をきっかけに、世界中のアーティストたちから注目される場所になるのが夢ですね。

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text & photo by Fumiaki Nishihara(OTAQUEST)


これまでのインタビュー記事


OR × TWELVE ARTISTSで展示を行ったアーティストたちのインタビュー記事も、下のリンクから読むことができます。こちらの記事もおすすめです!


PAC CAT【TWELVE ARTISTS vol.1】


MIRANDA YOKOTA【TWELVE ARTISTS vol.2】


HAJIME KINOKO【TWELVE ARTISTS vol.3 】


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