【インタビュー】MIRANDA YOKOTA「ファッションデザインとアートの領域を並行して充実させたい」【OTAQUEST】
「OR x TWELVE ARTIST x OTAQUEST+DA.YO.NE」は、自身もアーティストでもある編集者の米原康正が毎月1名の若手アーティストにスポットを当て、12ヶ月にわたり12人のアーティストを紹介していくプロジェクト。東京・渋谷に誕生した新スポットMIYASHITA PARK内のカルチャーハブステーション「OR」を舞台に、作品の展示、音楽イベント、コラボアイテムの作成、ポップアップストアなどを実施している。
今回は、その第二弾アーティストとして2020年12月の店内を彩ったMIRANDA YOKOTAを紹介。まさに独自の感性で読解不能の創作に突き進む、野心あふれる若手アーティストに迫った。
*この記事は、”HYPER OTAKU MEDIA” 「OTAQUEST」に、2月4日に掲載されたインタビュー記事を日本語として掲載しております。オタクエストでは、日本の様々なカルチャーを世界に向けて発信しております。こちらのサイトも是非チェックしてみてください!
MIRANDA YOKOTA【TWELVE ARTISTS vol.2】
【Profile】
中央大学出身でペイント、デジタル、グラフィック、服のリメイク等独自の活動を展開している。最近では様々な道具を用いて奇妙なEYEWEARを製作。国内では、「HOOD飯」「吉本京都国際映画祭」アパレルブランド等にアートワークを提供。最近は、渋谷の老舗ビンテージ古着屋【NUDETRUMP】の服のリメイクを手掛け、ファッションにも自身のスタイルを落とし込んでいる。海外ではHYPEBEASTのCOVIDart企画やTremaine EmoryやCali thornhill dewit等が参加するLucien Smith主催の【STP GROUPSHOW】に選出されるなど活動の幅を国内外に広げている。
「始まりから終わりまでずーっと夢見心地」
—まずは、『OR x TWELVE ARTISTS + DA.YO.NE.』に参加した感想を教えてください。
MIRANDA YOKOTA(以下:MIRANDA):ヨネさん(米原康正)から展示の誘いに始まって、「企画のTシャツもBEAMSと作るから」ってトントン拍子に話が進んでいったので、夢みたいでした。そもそも自分がヨネさんにフィーチャーしていただけるとは思っていなくて、それがまず信じられなかったです。
—展示を終えてみて今の心境はいかがですか?
MIRANDA:始まりから終わりまでずーっと夢見心地って感じでした。今もまだそんな感じです。
—企画のキュレーターを務める米原康正さんとはどういった出会いで、今回の企画に繋がったのか経緯を教えてください。
MIRANDA:ヨネさんのことはもともとファンで、わたしが一方的に知っていたんです。「ヌードトランプ(NUDE TRUMP)」(トランプルーム(TRUMP ROOM)のオーナー松村逸夫が手掛ける古着屋)の逸夫さんと2年前に出会ってからお世話になっているんですけど、逸夫さんのFacebookを見ていたら、逸夫さんとヨネさんが一緒に映っている写真が出てきたので、タグを辿ってヨネさんにいいねしたんですよ。そしたら、ヨネさんもわたしのFacebookの作品を見てくれて、メッセージでコンタクトを取ってきてくれたことがきっかけです。コロナの様子も見つつ、夏くらいにヨネさんと会うことになり、中華を食べに行きました。そのあと「Kit Gallery」のバーに行っていろいろ話したのが今回の展示に繋がっています。
—「OR」での展示の話はいつくらいに決まったんですか?
MIRANDA:10月の終わりくらいです。ヨネさんから「夜飲んでるから時間空いてたら」って誘ってくれて、行ったらそこに「OR」の方々もいて。「OR」の方とお話してから1週間後くらいに詳細が届いて、12月に展示されることを知りました。そのときまで展示企画自体が何月に始まるってことも全く知らなかったんです(笑)。
—そんな中で今回新たに制作したものはありますか?
MIRANDA:ほとんどの作品はすでに作ってあったものなんですが、マネキンとゴーグルなど新しく展示用に作った作品も何点かあります。
—実際に「OR」に展示されていかがでしたか?レセプションの感想も教えてください。
MIRANDA:そんなにたくさんカメラが入っていると思わなくて、リフレクターが入ってる服を着て行っちゃったんですよ。
—フラッシュに反射しちゃいますね。
MIRANDA:ご迷惑をおかけしました(笑)。そんな中でm-floの☆Takuさんを始め、いろいろな人をヨネさんが紹介してくれて、その空間にわたしの作品があるっていうのは本当に夢みたいでした。ちょうど12月4日がレセプションで、日付変わって5日が誕生日だったんですけどお祝いのケーキも用意してくださって最高の誕生日になりました。
アート制作をはじめたきっかけ
—それは記念に残る誕生日になりましたね。MIRANDAさんはいつからアートを制作するようになったんですか?
MIRANDA:絵自体は子どものときから書いていました。ガチり始めたのは2018年頃です。
—なぜ2年前から本気でアートを始めたのか教えてください。
MIRANDA:大学時代、サークルで遊んだりしていたときに全然面白くなくなっちゃったんですよ。酒飲んでお金使って遊んでの繰り返しに退屈して飽きちゃった。自分でやりたいことが何かあるかなーって思ったときに、久しぶりに絵を描いてみようって思ったんです。
—その時はどんな作品を作ったんですか?
MIRANDA:煩悩と千手観音を融合させた作品で、平面と立体の組み合わせ、平面なんだけど立体に見えるような作品を作りました。わたし、モチーフとして釈迦とか観音が好きなんですけどそこに「しまむら」で買ってきた黒のブラジャーと外国の紙幣、マネキンの首をブッタ切ってくっつけた作品です。それを自分の手でずっと持っているのももったいないと思って、どこか出展できるところをネットで探しました。そこで見つけた吉本クリエイティブエージェンシー主催の京都国際映画祭のアート部門へダメ元で応募したら、選ばれて出展が決まったんです。
—それがアーティストとしての第一歩だったんですね。幼少期からずっと絵を描いていたというのは、なにがいちばん大きく影響しているのでしょうか?家族にアートに携わる人がいて、その影響があったりとか?
MIRANDA:家族にアート関係の人はいませんが、母が「BOO FOO WOO」っていうちょっと派手めな子ども服ブランドが大好きで、中学生までずっと着せられていたっていうのはありますね。私もそのブランドが好きだったし、今でもそのデザインは色あせてないんです。振り返ってみると絵を描いていたのもその色彩やデザインに影響を受けているのかなって思います。「BOO FOO WOO」の社長でプロデューサーの岩橋麻男さんにも2年前に出会うことができましたし、未だに影響を受けています。
—それはすごいですね。どうやって出会ったんですか?
MIRANDA:Instagramで見つけて麻男さんの服に影響を受けて、こういったことをやっています。ありがとうございますってメッセージを送ったんですね。そしたらちゃんと返信をくれて、後に原宿でお会いすることになって以来、おさがりで服を何着かいただいたり、お誕生日のパーティに招いていただいたり。仲良くさせていただいています。
作品には「自分の日記的な意味合いもある」
—MIRANDAさんはファッションからのインスピレーションを結構受けているのかなと思ったのですが、他に、自分の作品に影響を与えるものってありますか?
MIRANDA:好きなアーティストのMVを観るの好きです。
—今、まさにMIRANDAさんの部屋で流れているのはPost Maloneですが、好きなアーティストを教えてください。
MIRANDA:Post Maloneももちろん好きですし、Travis Scott、Die Antwoord、LittleBig、$uicideboy$、Thundercatとか好きですね。キャラが確立していて、なおかつその世界観を音楽と映像で表現しているアーティストが好きなんです。そこから影響を受けている部分は大きいです。
—その色彩や描かれているモチーフを一見すると奇抜でサイケデリックなんですが、ポップでかわいらしい側面もあります。そのバランスが魅力だと思うんですが、作品を描くにあたり何をモチーフにすることが多いですか?
MIRANDA:自分の日記的な意味合いもありますね。わたし、酔っぱらって友達に背負い投げされて前歯折ったことがあって、痛すぎてそのときに描いた絵だったりとか。自分の感情の動きと実際にあったことを組み合わせて作品に落とし込むことが多いです。
—身近に見かけるモチーフやロゴがさりげなく落とし込まれているのも、異世界な絵の作風と日常に繋がりを感じますし、親近感を抱きます。
MIRANDA:普段の生活で見かけて、おしゃれだなとか、かたちが可愛いなって感覚で入れちゃってます。
—MIRANDAさんの作品からは目へのこだわりを感じます。絵の中でもそうなんですがゴーグルで作品を作ったのはなぜですか?
MIRANDA:西日暮里のブラックヘアーを専門とする「JAMBO」というヘアサロンがあるんですが、そこのオーナーであるジャンボママとジャンボパパにわたしがすごいお世話になっているんですね。ルイヴィトンのバッグやジージャン、靴のペイントのオーダーをしてくれたり。今年の夏にジャンボパパが「MIRANDA、アクセサリー作ろう」って言ってくれて、夏だからオリジナルのゴーグルを作ることになったんです。で、制作に行ったらゴーグル、グルーガン、パーツと道具一式全部用意してくれていて、やってみたら結構イイ感じに出来上がって手応えを感じました。作っていたら、SOXSOCKSっていうブランドのルックに使用していただいたり、「OR」でも売れて嬉しかったです。
—スニーカーやラップトップに装飾を施す作品も絵画作品とは一線を画した魅力がありますね。
MIRANDA:自分のなかで、アートとデザインの領域を使い分けるようにしていて、プロダクトのものには自分の絵を描かないようにしています。
—服もリメイクしていて、デザイナーとアーティストを合体させたような感じがします。
MIRANDA:そんなに大したことではないんですが、そう言ってもらえると嬉しいですね。リメイクした服はヌードトランプで販売しています。
—「OR」の1Fの展示はゴーグルやスニーカーが並べてあってカスタムショップのような雰囲気でしたが、「OR」の展示でMIRANDAさんがこだわった部分はどこですか?
MIRANDA:やっぱりメインとなるショーケースですかね。あとは会場で流してもらったオリジナルの動画です。いちばん大きい『DABUN』っていう作品は、村上隆さんの「絵は売れなかったらゴミになる」という言葉からインスピレーションを受けた作品で、ポリバケツに入ったモンスターの自分がベルトコンベアに乗せられてる作品なんです。あのショーケースを廃棄品区画のように演出しつつ、梱包されたダンボールを置きました。ゴミだけどゴミじゃないっていうのを表現しています。
—展示を終えてみて、新たに生まれた野望はあったりしますか?
MIRANDA:展示期間中、大きい絵が一枚売れたんですよ。もう一枚は商談中で、絵を売るっていうこと自体初めてなんですよ。購入してくれた方は地方から東京までわざわざ来てくれたんですけど。作品が売れたことが体験として実感できたのは嬉しいですね。その二枚の絵は、買ってもらえるようなものを描こうと思って描いた作品なんです。自分の世界観や作風、独自性を担保しながら時間をかけて、コンセプトを練って、色味や構図を客観視しながら描いたもの。それが買い手にウケたということで安心しました。来年は、よりそういった作品を増やしていきたいと思っています。
「ファッションデザインとアートの領域を並行して充実させていきたい」
—2020年、制作にあたってコロナ禍の影響はありましたか?社会性が作品に影響を与えている部分はありますか?
MIRANDA:わたしは特になかったかな。社会情勢や政治は好きで見てはいますけど、作品は自分の感情的な部分が大きいです。コロナ関連だと、「HYPEBEAST US」の企画でアート担当のエディター Keith(Estiler)が声をかけてくれて、彼がキュレーションした17組のアーティストがコロナを題材に作品を制作する企画に参加して紹介してもらいました。
—HYPEBEAST USのエディターとはどういった繋がりがあるんですか?
MIRANDA:Lucien Smithが運営する非営利団体SPC(Serving the People)が主催する合同展に参加したことがきっかけです。その合同展を記事で紹介していたのがKeithで以来コンタクトを取っています。「なにか展示やリリースがあったら連絡して」って言ってくれていて、今回の「OR」の展示についても独自記事としてHYPEBEAST USで紹介してくれたんです。
—Lucien Smithといえば若くしてすでに著名な画家として活躍していますがどういう経緯で彼の合同展に参加したんですか?
MIRANDA:Lucienが合同展のアーティストを募集していることを野村訓市さんのInstagramストーリーで知ってすぐ応募したんです。名だたるアーティストたちが参加していたその中の一人として、わたしを選んでいただけたのは本当に嬉しかったです。
—貴重なチャンスをモノにしましたね!個人的な主観ですけどMIRANDAさんの絵は海外のコレクターにウケそうな印象がありますし、今後、世界で活躍して欲しいと思っています。最後に、2021年の展望を教えてください。
MIRANDA:絵を描いていくことはもちろんですが、今回企画とのコラボレーションで制作したBEAMSのTシャツは、自分が着たいと思えるデザインを意識して制作したものです。多くの人に手にとってもらえて、気に入ってもらえるようなデザインを手掛ける機会を増やしていきたい。なので2021年は服やゴーグルの制作にもさらに力を注いでいきたいと思っています。グルーガンカスタムのゴーグルといえばMIRANDAっていうのイメージを定着させたいし、ファッションデザインとアートの領域を並行して充実させていきたいと思っています。
text by Tomohisa Mochizuki
photo by Fumiaki Nishihara (OTAQUEST)
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