第10夜 TOPIC2|遊ぶように働く。基山フューチャーセンターラボから拡がる面白い地域。(吉岡慶太/佐賀市役所・基山フューチャーセンターラボ)
私は佐賀県出身で、佐賀大学平瀬研究室で建築の勉強をし、その後、2012年より佐賀市役所の建築職として業務を行なっています。「役場でできる面白さ/役場以外でできる面白さ」ということで、私は役場以外での基山町での活動を話したいと思います。
私が活動をしている基山町は、佐賀県東部の福岡県との県境に位置する、人口1万7千人程度のベッドタウンとして発展してきたような街です。
KIYAMA FUTURE CENTER LABとの出会い
©吉岡慶太
これは基山で活動するきっかけになった日の写真です。写真に写っているKIYAMA FUTURE CENTER LABのみなさんは「学びをやめない」という基本理念のもとに、料理家の方や酒屋の方、保育士の方などが集まり、有志の市民団体として活動されています。私は、ちょうど駅前の空き店舗を自分たちの活動の場として改修したいという話が進んでいた年から関わり始めるのですが、建築を専門としていることもありこの計画の打診を受け、活動に参加することになりました。
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フューチャーセンターは基山駅から徒歩2分の、街の中で一番人通りが多い場所にあります。もともと酒蔵と酒屋があった場所でしたが、5、6年近くシャッターが閉まっていたところを住民の人たちと一緒に交流スペース兼カフェ兼店舗として改修しました。
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改修過程では、大学の人たちや地域住民の人たちにも声をかけ、DIYワークショップを重ねて一ヶ月くらいの工事期間を経てオープンしました。
建築を専門としているとはいえ、工事の経験はありませんでした。作業工程から何から手探りの状況の中色々とネットで調べて、休日に作業していました。
試行錯誤の作業の中でも、特に困ったのは保健所とのやりとりでした。普段、役所では審査をさせて頂く立場で「保健所の方と相談しといた方がいいですよ」と声をかけることもあったのですが、自分が行うと勝手が違いますね。一般的な仕様で審査が通るかな、と思ったら、審査が通りませんでした。実際に相談させてもらう側になったことがこの活動の中で一番勉強になった点かもしれません。
KIYAMA FUTER CENTER LAB で起こる多職能の重なり
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現在は旧酒屋部分にお茶カフェとパン屋、フリースペースがあり、旧酒蔵部分にオーダーメイドの靴屋さんが入っています。パン屋では地元の学校と地元の酵母菌を採取してパンを製作して販売したりしています。
また、水曜日のパン屋と靴屋さんと月一で「スナックよりまり」という飲み屋をイベント的に行っています。若い人たちや地元の人たちが気軽に入ってきて「こんなことしたいよね」っていう前向きな話をできる場所が作りたいな、と意気投合し、イベントを立ち上げました。
あとは、2、3ヶ月に一回ヒューチャーセンターとして日本各地でまちづくり活動をされている方を招いて街ゼミを開催してみんなで勉強する場を設けています。
その他にも、元地域おこし協力隊のバーテンで働いていた方にバーを開いてもらったり、ラグビーのW杯をみんなで見たり、地元佐賀基山出身のミュージシャンの方にライブをしてもらったりしています。
©吉岡慶太
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こういう活動をしていると、様々な活動をしている面白い方々に出会えます。この写真の真ん中の人が基山で大工をしている方で、右の方が足揉みのマッサージをされている方です。お二方は、みんなで山を登り山頂でごはん食べる森林ウォーキングという活動を7、8年前から月1で行っている、活動的な方々でした。3人で飲んでいたらまず何かやろうという話になり、酒屋の木パレットを使用して屋台を製作しました。
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続いて、100年近くの酒蔵の倉庫の部分を店舗として利用したいというオーナーさんのお話がありました。まずみんなで掃除をして、倉庫の活用方法をみんなで考えるバーを開催しようという話になり、3人で作成した屋台を利用しました。他には、キャンプが好きな人たちや子供たちとテーブルを作るワークショップし、夜はみんなでお酒を飲んだりしていました。
MICHISHIRUBE空き家再生プロジェクト
©吉岡慶太
もう一つ、空き家を店舗兼ゲストハウスに転用するというプロジェクト「MICHISHIRUBE」プロジェクトを紹介します。施主はアパートの一室で足揉みマッサージ店を営んでいた方でした。このプロジェクトでも、フューチャーセンターと同じく、みんなで中の道具をひたすら片付けて掃除をすることからはじめました。こういう活動をしていると、色々な職能を持った方と出会えるのがとても面白いです。みんなで障子を張り替えたり、コンポストトイレを設置したり、畳部屋の張り替えなどをして、夜はだいたい飲んでいます。飲むために作業していると言っても過言じゃないかもしれません。笑。色々な方が関わる中で、背術以外にも、料理教室、フラワーアレンジメント教室、バーなど、それぞれのスキルを活かした空間利用が計画されました。
今日お話ししてきたように土日は各地で改修の手伝いをしてきました。色々な方と出会えることに加え、行政として働きつつも当事者になれる、というのが、とても重要な気がしています。
(以下、ディスカッション)
廣岡|片付けって本当に誰でもできる空間創造行為だと思っています。吉岡さんは、片付けという人を選ばない技術から始まるのですが、同時に、人と人が出会うところをつなぐということが面白いと思っています。フューチャーラボをやられて何か変わりましたか。
吉岡|まず自分自身が街をすごく知れたことと、街にこんなに面白い人たちがいるんだということが体験できたかなと思います。もともと地元の友達と同級生数名の情報しかなかったのが、友達の友達の友達みたいな感じでどんどん人が繋がっていくのが面白かったですね。
廣岡|その友達の友達の友達のような直接のつながりがない方たちは吉岡さんが佐賀市役所で働いていることはどう捉えているのでしょうか。皆さんに職業やバックグラウンド共通項はないのでしょうか。
吉岡|職種で出会ってないのは大きいかもしれないです。なので、公務員としてというよりも僕個人としてみなさん認識していて、その背景に建築職の公務員というのがある感じです。
佐藤|こういう場所がたくさんできるといいですよね。人って結構色んなスキルを持っていて、でもそれを出すのには結構エネルギーがいるじゃないですか。だれかと一緒だと楽しいけど1人だと面倒になる部分もあるし。色んな人とやることで遊びにしていて、その地域にいる人がいきいきと生きる仕掛けみたいなのを作っているのだと思うんです。なぜその面白いことが起きたのかという体制作りの話と、その面白いことを増やすにはどうしたらいいのかっていう話を聞きたいです。
吉岡|きっかけを与えてくれる人がすごく大事かなって思うんですよね。基山でも、元町議の方に声をかけてもらって、その人は建築のことに詳しかったりとか、すごく話があったんです。この人となら楽しいことができるというか、その人から言ってもらったから勉強のためにさせてもらいたいと思ったというか。
あと、面白い場所についても3人で活動する時も“3人”というのが大事だと思っていて、ちょっとした「こういうことやりたいよね」っていうことが1人だと進まないんですけど、それが3人だと1人が共感してくれたら多数派になるので巻き込めるんですよね。その連鎖が、次どんなことしたいかというところにつながるのかなと思います。
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編集:佐野朱友那、佐藤布武(名城大学佐藤布武研究室)