ぐみの実 はらまさかず
ゆうくんはお肉をたべることができません。
お魚もだめです。
「ありがとう」って言って食べたら大丈夫なんだよって、お母さんがいいました。
でも、だめなんです。
動物たちがかわいそうって、強く思っているわけではありません。
「どうしてなのかなあ」
と、お母さん。すると、ゆうくんは小さな声で、
「赤い色がいやなの」
といいました。
「ああ」
お母さんがいいました。
次の日曜日、お母さんはゆうくんをつれて、電車にのって遠くへ行きました。
ゆうくんが行ったことのない知らないところ。
ふたりで山をのぼりました。
そして、ふと、顔をあげると、
赤い実のいっぱいついた木がありました。
「これね、ぐみの木っていうの」
お母さんは、そういって、赤い実をつみ、
ゆうくんに食べさせてくれました。
「あっ」
そのおいしいことといったら。
ゆうくんは、大人になった今でも、お肉を食べるとき、あの赤い実の味を思い出します。
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