「じゃがいもと猫(1)」 はらまさかず

 暑い夏です。
 パグ犬のじゃがいもは、おじいさんと二人、クーラーのきいた部屋にいます。
 おじいさんはお昼寝中です。
 じゃがいもが、ふと、窓の向こうを見ると、庭に野良猫が入ってきました。
 猫は庭石を枕に、おもちのような大きなお腹を出して寝ころびます。じゃがいもが嫌だなあと思って見ていると、猫と目が合ってしまいました。
猫はニタリとわらって、庭木をツメでひっかきます。
 「あっ!」
 じゃがいもは思わず声をあげました。
 なぜなら、庭木に『大』と、あとが残ったからです。
 じゃがいもは、毎日、おじいさんに新聞を読んでもらっているので、少し漢字を知っていました。でも、書くことはできません。猫が、漢字を書くことができるなんて。
 じゃがいもは、窓に近づいていきました。
 (きっと、たまたま書けただけだろう)
 猫の顔を見ながら、じゃがいもはそう思いました。

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