大和証券の女子新入社員が飛び込み営業に来た
高崎から来た営業レディ
「こんにちは〜。失礼します。大和証券のHと申します!」2024年11月某日、若い女性が勤務先の事務所を訪れた。アポを取っていない、いわゆる飛び込み営業である。
彼女の訪問目的は、おそらく法人取引の新規開拓であろう。僕が勤務先している会社は、某大企業の子会社であり、何をするにも取締役会と親会社の承認が必要となる。投資案件は、まず通らない。そういった事情をカウンター越しに彼女に話をして、法人取引は難しいことを説明した。
名刺を見ると、高崎支店と記されている。高崎市は同じ群馬県とは云え、ここから遠い。移動に1時間以上も要するので、用が無い限りは行きたくない場所である。 大和証券と言えば、Mリーグ発足当時からのメインスポンサーである。大和証券に対しては、その事を理由として、前々から好感を抱いていた。しかも、彼女は入社して1年にも満たない、新入社員であるというではないか。遠くから遥々来た若い彼女を少々不憫に思い、門前払い状態にはならないよう、Hさんに質問を浴びせ(笑)、会話を続けた。
『御社がMリーグのメインスポンサーを務めているのは知っていますか?』
Hさん「はい。知っております」
『Mリーグを観たことはありますか?』
Hさん「いえ、ありません」
『麻雀はしたことはありますか?』
Hさん「いえ、全く経験はありません」
『御社が発足時から、メインスポンサーを張っているんですよ。是非一度Mリーグを観てください。ルールが解らずに観るのは苦痛だと思うので、10分だけでもいいです。ABEMAで月火木金に、19時から生放送していますので』
Hさん「はい。分かりました」
『あ、それと、会社に販促用のMリーググッズはありますか?もしあるようでしたら、次回持ってきて下さい。個人口座の開設で良ければ、お付き合いはします』
最後にずうずうしいお願いをして、この日はこれで終わった。つまりは、続きがあるということである。
意外なメール〜社交辞令ではなかった
翌日、Hさんから訪問の御礼メールが来た。Mリーググッズの件を本社に問い合わせてみたが、残念ながら在庫が無い旨の回答が来たとのことだった。
その次に続くメールの文章に目を奪われた。そこには、昨日のMリーグの第一試合の感想が書かれていた。
昨日、初めて試合を見ましたが、試合展開の速さにとても驚きました。また、風林火山の亜樹選手が今期初めてトップを取った試合を見ることができて、同じ女性として嬉しく思いました。(Hさんのメールの抜粋)
この試合は今季不調の亜樹プロが、初トップを獲得した試合であった。まさか本当にMリーグを観るとは思わなかった。10分どころか、1試合丸々と勝利者インタビューまで観たことが、メールの文面を見て解かった。僕との会話を社交辞令で終わらせない彼女の真面目さに好感を持った。
僕はMリーググッズは要らないので、近くを通った際は、お立ち寄り下さいというメールを返信した。メールに㈱OKAYAMAのロゴが入ったBEASTXのユニフォームの画像と、BEASTX選手4人の写真を添え、僕が非常勤で所属している会社が、BEASTXのユニフォームスポンサーを務めていることを伝えた。
翌日彼女から返信のメールが来た。自分の上司がMリーグの大ファンなので、是非同行して再訪問したいという内容だった。日程調整をした結果、翌週の水曜日にアポを取った。
推しと楽しむゼロからの麻雀入門
約束の日、Hさんは上司のS氏と一緒に来た。手にはMリーグショップの袋を携えていた。本社にグッズが残っていましたとHさんは言っていたが、どう考えても東京八重洲のMリーグショップで買ったとしか思えない。御礼を述べて、ありがたく頂戴した。
後で袋の中を開けたら、Mリーグのマグカップだった。
僕は図らずも返礼品となってしまった「推しと楽しむゼロからの麻雀入門」をHさんに贈った。これを読んで、麻雀を勉強してください・・と。
この本は、最近会社で結成した「麻雀同好会」の入会記念品にもなっている。10冊ほど買ったが、在庫が捌けない(=会員が増えない)ので、手元に数冊残っていた。麻雀初心者のHさんにとっては、格好のプレゼントになったと思う。
この本は麻雀ジャンルにおいて、6週連続で売上1位を記録しており、最近早々と重版が決まった。普通の麻雀入門本は、ルールや役、点数計算に終止されているが、この本は少々異なり、様々な工夫が施されている。一例を挙げると、麻雀のアプリの遊び方ついての記載もあり、昨今の麻雀環境にマッチさせている。
更にこの本の良い処は、推しの麻雀プロのことを、自身で書き込む事が出来るページを設けてあることである。(下記参照) 例えるなら、自己仕様アレンジ型の麻雀入門書なのだ。
上記の写真は、麻雀イベントで知己を得たSCさんに提供して貰った。この場をお借りして、改めて感謝申し上げる。
何とも素晴らしい出来映えである。画像左上のレーダーチャートに注目して頂きたい。チャートからハミ出た線から、SCさんの「あいこちゃん愛」が伝わってくる。これは、もはや作品と呼ぶレベルである。このページへの装飾や、使われ方を見た日向プロが感激した様子が目に浮かぶようだ。
この様に内容も然ることながら、この本の最大の特長は、製本が画期的なことにある。具体的に説明すると、ページを開いたまま置いておけるのだ。これは非常に便利である。自然に本が閉じる心配が無いので、自分の傍らに置いて、麻雀を楽しめるし、また、勉強することもできる。
いつもの如く、話題が逸れたので本筋に戻る。
Mリーグ談義
Hさんに同行してきた上司のS営業統括マネージャーは、名古屋から転勤してきたばかりで、支店ではNo.2の地位に就いているとのことであった。いかにも仕事が出来そうな雰囲気を醸し出していた。
世間話を交わした後、さっそくМリーグ談議に入った。大和証券がМリーグのメインスポンサーになったのは、当時の社長(現会長)が麻雀好きであることが最大の理由であることが判った。Sさんの推しチームはKONAMI麻雀格闘倶楽部で、推し選手は佐々木寿人プロとのことだった。理由は単純明快で、Sさんは寿人プロと同じ仙台市出身であるからだ。少し話をするだけで、相手がどのくらいМリーグファンであることが判る。Sさんは僕と同レベルのMリーグファンだった。
ただ聞いているしかないHさんに、時々Mリーグの話題の説明を入れながら、あっという間に2時間が経過した。もうじき正午になる。Sさんがそろそろ失礼しようと、Hさんを促した。
後から聞いた話だが、Sさんは部下と車で外出する時、部下に運転を任せて、自分はスマホでMリーグのアーカイブ映像をずっと観ているそうだ(笑)。Hさんも上司であるSさんのその姿を普段から見ているからこそ、あの日Mリーグの試合を観る気になったのかもしれない。
口座開設〜個人取引開始
Hさんの3回目の訪問は、初回と同様単身であった。口座開設用のタブレットを持参していた。メイン口座は別に持っているので、大和証券の口座は基本的にIPO株(新規上場株)を買うことを目的としていることを告げた。早速紹介されたのは、「ガーデン」であった。ただ、あまり値上がりは期待できないという説明があった。ガーデンの子会社に「山下本気うどん」があることを知り、申し込みを決めた。「山下本気うどん」は、東京に住む娘から紹介してもらった店で、渋谷のオクタゴンへ行く時、しばしば利用する。要は損得よりも、この会社に縁を感じたことを優先したということだ。
タブレットを用いた口座開設は、問題なく無く終えた。前回Hさんに会った時、麻雀を覚える手段としてゲームアプリの「雀魂」を勧めた。進捗を尋ねると、CPU相手に練習をしているが、訳の解からないうちに、勝ったり負けたりしている状態らしい。高崎支店には、Hさんを含め男女2人ずつ計4名の同期が配属されたそうだ。その同期の中のもう一人の女性が、麻雀に興味を持っているとのことだ。
Мリーグのメインスポンサー企業に所属していることを矜持に、世界で最も面白いゲームである麻雀を覚えて、新入社員4人で「雀魂」を友人戦でプレイし、同期の絆を深めるようHさんに勧めた。僕にとっては、ささやかな麻雀普及活動ではあるが、本人達にとっては、完全に大きなお世話かもしれない(笑)。
翌日、口座番号の連絡があった。更にその数日後、大和証券から口座開設の書面が郵便で届いた。
大和証券への想い
新人ながら基本的にHさんは証券マンである。故に営業の電話が時折かかって来る。「IPOが暫く予定が無いので、PO(公募増資)はいかがでしょうか」等々。無下に断るのも可哀想なので、ジョイフル本田(北関東に所在する巨大なホームセンター)のPOを申し込む意向がある旨の回答をした。ジョイフル本田は、僕の家から30分圏内に2店舗あり、たまに利用する。それが申し込みを決めた動機である。
僕は電話を切る前に、彼女の麻雀に関する近況を訊くことにしている。昨日の話では、同期の二人は麻雀に乗り気だが、もう一人は興味を持ってくれるかどうか微妙であるとのこと。Hさんは、麻雀のルールを覚えるべく、日向プロの本を少しずつ読み進めているらしい。
Hさんの上司であるSさんに聞いた話によると、Mリーグのスポンサーになったことを理由に、法人との新規取引が始まった事例は、Sさんの知る限りでは無いに等しいとのことだ。
まぁ、仕方のない話だが、黎明期からMリーグをメインスポンサーとして支えている大和証券さんには、是非とも業界でトップの企業になって頂きたい。微力ながらその協力は厭わない。法人取引相手として、まずは㈱OKAYAMAを紹介しようと思う。
(了)