「うさぎのメイ（４）」　はらまさかず

「ぼく、マンションに帰る」
とつぜん、メイがいいました。
「どうした？」
と、大福。
「ぼく、わかったんだ。家出をする必要はないって。ぼくは、どうどうと生きていたいだけなんだ。そのために、遠くへいく必要はない」
メイがいいました。
「そうだよ。すごいよ」
じゃがいもがいいました。

さんびきは、大学を出て歩いて帰りました。
途中、メイはスーパーで段ボールをもらいました。
「それ、どうするんだ？」
大福がききます。
「家をつくるんだよ」
メイがいいました。
メイは、以前住んでいたマンションの壁に段ボールをたてかけ、小屋をつくりました。
「どうぞ、いらっしゃい」
メイがいいます。
さんびきは、小屋のなかに入りました。
せまいので、とてもきゅうくつです。
「ぼく、ここでお店をしようと思うんだ」
メイがいいました。
「なんの？」
と、大福。
「ほら、ぼく、鼻先で何でもできるだろ。ドアをあけられない動物たちってけっこういると思うから、その手伝いができればと思って」
「それはいい考えだね」
じゃがいもがいいました。
「それでね、この家に『メイ』ってぼくの名前を書いてほしいんだ」
メイが大福を見ていいました。
「おれが？　おれは、『大福』としか書けねえよ」
大福がいいます。
その時、じゃがいもが、はっとして、
「いや、書けるよ！」
と、大きな声でいいました。