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「浮かぶ海」 はらまさかず

沼水さんのこと、覚えていますか?
そうそう、あの人工クラゲの研究をしていた。
沼水さんが新しい発明をして、今日はその実験の日なんです。
沼水さんは、役所の人たちと海に来ています。
ぼくも、ついてきました。

「この試験管の水を、ほんの少しでいいんです」
沼水さんはそういって、海に水を一滴たらしました。
すると、
海の水がぷるんと、クラゲのようになりました。そして、入り江一帯の海がゆっくりと浮かんだのです。
「わあ」
高さは大人一人分といったところでしょうか。海の水が浮き、そこでゼリーのようになって止まっています。私たちは、海の底を歩くことができました。
「探しものとか、できますね」
海の水はちょうど一時間後に、ゆっくりと降りてきて、入り江にぴったり戻りました。

波の音だけが聞こえてきます。さっきまで、海が少しだけ浮いていたなんて、信じられませんでした。海鳥も、魚たちでさえも、そんなことにはまったく気づいていないようでした。

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