第5夜 若手建築家プレゼン大会|TOPIC4 佐々木慧さん/Kei Sasaki Architects
この記事は、よなよなzoom#5「若手建築家プレゼン大会(2020年5月30日開催)」でのプレゼン内容です。
佐々木慧さん(Kei Sasaki Architects)のレクチャー
みなさんこんばんは。
井出川内保育園から始めようと思います。
井出川内保育園
これは佐賀県のプロジェクトで、250年の由緒あるお寺とともにある保育園の計画でした。残念ながら、あと少しのところで実現できませんでした。
©︎Kei Sasaki / Intermedia
敷地のある地域は、250年前から残る地形に沿った古い建物(オレンジ)が多く残っており、その周辺に30年前のバブル期に一気に建った建物(ブルー)があるというのが特徴でした。
©︎Kei Sasaki / Intermedia
つまり、建物の軸がその2つでずれていたんです。そこで風景の見え方として、シンプルに古い建物と30年前の建物をつなぐようなことを考えました。お寺が周囲と違う方向に向いているのを保育園がゆるくただしてあげるようなイメージです。そこで、2つの家形がお餅のように伸びてつながっているようにしました。
©︎Kei Sasaki / Intermedia
2棟のつなぎ目は平面的に細くなっているので、梁せいがあまり必要なくなります。それぞれのスパンに必要なせいを持った梁を、下端を合わせるように並べていくと自然と屋根が垂れたような形になります。下端を合わせているのでもちろん内部は天井高さ2200mmで揃っていて、屋根は上がっている、という不思議な形が出来上がりました。プランは子供の部屋が二つに分かれていて、その真ん中にフリースペースがあるというようになっています。
MOKUMO
©︎Kei Sasaki Architects
木の雲、と書いて「もくも」です。学習机のプロジェクトでした。
学習机とはなんだろう?という自問自答を繰り返しました。お施主さんとの対話の中で、大人になっても使えて、そのまた子供が使えるような、時間を超えたモノというような方針が決まりました。
©︎Kei Sasaki Architects
基本的には煎餅のような丸い板がランダムに重なっている形です。その隙間が引き出しになっていたり、大人や子供の椅子になっていたりと、発見的に使われることを想定しています。
©︎Kei Sasaki Architects
設計者が使い方を決めすぎずアフォードするのが理想です。
©︎Kei Sasaki Architects
あとは、椅子として使えそうなところには比較的柔らかいものを、というように、それぞれの天板の樹種を変えています
©︎Kei Sasaki Architects
このあと、規模を縮小しなければならなくなってスタディをやり直したり、家具屋さんとの調整で構造解析をするなど、とにかく手数をかけている部分はあります。
©︎Kei Sasaki Architects
©︎Kei Sasaki Architects
机としてしっかり使えて、かつ、机すぎずに、何者でもなくみえるように、と泥臭くスタディを重ねました。
(以下、ディスカッション)
工藤:特に2つ目のプロジェクト、ものすごい熱量で挑戦をしている印象がありました。ある程度のところで諦めたりしないんですか。理想を追求し続けることも大事だけど、ものを作り上げることも重要だと感じます。
廣岡:一番良い状態で、妥協せずに作り上げて世に出すのはもちろん大事なことです。でも、本来デザインに対する対価はお金だけではないですよね。佐々木さんもその対価は別のところで返ってくると思っているのではないですか。佐々木さんからはそういったような人間に対する信頼が見えます。対価に対して働きすぎていると感じるのは、設計に対するお金の考え方がルール化しているからで、それはよくないと思うんです。
佐々木:信用するしかないですよね(笑)でも確かに無意識化で投資してしまっている部分はあるかもしれませんね。
榮家:私も今は投資すべき時期なのかもという意識はあって、自分の作品においてはお金が理由で諦めることはしないようにしています。ただ自分が苦しくならないラインはきちんと守ります。
廣岡:榮家さんは時間がデッドラインになっている気がしますね。時間やお金、デッドラインになりうるものはたくさんあって、若いうちに解放すべきところを定めるべきなのかもしれません。力の入れどころは、考えないといけないですよね。
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編集:金森あかね、佐藤布武(名城大学佐藤布武研究室)