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なかむらみなみ&Yoyou 『DEATHTOPIA』インタビュー:「初期衝動を思い出せ」世界の底辺から愛を叫ぶ令和ギャル人文学

混沌としたままに過ぎ去っていった2021年末、米原康正によるコラボレーションレーベル+DA.YO.NE.がコンピレーションEP『DEATHTOPIA』をリリースした。

2022年3月10日(木)の夜にはこの『DEATHTOPIA』をブッキングし、リリースパーティを開催する。

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『DEATHTOPIA』の配信は12月10日(金)、CDは12月20日(水)にリリース。このご時世、配信だけではなくフィジカルでプレスするという肝煎りの作品である。そこに集まったのはPiNKII、なかむらみなみ、Neon Nonthana、Yoyou、ぱちぱちコズミックコンピューター!Dr.Anon、ponika (Dr.Anon)といった面々が参加。米原康正は近年、特に2021年は“ゴス”をキーワードの一つとして、見た目ではない精神性に着目し、ガールズカルチャーの深淵に光を当てるようなキュレーションを展開してきた。その集大成とも言うべき、ゴスの感性が集約されているコンピレーションEPがこの『DEATHTOPIA』なのだ。

米原康正は言う。なんで彼女たちが地上波に乗らないんだ。と。アンダーグラウンドとくくってしまえば格好が良いかもしれないが、こんなカオスな世の中だからこそ、大多数の人々の共感を得られるのは彼女たちではないのか。ステレオタイプのコスプレや、耳障りのいい言葉などクソ喰らえ。今こそ彼女たちに市民権を!(ここまでは言っていないがテンション的にはそういうことだ)。荒廃したディストピアの瓦礫の山に、旗印を立てたような快作(怪作)となっている。

ドラクロワの描くヴィーナスよろしく、米原康正が突き立てた『DEATHTOPIA』の御旗を振るのが、鼠色の廃墟にケミカルカラーのペンキをぶちまける、オールハーレイクインのスーサイドスクワッド。つまりとびきりゴキゲンな連中ってわけ。その中から今回、「Roulette」で参加したなかむらみなみと、「Gчдγμ i∫ dёдd」で参加したYoyouの二人に話を聞いた。


音楽の初期衝動は太鼓の祭囃子

なかむらみなみとYoyou、二人は実は、地元の近さで繋がっている。年齢はいくつか違えど、かねてより交流があったそうだ。本題のインタビューに入る前に、そんな二人のプロフィールを紹介させていただく。

元・ホームレスという経験を持つ、なかむらみなみは神奈川県、湘南は辻堂出身。ラッパー・kamuiとともにヒップホップユニットTENG  GANG  STARRとして活動。ソロになってからはTENG GANG STARRのライブDJを務めていたTREKKIE TRAX CREWとともに、「Reiwa」をリリース。アグレッシヴなスタイルをそのままに、洗練を伴いつつ活動の幅を広げている。

なかむらみなみがホームレス生活をする以前、母親からのネグレクトなどが原因で幼少期より弟と離れて親戚の家を転々とする生活が常だったそうだ。そんな彼女いわく、当時を振り返ると「20歳まで生きるイメージがなかった」と語る。

音楽の初期衝動に触れたのは、地元の神社の太鼓のお囃子だった。親がいない姉弟をみかねて、近所の人たちは優しく手を差し伸べてくれ、子供たちとも仲良くなった。18時になると公民館に集まり、みんなで太鼓の練習に励む日々。褒められることがなかったというなかむらみなみ。神様に奉納する太鼓を叩き、地域の役に立つことが彼女の心の拠り所となっていった。奉納するお囃子は神様へ、さらに生活を支えてくれた近所の人たちへの感謝がある。彼女は地元神社の神輿會の會長から奉仕の精神とともに三社札を直々に賜り、肌身離さず身につけている。

なかむらみなみは太鼓を叩くため、都内近郊に繰り出し日雇いの仕事や飲み屋の体験入店などで出稼ぎに出るように。そうして自らホームレスになった。お金が貯まれば、地元に戻り太鼓を叩く。

「お囃子が好きすぎて、道場破りじゃないけど地元以外の場所でも叩かせてくださいってイキって行ったら、若い人が来てくれたら嬉しいと喜んでもらえた」

と笑う。いろんな場所に行き、民間伝承を聞かせてもらったり、太鼓を通じてコミュニケーションをとった。それが生き甲斐のひとつになった彼女は現在も子供たちに太鼓を教える指導者としての一面も持っている。

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出稼ぎのホームレス生活を経た出会い 音楽の道へ

一方、出稼ぎの先のホームレスコミュニティでも出会いがあった。さまざまな事情を抱えた同世代の若者たちと、ノイズバンドを結成しパフォーマンスを行った。それを見たkamuiが、なかむらみなみをヒップホップの世界へと誘い、彼女はTENG GANG STARRとしてアーティストの道を歩み始めた。

そんな話をなかむらみなみから聞いていた最中に、Yoyouがやってきた。長い爪のついた指からは血が流れている。「ティッシュがなかった」と手持ちのマスクで傷口を押さえているではないか。マスクが血だらけだ。どうやら不注意でカバンの中に入っていたハサミの刃に触れて、指を切ってしまったようだ。なかむらみなみがすかざず、手持ちの絆創膏を差し出す。

「私も怪我をたくさんするから、いつも持ち歩いている」そうだ。リアルな路上で磨かれたサバイブ力の片鱗を目の当たりにした次第だ。なにより、過酷な環境を生き延びてきたからこその、なかむらみなみの優しさを垣間見た瞬間だった。

こうしていろいろなことを整理して話せるようになったのも音楽と、音楽を機に交流してきたTREKKIE TRAX、そしてandrewの存在のおかげだと感謝の気持ちを述べた。andrewがどういう存在かを尋ねると一言では言い表せないが「私の翻訳者としてだけでなく、一緒に成長していける仲間」だと最近になって強く実感しているという。一方、なぜなかむらみなみと一緒に音楽を続けようと思ったのかを、同席したandrewにも尋ねてみた。

「精神性がハードコア。それをヒップホップで表現するなかむらみなみの個性は他にない。TENG(GANG STARR)が終わるときに、率直にもったいないと、ひとりのアーティストとして紹介したいと思えた。」

TENG GANG STARRのツアーが終わってしまえば、なかむらみなみがきっと生活できなくなるだろうということが頭をよぎった。

「決めつけてしまうのは良くないけど、なかむらみなみが生きていくには音楽が必要」

andrewはなかむらみなみが主体となり、音楽を生活に結びつけられることを自覚したほうがより良い人生になっていくと、そう思ったのだ。andrewとTREKKIE TRAXは、独り立ちするなかむらみなみの背を押し、共に歩みを進めている。

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好き勝手遊んでいた”余裕なりの”からアーティストYoyouへ

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本日のもう一人の主役がYoyouである。なかむらみなみとは地元が近く、Yoyouが18歳のころに知り合った。

「噂には聞いてましたよ。なかむらみなみというヤバい人がいるって」

とYoyouが言うとなかむらみなみも「自分が成人式の頃、地元の後輩に、おもしろいコがいると、評判は聞いていた」と、互いについての評判を耳にしていた。時を経てYoyouとなかむらみなみはライブハウスで出会う。Yoyouの同級生の友達がパンクバンドをやっていて、Yoyouはライブを観に行っていた。そのバンドのボーカルのお姉ちゃんが、“みなみちゃん”だったのだ。ローカルではよくある話である。邂逅から、二人は意気投合した。

さて、そんなYoyouは2020年からアーティスト活動を開始。シングル「202022」にシーンに颯爽と現れ強烈なインパクトを残し、2021年にはEP『PISS』をリリース。オルタナティブな音像と浮遊感、その形容しがたくも耳に残る特異な音楽性とキャッチーさの絶妙なバランスで、ヒップホップだけでなくオルタナティブな層を巻き込み、一躍アーティストとしてその名を広めた。

しかし、Yoyouはそれ以前にネット界隈ではちょっとした有名人だったのである。というのも、詳細は伏せるが、過去に逮捕された際、判決が下されるまでの留置場生活を赤裸々にしたためた「留置場日記」が話題となっていたのだ。捕まるまでには、尿検査から結果が出るまで、長い期間があったそうだ。

「どこまで言っていいんだろう」

戸惑いながらもその時のことを振り返ってくれた。

「一発実刑か、執行猶予なのか、警察が家に来るのか来ないのか。どうなるのかわかんない期間が続いて、それがいちばん嫌だった」

大学卒業とも重なり、就職活動をしても色々な人に迷惑をかけるかもしれない。その理由から、結局どうすることもできないまま、悶々とした日々を過ごしていたYoyou。結果、彼女は逮捕され、留置場に勾留されることとなる。その時の辛かった気持ち、反省を綴ったのが「留置場日記」である。なぜそれを文章として残し、公開しようと思ったのだろうか。

「物心ついたころから日記を書きなさいと言われて。絵日記を毎日書いていた。私は、良くも悪くもめちゃくちゃポジティブで、自分に都合が悪いことをすぐ忘れちゃうから、書いておかなければと思った」

自分がしたことを、書くことによって落とし込む。戒めのための日記だった。Yoyouという名前は、自分が余裕な時が気持ちがいいから、という理由で名付けたそうだが、そこに自身を冷静に俯瞰する彼女らしい精神の顕れがあるように思う。

「出てきてからも、表面的にはなんてことなかったように振る舞っていた。でも、当然自分の奥の奥では食らってた。自由を奪われて、人生で初めて感じた地獄。なのに、能天気な自分のせいで、Yoyouの中の、辛かった自分にこれ以上同じ思いをさせるのは可哀想だなと思った。」

とその胸中を明かしてくれた。そこから彼女に大きな変化を与えたのが音楽だった。

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Efeewmaとの出会い Yoyouが余裕な理由

「みなみちゃんもその一人だけど、私の周りにはたまたま音楽作ってる友達ばかりいた。流行りもあってhiphopをやる子が一番多かったですね。でも、ヨユウがやってきた事はだいぶ現地のラッパー寄りだし、”うーん、とうとう逮捕か、やりますか” みたいな(笑)。今別にhiphopをやっているつもりはないけどきっかけはそんな感じでしたね」

そしてYoyouのトラックをプロデュースするEfeewma(エフューマ)との出会いも大きなターニングポイントだった。たまたま、互いに繋がりのあったTENG GANG STARRのMVの撮影現場に同行していたのだ。今の自分があるのも、今回のコンピへの参加も、捕まったことが大きなきっかけだと語る彼女は今の場所が「超好き」なのだという。

考えてみれば、普通に働くなんてそもそも無理だったかもしれないし、大学院に進学することも考えていたYoyou。あのとき、捕まっていなかったら全然違う人生を歩んでいたかもしれない。そして今、こうして目の前で音楽について言葉を交わすことは少なくともなかったかもしれない。

Yoyouの中には、myルールがある。文章と音楽で表現する違いを聞くと、
「文の方がありのままで日記の感覚。特に誰にも見られない部分では、全て書き出す。一方、音楽で形に残したいと思うのものは、時間が経過してから聴いても、気分が下がらない’気持ち良さ’を重要視している」という。
「単純に、自分は最底辺まで落ちたし、このシャバ様で生かせてもらえる以上、落ち込んでる気にならないって意味で、ネガティブなものはあまり好きではない。
なるべく、自分が暖かい気持ちの状態の感情を音楽には落とし込みたい」
5、6年前、SNSでのユーザーネームは
「余裕 なりの」であったらしい。
精神的に、余裕がある人の方が憧れたりするから。皆何かしら抱えて辛いけど、それを表に出さない人がYoyouの信じる、「強い人」なのだ。

「これ偏った意見なので口にするのは憚られるけど、極端な話ですよ?弱みを人に見せられる人は強いとかいう言葉がありますけど、まぁそれも分かる。けど、それより更に、弱みをの部分を自己で癒して可能なら自己解決出来る人がもっと強いと、私は思っている」

Yoyouは、なるべくポジティブなエネルギーを発信したい。だからこそ自分のドロドロしている部分は滅多に外に出さないそうだ。そこまで徹底してポジティブなのはなぜだろうか。それは活動を始めてから分かったと言う。Yoyouの母親が「超余裕」人間だったからだ。
Yoyouは母親が40歳のときに、父親を亡くしている。yoyouは小学2年生。最愛のパートナーを亡くしたのに、Yoyouの母は幼いYoyouに対して弱さをとにかく見せなかったそうだ。
泣いている所等ほぼ見たことがないという。
母が圧倒的に強くいる姿を見て、自分も強くいようと決意した。小さな子供ながらの決意はYoyouの人格を形成し、時が経った今、彼女の創造する音楽の端々に、逆境を跳ね除けるポジティブなエネルギーを感じとることができる。

なかむらみなみとYoyou。彼女たちについて知ってもらったところでここからは米原康正を交え、EP『DEATHTOPIA』についての鼎談をお送りする。

米原康正がなぜ彼女たちをコンピレーションに招いたのか、その経緯から、楽曲のコンセプト、令和のギャル論にまで話は発展。混沌としたディストピアな状況を生き抜くヒントを、彼女たちの言葉と作品に込めた思い、彼女たちが敬愛するギャルカルチャーから得られるかもしれない。


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米原康正:自分たちなりの生き方を示している人たちをパッケージした

ーコンピレーションアルバム『DEATHTOPIA』でなかむらみなみさんとyoyouさん、お二人をキュレーションした経緯を教えてください。

米:基本的に、『DEATHTOPIA』に入っているのは俺が最近ネットで見て聴いてる人たち。そして、ヒップホップのステレオタイプに囚われずに自分をリアルに表現しているコたちを集めたんだよね。なかむらみなみちゃんの「Ride」もすごい好きです。トラックももちろんだし、めちゃくちゃいいのにメジャーな地上波に取り上げられないのはおかしい。誰も取り上げないなら俺がやろうっていうのが最近の俺じゃん?(笑)。だから二人にはぜひ入ってもらいたかったんだよね。

ー米さんとお二人の接点を教えてください。

なかむらみなみ:最初はTENG GANG STARのWEGOの撮影のときですね。そのあとblock.fmの納涼会とか、ぼく脳の個展なんかでお会いして。

米:いろいろなところで会う感じだったね。yoyouちゃんは、みなみちゃんと繋がっているとは思っていなくてyoyouちゃんの最初の曲「202022」から気になってたアーティストで。調べてもなかなか情報が出てこなかったんだけど、なかむらみなみちゃんの「Ride」のMVにカメオ出演してたから、みなみちゃんに繋いでもらってみんなでカレー食べたのが最初かな。その時に、二人が俺が作ってたころのeggを読んでいたらしいんだよね。

ーリアルタイムに読んでいた世代ではないですよね?

Yoyou:掘りましたね。今のeggは正直あまり興味ないので。誌面から漂ってくる匂いが全然違うんですよ。97年生まれなんでリアルなギャルブームを体感したとは言えないけど、身体が時代を覚えている(笑)。私は97年から2003年ごろまでが全盛期だったと思っていますね。eggはもちろんアウフォト(OUT OF PHOTOGRAPHERSは米原康正が編集を担っていた雑誌。芸能人やカルチャーの著名人たちからプライベート写真を集め、掲載していた雑誌)も集めてました。米さんに会えるとは当時思ってませんから。本当に好きで集めてました。

米:けっこう深いところまで知ってて、最初にカレー食べてるときもびっくりしたんだよ。今のギャルは違うって熱弁してくれて。

ーそれで今回の「Gчдγμ i∫ dёдd」につながるわけですね。米さん監修のコンピで最後の曲が「Gчдγμ i∫ dёдd」だから、いいパッケージングだなと思ってました。EPの『DEATHTOPIA』というタイトルにはどんな意図があるんでしょうか?

米:直訳するとユートピアの逆で「死の国」とかそんな意味なんだけど、ネガティブなイメージではないんだよ。そこに対してどう生きていくかという、俺からすると肯定的な意味で使っている言葉。それを自分たちなりの生き方を示している人たちをパッケージしたんだよね。

ー自分たちのスタイルを持って表現している人ということですね。

米:自分が分かっていれば、時代や環境に流されてしまう人たちではないということ。そこが今回のテーマです。


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なかむらみなみ:「人生全部ギャンブルみたいなもん」

ー実際参加してみてどうでしたか?反響はありましたか?

なかむらみなみ:反応は良かったですね。初めて聴いてくれた人からも今まで聴いてくれた人からもDMいただいたりしてます。

ーなかむらみなみさんの「Roulette」はどんなコンセプトがあるんですか?

なかむらみなみ:コロナ禍関係なく、そもそも自分の生きてきた人生賭けだよな、ということです。朝起きる瞬間から賭けが始まるわけですよ。約束があって寝過ごしたらバッドな方向に行っちゃうし、この髪色も、赤と青の髪染めを混ぜて染めてるんです。綺麗に染まるときもあれば、まだらになっちゃうこともある。日常をルーレット的側面で切り取った曲です。『DEATHTOPIA』というコンセプトを聞いたときからパッと浮かんできました。

ートラックについてもandrewさんにお聞きしたいのですが、どういったイメージで制作したんでしょうか。

andrew:『DEATHTOPIA』のコンセプト的にも、ギャルの解釈としてつながっているかはわからないんですが、潮流としてハイパーポップの音像に作られがちなんですね。そこを今回、もう少し自分なりに解釈してみようと思いました。せっかくコンピだし、新しいものを提示したいとなかむらみなみと話し合いましたね。

ーハイパーポップっぽいけど、違うような、いい意味で引っ掛かって気になっていたんです。具体的にはどんなサウンドを目指したんでしょうか?

andrew: 結果的に出来上がったのは最近Rageビートと呼ばれている、アップリフティングなトラップのビートですね。Rageを作るというよりは自然とそうなったという感じです。このスタイルのビートでラップする時はリリックを音的にハメることを優先して、あえて歌詞に意味をあまり持たせないマンブルのスタイルが定石。ただ今回はなかむらみなみの伝えたい言葉で、かつ耳触りの良いフロウをちゃんと突き詰められたら、コンピの中で新しいものを提示できると思って作りました。オートチューンもいつもよりしっかりかけてますし、ハイパーポップ以後の質感を残せた。僕らなりの『DEATHTOPIA』的な曲になったかと思います。

ーなかむらみなみさんは、「Ride」のMVでYoyouさんとともにeggを掲げてましたが、ギャル文化の影響は受けていますか?

なかむらみなみ:かっこいい先輩たちがみんなギャルだったんですよ。本物の。Yoyouの思ってる解釈とは違うかもしれないし、わたしが“商業的”とか言っちゃったらなんなん?ってなるかもしれないけど、Yoyouの「Gчдγμ i∫ dёдd」のレコーディングに立ち会って、「やってくれた」と思いましたよ。わたしたちが抱いているモヤモヤに一石を投じてくれた気がしますね。

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Yoyou:悔しいけど何年後かにフォーカスされるのは「地雷系」

Yoyou:ヨネさんというギャル文化の発展に貢献した方企画のコンピなので、生半可じゃないギャル愛を楽曲に落とし込みたくて「Gчдγμ i∫ dёдd」にしました。逆に。(笑)
最初は自分がいかにギャル好きか、みたいなギャルマウントな曲だったんです。

ーギャルボースティング系の。

Yoyou:yeahそう。egg全冊持ってるパラパラdvdも揃ってるとか。(笑)
でも、それ言われたってって感じだし、オナニー的だなって思って。それに、ギャルが好き!の土俵へいざ上がれば、もっと好きな人はいるんですよ。毎日今も黒ギャルを本気でやってるコもいる。だとしたら、物質的なものではなく思想でいこーと。「こう思ってる人、一定数いるよね?」って問いかけ系にしました

なかむらみなみ:分かるわ。

Yoyou:ちょっと心配なのが、PiNKIIちゃんみたいな海外のギャル推しな人たちに伝わるかなという。気づいてくれる人が深読みして分かるメッセージだから、日本語でも一回聴いただけだと、アンチギャルなのかなと思う人はいるかもしれないし。

なかむらみなみ:まあでも、米さんに呼んでもらってこうなっているわけだから大丈夫でしょ。

米:PiNKIIに始まり、Yoyouに終わるというね。PiNKIIは日本にも住んでたことがあるんだよ。すごくギャル文化の探求に熱心なんだけど、一回国に戻ったらこっちに帰ってこられなくなっちゃってね。面白いのはもともとギャル文化は西洋の影響を強く受けて、それが独自に日本で解釈されて誇張されていったわけでしょ。オリジナルを超越しちゃったんだよね。それを見て、海外のコたちがカワイイって思うのは面白いよね。

Yoyou:海外で最近日本の90年代のギャルブームを真似て、TikTokにあげたりとか、またブームが来てますもんね。Y2K!それってすごい事だと思うんですよ。日本が海外に誇れる若者文化って少ないと私は思ってしまうんでね。だけど当時のカルチャーが神格化されて、リスペクトされていることはめちゃくちゃ嬉しい。だけど、当時のギャルが何故あんなにキラキラしているのかを考えると、オリジナルだったから。本物なんですよ。あれは。今、2000年代のあの感じを皆便乗便乗で表層的にリバイバルそれってどうなの?って思っちゃいますね。いや、本気で愛があればいいとも思うんですけど‥。

米:コスプレになっちゃうからね。今ギャルを探してみると、光が当たるところよりも、影のところに意外といたりするんだよ。昔は陽キャの象徴だったギャルのパワーが、陰に流れていっているんだよね。

Yoyou:本当そうですね。最近それこそ、認めざるを得ない発見があったんですけど、いわゆる「地雷系」と呼ばれるコたち、あれが今の時代のギャルなんだと思います。悔しいけど。何年後かに2020年のギャルとしてフォーカスされるのは「地雷系」だと思いますよ。

米:ギャルは精神性だからね。そこを置いていってしまうと形骸化したコスプレになってしまうからね。それは当事者たち以外からすると外からは分かりにくいものだから、捉えるのは難しいかもしれない。今回の『DEATHTOPIA』に参加してくれている人たちは、一見バラバラに見えるけど、その精神性を持っている人たちなのかな。という気はしてる。

なかむらみなみ:中学の時、ギャルの先輩によくシバかれてたんですけど、それでもかわいかったんですよ。で、階段の横で待ち伏せして脅かしたりして。 

米:またシバかれるんでしょ?(笑)

なかむらみなみ:そうそう(笑)でもパンツ見えてても、どの角度から見てもカワイイ(笑)好き!!!!!っていうのを思い出しながら、今のギャルに物申す、みたいなこと言ってるのはもしかしたら“老害”なのかな。というジレンマに陥るね。保守的なのかなとか。

Yoyou:分かる分かる(笑)。子供の頃、大人が昔語りをしているのを聞いて、幼いながらにシラケてましたもん。「知らねーよ」みたいな(笑)。だけど私が抱いている平成ガングロギャルが最強で、令和ギャルなんかフェイクって感情は、昭和のロック好きおじさんが「お前ら本物知らねえだろ」と言っているのと同じなのかなと葛藤しています。でも、そのおじさんはすごいピュアだなとと思うんです。若い人でもロック好きでもなんでも、好きなものに対してガチで向き合っているのってピュアですよね。hiphopでもよくある、”俺らはリアルであいつらはフェイク”みたいなことも、それは純度を突き詰めている表れなのかもしれない。どこの界隈にもそのジレンマがあって、私はギャルに対して特にそう思っちゃうから、今回の曲だけじゃなくて、音楽でもちょいちょいあぴってかこうとおもいまつ。

ー「Gчдγμ i∫ dёдd」で、軸が一個定まったという感じですか?

Yoyou:ギャルを自分のアイデンティティとして一個置くかはわからないけど、今回の曲で、「過去がピークなんて寂しすぎ」という歌詞は、海外で扱われる日本のカワイイが、そこで止まってるんだなというのが自分の中では悲しい。「地雷系」が何年後かに海外で真似される可能性はあるけど、でもやっぱり「ギャル」は
越えられないんじゃないかなって。

GAL is attitude.not style.

米:当時はギャルが海外で評価されていることはなかったからね。国内も、俺は騒いでたけど、「米ちゃん何やってんの?」って言われてたから。原初のギャルなんてチーマーと繋がってるから、アウトローなわけよ。クラスで一人、学年で数人とかそういう感じ。だから全然、メジャー路線じゃなかったんだよね。The Clashのジョー・ストラマーが言った「Punk is attitude, not style(パンクはスタイルじゃなく、姿勢だ)」じゃないけど、態度や精神性、姿勢だったりするんだよ。17歳でパンクを聴いたときみたいに、この人たちは新しい価値観を作れるって思った。壊しているフリをして創造していると感じたね。

ー『DEATHTOPIA』に通じる、令和のギャルが持つべきアティチュードは何だと思いますか?

なかむらみなみ:対面した人に、明確に分かること。わたしは先輩を見て、「うおおカワイイ」って思ったのがギャルだったんで、その説得力が肝心なんじゃないと思います。押し付けるものでもないし、コスプレするものでもないし、その瞬間に感じるものなんだと思います。見た目や雰囲気、その人から漂ってくる匂いも含めて。ルーズソックスとか、キティサン(キティちゃんサンダル)履いてるからとか、アイテム付けてるからギャルってことではない気がしますけどね。

Yoyou:わたしは、ギャル=強くて自由。大人にも真っ向から刃向っていた。今は時代自体が陰ですから、弱音をすぐ吐いたりしちゃうムーブだと思うんですけど、「余裕」というワードにも通じている、「余裕っしょ」というポジティブなエネルギーを発することが重要かな。強さをもっと見たい。地雷系のヨワヨワメイクでも、強くあれと。強めが流行ってないんかなそもそも。

米:海外だとボス系のコは相当強いよね。ジャスミン・ビーンも強そうだし、アッシュニコとか。

Yoyou:Z世代という言葉は使いたくないけど海外の10代はめっちゃかっこいいと思いますね。TikTokとかみてても感じるので、羨ましいなと思います。

ー日本の10代のTikTokkerとの違いはなんでしょうか?

なかむらみなみ: 日本ではよく、胸より上でしか動いてないと言われますよね(笑)家の面積的なことだと思うんですけどね。みんな胸像みたいなアングル。自分もそうなってしまいがちですが。

ースケール的な話でもあると。

米:確かに、面白いのあまりないね。「踊ってみた」が多いし。

Yoyou:量産型が多いですね。なんちゃら坂的なナチュラルかわいいを真似して真似して、みたいな。海外の10代はめちゃくちゃ尖ってる。メイクも見たことないメイクをしてたり、それこそ私が曲で言っている“ネクストエイリアン”を体現しているなと思います。

ー米さんが言うように、壊すフリをして新しい価値観を生み出す、創造するということが肝要ですね。

米さん:最初に関わってた原初のギャルたち、すげえいいなと思っててもどんどん戦場から離脱して社会に帰っていくわけだよ。それは仕方ないことだけどね。どんなシーンがあっても初期衝動を残している人はすごく少なくなってる。今回のアルバム聴いて、年齢とか関係なしに、元ギャルのコたちに、「今のコたちいいなー」ってシンプルに思ってほしいし、鼓舞してあげたいんだよね。ステージは変わってもアティチュードは変わらないでほしいわけよ。「初期衝動を思い出せ」ってことだね。

Yoyou:「初期衝動を思い出せ」いい〜。

なかむらみなみ:名言でました〜。

米:若いコたちがネット使えて、俺、勝負できますよ。とか言うんだけど、そんなの俺だって使えるよって。年齢や知識量なんて一要素でしかない。みんなに情報が開かれてる世の中だから、いかにそれを自分なりに解釈して活かしていくか。ここからはそういう勝負だと思います。

なかむらみなみとYoyou。偶然、地元の近い二人のアーティストが参加した『DEATHTOPIA』には他にも彼女たちと同じように溢れんばかりのエネルギーを内包し、炸裂させているアーティストが参加している。ぜひ彼女たちの心の叫びとも取れるピュアな言葉と、彼女たちの脳内を音像として表現したかのようなサウンドに耳を傾けてみてほしい。そこには、いつの間にか忘れてしまった、私たちも抱いていたはずの「初期衝動」を思い出させるような金言が潜んでいるかもしれない。混沌として鬱屈とした世の中で、自分がどうあるべきかを見失っている人も多いはず。ディストピアを生き抜くムーブを、最短距離でやってのける彼女たちのアティチュードには頭が下がる。米原康正が贈る、赤と青が混濁する紫色の処方箋。それはネオの前に現れ、真実を告げるモーフィアスのように世界の見方を変え、目を覚ましてくれる可能性を大いに秘めている。

Text:Tomohisa Tomy Mochizuki
Photography:Yasumasa Yonehara

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DEATHTOPIA COMPILATION EP RELEASE PARTY
開催日:2022年3月10日(木)
時間:19:00〜
場所:or(オア) 1F  & 3F
入場料:¥1,000
出演者:<SP GUEST LIVE>なかむらみなみ、Neon Nontana、<DJ>andrew(TREKKIE TRAX)、米原康正、DJ FUJIKO、ABILIO


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